72 / 160
第二章『黄金の羊毛編』
072 コレクター、条件を提示される
しおりを挟む「つまり、世界の破壊を防ぐために我々の国の国宝を欲している……ということですか」
「ええ、その通りです」
状況を理解したトレバーさんが言いたいことを簡単に言ってくれた。
俺が言っていることが本当であるという証明のためにセルフィ―に頼んだり、国宝を見せたりしたのだ。
これでそこそこ信憑性が上がっていると思いたい。
「構わんぞ」
「わ、我が王!?」
!?
大王以外のその場にいた全員が驚いた。
話が通じるタイプということは途中の会話でなんとなくわかっていたが、まさか受け入れてもらえるとは。
「天使といい、シャムロットの国宝といい、嘘を言っているわけではないのだろう? ならばよいではないか。国宝は確かに大事だが、渡さなければ世界が滅びてしまうのだぞ?」
「ほ、本当か? それじゃあ……」
「それはそれとしてだ」
一件落着これでお終いと思っていたが、待ったがかかる。
なんだろうか、何か条件でもあるのかな?
「ただで渡すのは面白くない。我は強き者が好きなのだ。そうだな……もうじき行われる獣王戦に出場せよ。これが条件でどうだぁ?」
「ゆ、優勝するのが条件だったり?」
「いんや、全力で戦うだけでよい。第一、人間族に優勝しろなどと酷なことを言うわけがなかろうに」
かっちーん。
これはおこですよ。悪意はないんだろうけどなんか頭に来ちゃったよ。
イレギュラーな存在である俺が人間を代表するのはどうかと思うが、ここで人間に対する考えを改めさせなければ。
「条件変更させて。国宝を譲渡する条件は……獣王戦優勝。どう?」
「構わぬが……本当に良いのか?」
「もちろん!」
どうせなら気持ちよく国宝を手に入れたい。簡単に手に入ってはつまらないじゃないか。
それがアイテムコレクター。手に入れるのが大変だからこそ、価値があるのだ。
「その心意気、気に入った! 国宝を渡すということは一時的ではあるが国を託すということ。ならば優勝くらいしてもらわなくては困るというものよ!」
国宝とは国を象徴する物。それを他国の代表に渡すということは、他国に自分の国を託すということ。
それだけの責任を伴っているのだ。国宝が無くなったところで国民の生活に影響は出ないが、そこはそれ。
日本で天叢雲剣とかを外国に渡すってなったら大変でしょ? そういうこと。
「しかし、勇敢なおなごだのう。今時珍しいではないか」
「男だよ!」
最近いじられてなかったから忘れてたよ!
「男……? 貴方がですか?」
「なんでショック受けてんの!?」
「いえ……そうですか、男……はあ……」
トレバーさんが思った以上にショックを受けているが、どういうことだ。惚れたのか? やめてくれ。
シャムロットで女王に女と間違われなかったのは、中性的な顔のエルフが多かったからなのかな。
「ガハハ! その見た目で男とはな。どれ、見せてみよ」
「おい大王おい」
「冗談の通じぬ奴だのう」
上司のおじさんにセクハラされる女性の気持ちが分かった気がする。
女性の気持ちが分かるゲーム、それがVRMMORPG。おすすめ。そんなキャッチコピーあるか。
「あー、その獣王戦なんですけど、オレも出ていいですか?」
「もちろんだとも」
ほお、カリウスも出るのか。あんなに頑張って修行をしたのだ、戦わずに終わるのは嫌なのだろう。
俺も同じ気持ちだ。出場するからには優勝したい、全力で戦いたい。腕試しをしたい。そう思ったのだ。
カリウスを見ながらぶつぶつと呟いていた。
「獣王戦……カリウス……ああ、貴方前回の獣王戦にも出場していませんでしたか?」
「まあ……それが何か?」
出場してたんかい。言ってくれよ。
「カリウス、やっぱりアルゲンダスクでも何かやってたんだ。もしかして上位に入ってたり?」
「いえ、人間にしてはかなり善戦していたものですから記憶に残っているのです。あの頃の気迫が感じられなかったので気付きませんでした」
「忘れてくださいよそれは……」
あの頃の気迫か……カリウスは基本的に静かで冷静なイメージがあるから想像できないな。
戦闘中は熱くなることもあるし、その状態が続いてる感じかな?
