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最終章『黄昏の約束編』
140 天使、天使たちと再会する
しおりを挟む「セラフィーの肉体についてだが、再生することは可能だろう。天使の肉体は元々魔力の塊であるからな。他の天使の力があれば解決する話だ」
男、魔術師が言うには他の天使がいれば再び天使の肉体を作ることは可能なのだそうだ。
しかし魔力の塊とは、神が天使を作ったということだろうか。
「本当!? じゃ、じゃあ他の天使は……?」
「現実の部屋に集めている。皆あちら側に用があるのだ、もうここでやり残したことはないだろう」
「だってさ、よかったねセラフィー」
「……ええ」
セラフィーは不機嫌な様子で魔術師を睨んでいた。
「随分と嫌われたものだな」
「貴方たちに殺されそうになったのです、嫌うに決まっているでしょう」
確か、世界を壊す計画を聞いて阻止しようとしたのだったか。
その時にセラフィーは魔術師に捕まりそうになり、地上に落ちたと。
「だが今はお互いに納得のいくよう話し合おうとしているのだ。邪魔はしてくれるなよ」
「……はい、わかっています」
「安心してセラフィー、俺もあいつ嫌いだから」
「私も」
過ちはそう簡単に覆らない。一度あのような残酷な計画を考えたのだから、すぐには信用などしない。
それはそれとしてまともに話していないエリィでさえも嫌っているとは。異世界の基準で考えてもあの考え方は嫌なのか。それとも俺の基準になってしまっているのか。
「ふん、ゲートはすぐそこだ。ついてこい」
魔術師は鍵を取り出し檻を開けた。
もちろんミカゲを人質にすることは忘れない。いつでも倒せるよう離れないようにする。
部屋から出ると、白く無機質な廊下が続いていた。
病院以上の飾りっ気のなさはまさに研究施設と言ったところ。
目の前に赤と白のボールが三つ並んでいても違和感がないだろう。
「うわお」
魔術師がカードキーで開けた厳重な扉の先には、空間が水のように波打っているゲートがあった。
見た目は普通のゲートと遜色ないが、にじみ出る魔力や神々しい雰囲気が明らかに違う。
世界移動、それを可能にしているゲートだ。
そんなゲートを当たり前のように通る魔術師。とっくに心の準備はできている、さあ通るぞ。
ゲートを通り抜け目を開ける。
そこに広がっていたのは真っ白な廊下だった。
「何も変わらない!?」
「なんで変わると思ったんだい」
ミカゲが不思議そうに言う、うるせい。
よくよく考えてみれば研究所が繋がっているのは当たり前のこと。いきなり日本! って感じの場所に出るわけがないのだ。
「天使がいるのはこっちの部屋だ」
「よーし、入ろう!」
他の部屋と全く変わらない、無機質な扉がある。
これが天使たちの部屋だという、神秘も何もあったもんじゃない。
魔術師がカードキーでロックを解除すると、シュインと音を立てて扉が開く。
「……その方々は?」
部屋は広く、複数個のベッドが並んでいた。
それぞれのベッドの上には天使が乗っており、皆一様にこちらを見ている。
天使って数人しかいないんだ。もっと大勢いると思ってた。
「よかった、無事だったのですね!」
「その喋り方は、セラフィーでしょうか?」
「えぇ……なんで分かったの……?」
部屋に飛び込んだセラフィーを喋り方というヒントだけで一発で看破した天使たち。
正直天使たちの喋り方なんて似たり寄ったりなので判別とかできない。なんで分かるの。
「そうですか、肉体を……わたしたちの力があれば肉体を作り出すことが可能なのですね?」
「そうだ。どの程度の時間を要する」
「試したことがないので分かりませんが……そうですね、肉体の生成をするのですからすぐにはできないでしょう」
そもそもどうして魔術師が天使の肉体を生成できると知っていたのか。
魔術師として天使の魔力を調べたのか、科学者として調べたのか。天使たちの口ぶりからして前例があったとは考えられない。
「どうして、あんたは天使が肉体を生成できると知っていたのさ」
「む、私を疑っているのか。天使はな、他の天使が怪我をしたら回復魔法ではなく魔力を流して怪我を治すのだ。その回復力は切断された腕までも生成できる。ならば魔力の塊である肉体も再生できると考えるのが普通だろう」
しっかりとした理由があった。それならそこまで心配する必要もなさそうだ。
「皆さん集まってください。全員の魔力でセラフィーさんの肉体を作りますよ」
「ではでは人間さん、そこに立ってくださいね」
「腐れ外道、早くこの部屋から出て行ってくださいね」
「死んでくださいね」
「毎日寝る前に呪い殺して差し上げますね」
魔術師嫌われ過ぎだろ。
そりゃ、自分たちが守っていた世界を壊されそうになったのだから当然の反応なのかもしれないが、セラフィー基準だった天使のイメージが大きく変わった。口調は皆優しいが怖い、怖いぞ天使。
そんなことを考えていると、天使たちに囲まれたエリィの身体が淡く光りだした。
うん、まるで幽霊が消えるときのようだ。おそらくセラフィーの魔力を外に出しているのだろう。
「それじゃあ、話し合いは俺だけで行こうかな。エリィとセラフィーもそれでいいよね」
「まあ、いいけど気を付けなさいよ? ……はい、気を付けてくださいね」
ここからは味方のいない俺一人での行動になる。
より一層警戒して、ミカゲを人質にすることを忘れずに部屋を出る。
いつ裏切るか分からないのだ。大丈夫、さっきの檻の中と違って魔力を扱えるのは感覚で分かる。
「ああ、そうだ。話し合いの前に君をあの世界に送り出した理由、知りたくはないか?」
「え……確か、何かの実験だったはずじゃ。被験者だとか言ってたし」
魔術師は俺のことを被験者と言っていた。
過去にミカゲが口にした『トワイライト』計画という計画と関係があるのだろう。
「まあ、実験だ。とりあえず結論だけ話すと。君は本物のレクトではない、とだけ伝えておこう」
「……はい?」
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