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最終章『黄昏の約束編』
124 コレクター、ミカゲの島に行く
しおりを挟む〈浮遊〉で空を飛び、ミカゲの言っていた島を探す。
確か地図の右上部分だったはず。そこに島があるのだ。
しばらく何もない海上を飛んでいたが、途中で霧が出始める。
魔法によるものか、それとも元から発生していたものか。
ミカゲは魔法を解除すると言っていた。なら、島までたどり着くことはできるはずだ。
「おお、すごい渦だ」
飛びながら海を見ると、凄まじい海流が見えた。
あの上を船で通れば方向感覚も分からなくなるだろう。地図に書いていない理由はこれか。
霧が濃く、海流も激しい。船で行こうとしたらまずたどり着けない。
空を飛んでいけば行けるが、ミカゲが魔法を掛けていたら認識できずにたどり着けない。
そりゃ見つからないわけだ。
「おっ?」
霧の中を飛び続けていると、岩場が見えた。
辺りに岩場が増え始める。ぽつんぽつんとあった岩がどんどん大きくなっていく。
そろそろ島があるのではないだろうか。
「霧が薄くなってきた?」
少しずつ視界が開けてくる。
霧が薄くなっていく。遠くは見えないが、少し先ならば見ることができる。
すると、岩場とは違う波打ち際が見えてきた。
砂浜ではない、石がごろごろと転がるような場所だ。
バーベキューとかしたいくらいの足場だ。空にある霧のせいか日差しがあまり届かないのでそこだけが惜しい。
「ここだここだ」
着陸し、辺りを見回す。
平らな島。ほとんど植物は生えていないむき出しの土だ。遠くに森が見えるくらいか。
戦闘をする分には分かりやすくていいが、ここに住むとなったら話は別かな。
常に曇り、島の外には行けない。植物が少ない。劣悪な環境だ。
それなのにモンスターは多い。獣系のモンスターが多く蔓延っている。
俺はそのモンスターを刀で薙ぎ払いつつ、ミカゲを探す。ここに住んでいるわけではないのか?
「うわ……あれじゃん」
なんて思っていたら、明らかに周りから浮いている家を見つけた。
ぽつんと一件だけあるため、あれがミカゲの住んでいる家だと判断できる。
どうしようか、敵だけどどうせだし挨拶くらいしとこうかな。
扉の前まで来て、ノックをする。
中から足音が聞こえ、ガチャっと扉が開く。出てきたのはミカゲだった。
「やあ、来たんだね」
「そりゃそうでしょ。転移でしか来れないような場所じゃんここ」
「まあね、船で来たら面白かったのに」
「面白くない……」
普通に話をしているがミカゲ……敵なんだよね。
今更情が湧いたというわけではないが、なんでこの人と戦わないといけないのか疑問に思ってしまう。
ミカゲが会話しているのが聞こえたのか、奥から誰かが出てきた。
黒猫の獣人、ジャスターだ。
「ミカゲさん誰か来たのかー? っておおおい!! レクトォ!!!」
「あ、ジャスターおひさ」
「何しに来やがった!!!」
「説明しなかったの?」
「うん、面倒だし」
「してよ……」
まあ挨拶なんてせずに着陸してからすぐに帰る予定だったんだけどね。
それでももしかしたらレクトが訪ねてくるかもとか伝えといて欲しかった。ジャスターとか絶対暴れるじゃん。
「ミカゲさん! こいつ潰そう! 二人で襲えば勝てるって!」
ジャスターの言葉に俺は刀に手を掛け、いつでも抜刀できる状態にした。
しかしミカゲは全く緊張感に流されない。
「それをしたら国宝が手に入らないだろう。それで、もう用はないのかい? レクト」
「用はないけど、少し話がしたい」
「話?」
そう、俺がここまで挨拶に来たのは話がしたかったからだ。
ミカゲは世界を救うと言っていた。。それがどういう意味なのか分からないまま争っているのだ。
何かまだ、俺は知らないことがあるのではないか。重要な何かが渦巻いているのではないかと勘繰っている。
「うん、どうしてこの世界を破壊しようとしているのか。俺には分からないんだ。教えてよ」
「レクト、私はね、この世界の未来を知っているんだ」
「未来?」
ルインと同じような〔未来視〕を持っているのだろうか。
「すでに現実では被害が出ている。私はこの世界を破壊して、現実世界を守るんだよ」
現実……地球のことだろうか。
この世界が地球に影響を及ぼしているから、この世界を壊すと。
未来が分かるのなら、そうなる未来が分かっているということか。
「よく分からないけど、未来でそうならないようにこの世界で頑張ればよくない?」
「違うんだよ。もう遅いんだ。世界を破壊して、現実と断絶しなければならない。相手は時を超えるんだ、元を断つしかないだろう」
時を超える? 相手ということはこっちの世界の住人か。
……なるほど、未来のこの世界の住人が地球に、日本に何かをしたってことか。
ミカゲが未来を見たわけではなく、未来から来た奴が被害を出したということを知っているのだ。
そして、その未来の異世界人を消すためにこの世界を破壊すると。そういうことなのだ。
「本当に? 俺やミカゲがここに来てからも被害が出ているのなら分かるけど、こっちの動き次第でそれも解決するかもしれないんだよ?」
「そうかもしれないけどね、そんな大層なことはできないだろう。所詮、現実とは関係のない世界だ」
……はあ、そうか。ミカゲはこの世界を現実だと思っていないのだ。
「現実現実って、この世界だって現実だよ! ジャスター、そうでしょ? ジャスターはこの世界が偽物だって思うの?」
「……分かんねぇ。だけどな、僕はこの世界はどうだっていい。僕もリスティナも、同じ考えだから協力してんだ」
ジャスターとリスティナは、この世界を捨てたのか。
だから、ミカゲに協力している。そりゃ、思い入れなんてないよね。
「そっか。ミカゲ、もう話しても無駄みたいだね」
「ああ、どうやらそうらしい。君はこの世界に情があるようだね」
「そりゃね、みんな生きてるんだから。元の世界と何も変わらない。世界を救うためとはいえ、俺にはそんな選択はできないよ」
俺とミカゲの違いは、この世界の認識の違いだ。
ミカゲは、この世界を『トワイライト』と同じようなものと考えているのかもしれない。
この世界は現実ではない。ゲームのような世界だと思っている。
俺は、ゲームに似ているがしっかりと現実だと認識している。
当然、情だってある。罪のない人たちを殺そうとは思えない。
「残念だ。さ、話も終わったしもう帰った方がいい。リスティナが帰ってくるよ」
「それは怖いなぁ……じゃ、次は戦場で」
「ああ」
「覚えとけよ」
ジャスターが暴れる前に、リスティナが帰ってくる前に俺はその家から退散する。
その後、島の調査をし『メモリークリスタル』で撮影した写真を持ってトワ村に帰った。
これでギリギリまで戦術を考え、戦闘に臨むのだ。
次にこの島に来るときは……決着をつける時だ。
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