弱小領主のコレクター生活~アイテムチートで冒険、領地運営をしながら最強領主に成り上がります~

瀬口恭介

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最終章『黄昏の約束編』

138 コレクター、ゲートを開く

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――レクト視点――

 辺りの冷気が消え、残った氷がパキパキと割れる音だけが鳴り続ける。
 『ツムカリ』が元の形状に戻り、身体にどっと疲れが襲ってくる。
 肩で息をしながらも着地した俺は、目の前で倒れているミカゲを見た。

「はぁ……はぁ……終わった、のかな」

 ミカゲは倒れたまま動かない。
 死んでいるのかと思ったが、近づくと手が動いていることに気が付く。
 目は半開きで、俺に向かって進もうとしていた。
 まだ諦めていないんだ。でも、この戦いは俺の勝ちなんだ。

「ねえ、レクト。大丈夫なの?」
「もう魔術も使えないだろうし、大丈夫だって」
「……どうやらそうみたいだな」

 カリウスがほとんど動かないミカゲを見てそう呟いた。
 ミカゲがまだ魔術を使えた場合、無防備な俺に攻撃を加えるはずなのだ。
 とはいえ、より安全を確保するためにミカゲをここで殺すべきか。
 『ツムカリ』を構え、とどめを刺そうとミカゲの首元に視線を向ける。
 そこで、ミカゲの国宝がまだ首元にあることに気付いた。

「そうだ、国宝!」

 悲しいかな、コレクターであることが俺の背中を押してしまった。とりあえず国宝を取り戻そう。話はそれからだ。
 というかそこまでしてミカゲが何もしてこないのなら無害と思っていいだろう。
 最大限警戒しながらミカゲの前に膝をついた。
 弱々しく手を伸ばそうとしているが、ほとんど動かないようだ。

 真っ先にミカゲの奪った二つの国宝をローブの内側にあった革袋から取り出す。
 よし、後はミカゲが首から下げている国宝を取り戻せば全ての国宝が集まる。
 俺が首から下げている国宝を手に持ち、ミカゲの持っているロンテギアの国宝を取り戻す。
 これで四つ全ての国宝が並んだ。それぞれ水晶のように透き通っており、美しく輝いている。

「すごい……これがロンテギアの国宝かぁ」
「『可能性のカギ』、だったか。まあ確かに人間は可能性の塊だったな」

 『可能性のカギ』、いい名前だ。多くの人間が覚醒し、他種族に追いつく、またはそれ以上の力を手にした者がいた。
 これから先、人間も蔑まれることなく権力を手にしていくことだろう。

「それで、セラフィー。これどうすればいいの? 天界に行って、そこにいる魔術師を倒さなきゃなんだよね?」
「さ、さあ? わたしも話でしか聞いたことがないので……じゃあどうすればいいのよっ」

 なんとセラフィーも国宝の使い方を知らないらしい。
 話では、四つの国宝が人間の手に渡れば天への扉が開かれる程度の情報しかなかった。
 四つ集まっているが、これをどうすればいいのだろうか。とりあえず紐を外し、四つをくっつけてみる。
 すると、突然光を発し始めた。どうやら正解だったらしい。

 国宝が四つ集まり、一つの美しいカギに変化する。
 白をベースにし、それぞれの国宝と同じ色の装飾が施されたカギだ。

「これは……レクトさん! そのカギを回してください!」
「これを? よいしょっと」

 宙に浮きながらも横向きになったカギをつまみ、半回転ひねる。
 カチャリと音が鳴り、目の前の空間に光の線が広がっていく。
 巨大な扉の形になった光の線は、やがて眩い光を発し始める。
 これがスカイゲートってやつか。正直眩しい。

「この先へは俺とエリィ……セラフィーが行く。そんで、天界を牛耳ってるっていう魔術師をどうにかして、セラフィーの身体もどうにかできるならどうにかする。全部終わったらエリィだけが帰ってくることになると思う」
「向こうの世界でやり残したことが終わったら、レクトも帰ってくるんだよな?」
「……多分ね。時間がかかるかもしれないけど、うん。やることが終わったら戻ってくるよ」

 現実世界でやり残したことは『トワイライト』のクリアと、帽子を返すこと。
 それと、全員に別れを告げたらそれでおしまいだ。
 ゲームクリアに関しては運営のやる気次第と言ったところか。

 というか、この世界に運営が関わっているのなら今回の件で『トワイライト』自体が消滅するのではないだろうか。
 それは困る、後続の運営がどうにかしたとして引き継ぎなどで長い時間がかかることは想像に難くない。
 そもそも……帰ってこれるのかな。俺。
 ま、その時はその時だ。

 ここまで考えて、もう一つの不安要素が出てくる。
 これで天界での俺の身体が元の身体だったりしたら何もできないのでは?
 今は魔法や剣術が使えるからどうにかなっているのだ。ただの一般人である俺では魔術師には勝てない。
 それこそセラフィーにどうにかしてもらうか。うん、どうにかなるって。

「これ、すごく重要な役割よね……」
「まあそこはセラフィーに任せておけばいいんじゃない? 少なくとも負けることはないだろうし」

 ミカゲがこの世界に来ているのは実力があるからだ。
 しかも今回のミカゲは辺りに魔力が大量にあるおかげであそこまで強かったのだから、相手の戦力がそれ以下なのはほぼ確定している。

「じゃあ、行ってくるね」
「うむ、絶対帰ってくるのじゃぞ」
「じゃあね、今のところ嫌な未来は視えてないから多分大丈夫だよ」

 行く前にドレイクとルインに手を振る。
 もしかしたら、もしかしたら帰ってこれないかもしれないのだ。このくらいはいいだろう。

「準備はいい?」
「少し不安だけど、いいわよ。……いよいよ、天界に帰るのですね」

 光の扉を前に、二人横に並ぶ。
 俺も不安だ、ここからが本当の本当に本番なのだから。
 俺は、どちらかを失うことになる。慣れ親しんだ元の世界か、この世界を。
 両方を行き来することができればいいのだが、そう簡単にはいかないだろう。

「っ! レクト! 避けろ!」
「えええっ!?」

 カリウスの声に振り返ると、倒れていたはずのミカゲが血だらけの身体からは想像もできない速度で俺に向かって突進していた。
 俺はそれを避けようとするが、あまりに予想していなかった事態に上手く避けることができなかった。
 エリィと俺はよろけながら、ミカゲに押されそのままゲートの中に飛び込んだ。
 ミカゲと共に、光に包まれながら。
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