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最終章『黄昏の約束編』
142 コレクター、真実を知る
しおりを挟む……?
ええと、俺が異世界にいると。うん、分からん。
「いや、ここにいるけど……どういうこと?」
『ああ、正確にはレクトくんのコピーが異世界にいるのだ』
「もっと分からないんだけど」
異世界だけでも意味が分からないのに俺のコピーがそこにいるって?
なんでよ、知らないうちに異世界転移して帰ってきてたの? 記憶は失ったけどこの体には戦いの記憶が刻まれてるの?
『話すと長くなるが、それでも良いならば話そう』
「じゃあ、お願い。めっちゃ眠いけどもう徹夜するし」
眠気はあるが、夜通し続くイベントに比べれば余裕である。
ネトゲで眠気に勝つ精神を手に入れるって……なんか悲しくなってくるね。
『では簡潔に説明しよう。まず、私の仕事についてだ。私は『トワイライト』の運営と繋がりのある仕事をしている』
「え、運営?」
アルカナさんが運営だった……?
えと、とりあえずさっさとストーリー完結させろ、メンテもっと早く終わらせろ、虚無期間長いのどうにかしろとか言ったほうがいい?
『ああ、だが何かしらの決定権を持っているわけではないよ。魔術研究者兼プログラマーというだけだ』
「あー、だから仕事が忙しかったのかぁ。プログラマー大変そうだもんねぇ……」
……ん?
「ちょっとごめん無視できない単語が混ざってた。魔術? 魔術って言った?」
『そうだ。異世界があるなら魔術も魔法もあるだろう?』
「確かに! なんで異世界受け入れてたんだ俺は!」
ごもっともである。
魔術を疑う前に異世界があることを受け入れている自分がいた。
いやさ、『トワイライト』とかフルダイブ技術はほぼ異世界みたいなものじゃん。ゲームやって異世界に行った気になってたのよ。
でも実際に異世界があるって考えたらとんでもないなぁ。魔力とかいうファンタジー要素もあるだよねきっと。俺にもあったりするのかな? なんかわくわくしてきた。
『それでな、運営側に異世界を介した実験をしている者がいるのだ。欲しかったものは物資や魔法で、召喚するために明確なサンプルデータが必要になった』
「サンプルデータ……」
『そうして異世界とのシンクロを高めるべく作られたゲーム、それが『トワイライト』だった』
ゲームを、異世界と結び付けたと。
そんなことが本当に可能なのだろうか、そもそもそれは魔術師なのだろうか。
いや、科学と魔術が合わさればあるいは……
魔術なんて不思議パワーを使えば可能なことも増えるのだろう。となれば可能か。
『そこから始まったのが、『トワイライト』計画』
「『トワイライト』計画……ってことはその計画に巻き込まれたのって!」
『そう。君だ、レクトくん』
静かにそう告げたアルカナさんの声は優しかった。
一瞬、ほんの一瞬だがアルカナさんが運営側だと知って怖くなった。
だけど、俺がアルカナさんを信じられなくてどうする。
思い返してみれば、長い時間意識を失っていたのはデータをコピーしていたからか。
って待てよ? まさかアカウント丸ごと異世界に飛ばされたんじゃないだろうな!?
「た、大変じゃん! 俺の帽子が……! アイテムが……! 約束が……!」
『コピーだから無事だと思うぞ』
「分かんないじゃん!」
もしデータが消えていたら一生寝込む自信がある。
また一からやり直しというのもそれはそれで一興ではあるが、苦労して集めたアイテムが消滅、しかもアルカナさんのアイテムまで消えるなど考えたくもない。
それこそ帽子を返す約束が果たせないだろう。それだけは嫌だ。
『ではログインして確認するといい。ゴーグル自体は壊れていないはずだ』
「……いや、俺が選ばれたのってアイテム持ってたからとか、よく分からないけど適性があったとかでしょ? どのみち、これから先安心してプレイできないよ」
『む、確かにそうか』
全てのアイテムを集めたタイミングでログアウトされたのだ。もしかしたらそれが原因なのかもしれない。
いつログアウトするのかも分からないデータを扱うのは危険極まりない。ならばどうするか。
どうしよう。
「どうしよ……」
『私としてもレクトくんが巻き込まれたのは気に入らない。私は怒っている。おこだ』
「おこですか……」
軽い口調でそう言うが、声色から本気で怒っているのが分かる。
自分としてはコピーされた自分が異世界にいると言われて混乱したままなので、あまり怒りなどは湧いてこない。実感がないのだ。寝ていただけなのだから。
『というわけで、一緒にこの計画を止めるというのはどうだろう?』
「何言ってるんですかあんた」
アルカナさんは唐突にとんでもないことを言い出した。
『そのままの意味だ。どうせ近いうちに運営会社の元へ赴くのだろう。その場に私もいるはずだ、協力して異世界に飛ばされたレクトくんを助けようじゃないか』
「どうしてそこまで? 助けるって、アカウントを取り戻すだけじゃなく?」
確かに巻き込まれたが、そんな危険を冒す必要があるのか。そこが疑問だった。
そりゃ、アイテムが消えるかもしれないのは悔しいよ。そこはどうにかしたい。
でも向こうの俺を助ける必要はあるのだろうか。
『それはできない。向こうのレクトくんも、私と過ごしたレクトくんなのだぞ』
「ああ、なるほど。それなら仕方ないかぁ、うん。頑張らないと」
そう言われハッとする。
もし俺が異世界なんぞに飛ばされたらどう思うだろうか。
楽しむ? そりゃ楽しむさ、そういう性格だから。
でも、どうしても帰りたいと思うはずだ。まだアルカナさんに帽子を、アイテムを返していない、ゲームをクリアしていない。やり残したことはたくさんある。
自分のことだ、自分で自分を救えるのなら行動するべきなのだ。
『それで、いつ行くのだ?』
「いつでもいいけど、年内には行きたいかなって」
あんまり長引いても困る。準備に時間がかからないのなら明日にでも行きたいくらいだ。
明日は寝不足で死ぬか。明後日にでも行きたい。
『ならば明後日にでも来るといい。私が手配して客人として招いてやろう』
「そいつぁありがたいね。ところで、その計画を止める作戦とかはあるの?」
『それも何とかしよう。情報はある程度あるが、こちらでさらに有益な情報を集める』
「それは……大丈夫なの? 働きすぎなんじゃない?」
『慣れているからな』
働くのって怖い……
これからもニート大学生らしく今のうちに遊んでおかないと。
しかしアルカナさんにばかり迷惑をかけている気がする。せめて少しでも力になれることはあるだろうか。
相手が魔法……魔術? を使うのなら俺も戦えるようになった方がいいのかな。格闘技とか分かんないよ俺。護身術覚える? というか魔術に護身術意味あるの?
「じゃあ、俺にできることある? 当日までに必用なものとか、覚えておいた方がいいこととか」
『とりあえず……そうだな、覚悟はしておくといい。後はきっと何とかなる。いつもそうだっただろう』
「……そうだね。よし、頑張ろう!」
『ああ』
俺を信頼しているアルカナさんの言葉にその場で覚悟を決める。
とても危険な作戦になるかもしれない。でもきっと大丈夫、いつも俺は勢いで何とかなってきた男だ。あまり難しく考えずに、アカウント取り返すぞ! くらいの気持ちで行こう。
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