「何やったん?」
「ちょっとやんちゃしてたんだよ。あまり聞かないでくれ」
「おけ、把握」
つまり黒歴史である。元ヤンが丸くなったみたいな感じだろう。
黒歴史とか誰も得しないから掘り下げないで上げようね。
「お主も出るのか。そうじゃな、ならばわしも出よう!」
「それじゃ、私も出ようかな……?」
カリウスだけでなく、ドレイクとエリィも獣王戦に出るらしい。
ドレイクは火竜族……の見た目だが、これで人間側から、ロンテギア側から四人が出場することになる。
これには大王も大喜び。安心してくれ、勝ち上がったらもっと盛り上がるから。
「おおお……おおおお! なかなか面白いではないか! お前もそう思うだろうトレバー!」
「変な人達としか思えませんよ……」
まあ一般的な考え方だと、人間じゃ獣人には敵わないと考えるのが普通だろうな。
しかし俺たちは違う! だって伝説の武器使ってたり、ステータスが底上げされてたり、天使の力が使えたり、伝説のドラゴン本人だったりするのだから。
むしろこれで勝てない方がおかしいのだが……うん、多くの精鋭を倒して強さをアピールしてやろうぜぇ!
「ガハハ! まさか皆出場するとは! 楽しみにしているぞ! ……ん?」
大王がちらりとシウニンさんを見る。
「おお! 貴様も――」
「出ませんよ!!!」
0
あなたにおすすめの小説
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~
於田縫紀
ファンタジー
大西彩花(香川県出身、享年29歳、独身)は転生直後、維持神を名乗る存在から、いきなり土地神を命じられた。目の前は砂浜と海。反対側は枯れたような色の草原と、所々にぽつんと高い山、そしてずっと向こうにも山。神の権能『全知』によると、この地を豊かにして人や動物を呼び込まなければ、私という土地神は消えてしまうらしい。
現状は乾燥の為、樹木も生えない状態で、あるのは草原と小動物位。私の土地神としての挑戦が、今始まる!
の前に、まずは衣食住を何とかしないと。衣はどうにでもなるらしいから、まずは食、次に住を。食べ物と言うと、やっぱり元うどん県人としては……
(カクヨムと小説家になろうにも、投稿しています)
(イラストにあるピンクの化物? が何かは、お話が進めば、そのうち……)
ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~
とんがり頭のカモノハシ
ファンタジー
「別の世界から勇者を召喚する卑怯な手口」に業を煮やした堕天使・ルシファーにより、異世界へ魔王として転生させられた大学生・左丹龍之介。
先代・魔王が勇者により討伐されて100年――。
龍之介が見たものは、人魔戦争に敗れた魔族が、辺境の森で厳しい生活を余儀なくされている姿だった。
魔族の生活向上を目指し、龍之介は元魔王軍の四天王、悪魔公のリリス、フェンリルのロキア、妖狐の緋魅狐、古代龍のアモンを次々に配下に収めていく。
バラバラだった魔族を再び一つにした龍之介は、転生前の知識と異世界の人間の暮らしを参考に、森の中へ楽園を作るべく奔走するのだが……
神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由
瀬乃一空
ファンタジー
普通の闇バイトだと思って気軽に応募したところ俺は某国の傭兵部隊に入れられた。しかし、ちょっとした俺のミスから呆気なく仲間7人とともに爆死。気が付くと目の前に神様が……。
神様は俺を異世界転生させる代わりに「罪業の柩」なるものを探すよう命じる。鑑定スキルや修復スキル、イケメン、その他を与えられることを条件に取りあえず承諾したものの、どうしたらよいか分からず、転生した途端、途方にくれるエルン。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる