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最終章『黄昏の約束編』
136 コレクター、戦法を思いつく
しおりを挟む「わし、復活!!!」
空に向けてブレスを放ったドレイクは、動けなかったストレスを発散するように周囲に炎をまき散らしながら叫ぶ。
凍えるような空気が温まり、多少は過ごしやすい気温に変化してく。
「む、これはどういう状況じゃ? というかさっむ、なんじゃこれ」
「続けて! ドレイクの炎で氷塊を溶かして!」
「ふむ、大体わかったのじゃ。それなら……」
レクトの指示を聞いたドレイクは、炎の渦を発生させながら竜の姿に変身する。
青い炎を口から迸らせる蒼竜は、空中で熱風を発生させ、地上に向けて放った。
突風と熱により、氷塊が次々溶け、崩れていく。
「ジャマヲスルナ!」
熱風を発生させる蒼竜に、氷竜が氷のブレスをぶつける。
冷気と熱がぶつかり合い、霧がさらに濃くなっていく。
竜が戦闘をしている間に、氷漬けから解放された人々が各々回復をし始める。
取り出したのは、大量に用意した『グリーンポーション』だ。エリィとその弟子が協力し全員に申し分ないほどのポーションが渡されたため、即時回復することができるようになっている。
「よっしゃ! って、あれ倒すのかよ」
「うわぁ、でっかいわね」
同じようにエリィとカリウスが氷漬けから解放され、氷竜を見てその大きさに圧倒される。
「むしろ大きいから倒しやすいと思うよ。一気に攻撃すればすぐに終わるんじゃないかな」
レクトの言う通り、身体の大きな相手は攻撃の範囲こそ脅威ではあるが、攻撃をする場所もその分多くなる。これは『トワイライト』でも同じことで、それだけ弱点部位に攻撃を当てやすくなるということ。
そしてほぼ全てのモンスターに共通して存在する弱点部位は、首だ。
「しかしどこ狙えばいいんだありゃ」
「首だね。再生能力があるからできれば一気に片付けたいかな」
「首を狙えばいいのね?」
各自修行によりそれぞれ単体で十分以上に戦えるポテンシャルがあるため、レクトは特に作戦を考えずに戦うことにした。
とにかく全力であの氷竜を倒す。やることはそれだけだ。
アイテムや魔法による強化が残っているため、負けるビジョンも浮かばない。ラストバトルを一気に終わらせる。
「首を狙うなら……やっぱりこれだよね」
レクトは『職業の書』を取り出し、【剣士】を選択する。
和風の甲冑と洋風の鎧が混じったような装備に身を包み、事前に掛けた〈浮遊〉で空を飛ぶ。
そして、氷竜の首の根元を目掛けて一気に加速する。
「〔天叢雲剣〕」
そう呟くと、レクトの握っている刀『ツムカリ』は淡く緑色に発光する。
草を薙ぐように刀を横にしたまま首元を通り過ぎると、三つ首の二つの首が根元から切断された。
〔天叢雲剣〕、これはレクトがこの世界に来てから習得した武器の専用技だ。
カリウスの『騎士剣エクスカリバー』の出す光と同じ専用の技であり、『トワイライト』には存在しなかった武技。
『トワイライト』内のアイテムの概念がこの世界に来てから変化していると確信したレクトは、『ツムカリ』の専用技を見つけ出したのだ。
大切断を目撃したその場にいた全員が勝利を確信する。
しかし、振り向いたレクトは目を見開いた。
落ちるはずの長い首が、複数の氷塊となり根元に集まっているのだ。
竜としての形を保てなくなり崩れ落ちるのなら納得できるが、その氷塊は不自然に吸収されている。
「ええ……まだ何かあるの?」
ミカゲのしぶとさに呆れながらも、最後の首を切り落とすためにレクトが武器を構える。エリィやカリウスたちも反対側から飛び込んでいく。
再び刀を振ろうとしたその時、切断された首の根元から氷がバキバキバキっと生成される。
氷の粒や冷気を発しながら生成されたため、攻撃をしようとしていたレクトたちはその足を止めた。
「え、はぁ?」
ドレイクのブレスが氷竜とレクトの間を走り、霧が晴れる。
深い霧から出てきたのは、首が五つになった氷竜であった。
「首増えたぁ!?」
ドレイクのブレスに対処していない首からのブレスを吐かれたレクトは空を飛んでどうにか回避する。
「よし、任せろ!」
「私も!!!」
反対側にいたカリウスとエリィが、五つ首の氷竜に飛び込む。
カリウスはエクスカリバーの光を伸ばし、エリィは『ワルキューレウェポン』を大きな剣の形にした。
それぞれ空を飛びながら氷竜の首を切断する。二人の成長を実感しながら、レクトは再び崩れる二つの首に注目する。
「やっぱり、二倍になってるよね……」
霧から現れたのは、首が七つになった氷竜だった。
七つの頭がそれぞれブレスを吐き、攻撃の激しさがさらに増している。
「なんじゃあれ! どうなってるんじゃレクト!」
「とりあえず首を壊さない程度に攻撃を続けて!」
無限に増え続ける首に、レクトは頭を抱えた。
今までは首を切れば絶命させることができたのだ。『トワイライト』にも、今戦っている氷竜のような特徴を持ったモンスターは存在しなかった。
ならばどうすればいいのか。
「首をすべて落とせば……いや、だからって倒せるのかな? じゃあどうすれば……」
「どうしたの?」
「ああ、ルイン。どうすれば倒せるのかなって」
「心臓を貫けばいいんじゃない?」
「心臓?」
ルインの言葉にレクトはそういえばそうかと納得する。
そしてミカゲがあの氷竜の中にいるということに気付く。
心臓が存在するのかは不明だが、魔力源となっている場所はあるはずなのだ。
そうと決まれば地面に近い胸の辺りを攻撃すればいい……のだが、氷竜の胴体部分は強固な氷に覆われている。
「ちょっと試してくるね」
レクトは氷竜まで一気に駆け抜け、刀を振った。
ガキン! と音を立てて刀が弾かれる。最大ランクの最強武器がだ。
その後も武技を使った攻撃を軽く試すが、少し傷がついた程度であった。その傷もすぐに塞がってしまう。これでは一番強い攻撃を加えたとしても足りないだろう。
どうしたものかと悩んでいると、氷竜の足元から凍える冷気が噴出する。
ダメージこそないが、体が凍りそうになり逃げるようにルインの元へ戻る。
「やばいあれ!」
「みたいだね。どうするの?」
「うーん……」
レクトは思考を巡らせ、どうすれば魔力源に攻撃することができるのかを考えた。
胴体は固すぎて攻撃が通らず、大量の首は破壊すればその数を増やすことになる。
ミカゲは辺りの魔力を使って魔術を使っているため、魔力切れの心配はまずない。
となれば魔力切れを狙った長期戦は効果がないのだ。
「魔力……ああっ!」
「なに?」
「首だよ! 首が無くなったときに再生するのに魔力が必要になる。次に全ての首を破壊したら、再生するのは十四個の首だ。それだけの大規模な再生がすぐにできるとは思えない。体内にある魔力を消費するだろうから、胴体の再生も遅くなるはずなんだ」
「要するに?」
「ごり押し戦法!!!」
そう、レクトが思いついたのは愛と信頼のごり押し戦法だ。
誰もが経験したことがあるだろう。ゲームで、ひたすら殴って倒す戦法を。
今回の作戦はそれと同じだ。全力で魔力を削り、魔力源まで破壊する。
ちょろちょろと小細工をする必要はない。全力を出すだけなのだ。
そのためには主力の皆に合図を送る必要がある。レクトは作戦を実行するためにカリウスやエリィたちに声を掛けるのだった。
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