弱小領主のコレクター生活~アイテムチートで冒険、領地運営をしながら最強領主に成り上がります~

瀬口恭介

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最終章『黄昏の約束編』

151 英雄は駆け付ける 前編

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 先生……いや、もう先生ではない。根上の言葉と共に隣に倒れていたレクトが消滅する。
 まるで最初から何もなかったかのように塵一つ残っていない。

「そんな……」

 驚愕で上手く言葉が出てこない。
 私のせいなのか、私が騙され、あの異世界から戻ってきてしまったからこうなってしまったのか。
 ならば、罪を償わなければならない。しかしこの動かない体では何もできない。

「見ろミカゲ。この隕石が落ちれば、憎き文明が消え去るのだ。ああ、美しい……」
「消え去る……」

 そうだ、ジャスターとリスティナはどうなる。
 あの二人は地球に、日本に連れていくと約束したのだ。
 このまま隕石が落ちればあの二人も死んでしまうだろう。

 あの世界を憎んでいた私は、あの二人を受け入れていなかった。
 だが、憎む理由が無くなった今残るのは後悔だけだ。

 もっと優しくしてやればよかった。仲間として受け入れてやればよかった。
 世界を捨てたあの二人に、希望を与えてやりたかった。
 それももう叶わない。悪いことをした、こんなことに巻き込んで。もし生きていたら、頭を下げて謝ろう。
 今は生き残ることを祈るしかない。そんな自分が情けなかった。

「根上……!」

 祈り、そして根上を睨みつける。
 レクトが言っていたように、もし憎しみでこの拘束を解除させられたら。そう願い歯を食いしばった。
 その瞬間。

「な、なんだ!?」

 視界の端に、青い光が瞬いた。

* * *

 ライトさんが時空魔術を使い、神の元へ転移した。
 もう何度目かの転移魔術だが、未だに慣れない。

「何故お前が――」
「“根上の権限を削除”」

 根上と思われる男が驚いている隙に、ライトさんが権限を消す。
 これで好き勝手されることはない、はず。もし根上が冷静にライトさんの存在を消すなりしてきたら終わりだとか言ってたし、安心していいはずだ。
 一安心。もう負けることはない。
 ところで床に倒れている魔術師は誰だろう。そしてもう一人の俺はどこにいるのだろう。

「貴様……!」
「“状況確認、観測”」

 慣れたように短く神に命令する。
 すると、複数のモニターが空中に現れた。監視カメラのように、各地の状況が映像として表示されている。
 強力な魔物が蔓延り空からは巨大な隕石が降り注ごうとしている。まさに世界の終わりだ。
 あ、この魔物見たことあるぞ。というかほとんど『トワイライト』の魔物じゃん。

「ふう、間に合った間に合った。これで安心だ、二人とも」
「何故貴様がここにいる!」
「そりゃ、助けに来たからに決まってんだろ?」

 おお、かっこいい。これが英雄か。

「だ、だが一歩遅かったようだな。魔法を使えるレクトは消え、地上には隕石が落下している。権限を使っても止めることはできない」
「……っ」
「マ、マジで!? やばいじゃん!!」

 アルカナさんが本気で根上を睨みつけている。
 レクトが、もう一人の俺が消えたとはどういうことか。ここにいないことを考えると、地上に移動したか、もしくは……

「……大丈夫、大丈夫だレクトくん。ライトがいれば問題ないはずだ」
「確かに、何でもできるしね……」

 時空魔術とかいうチート能力さえあれば過去も未来も思いのままなのだ。負ける理由がない。
 一つ負け筋があるとすればライトさんがまた騙されることくらいだ。優しさが仇になるとは。覚えておこう。

「いや、俺は何もしない」
「え、なんで?」

 ライトさんが何もしないとか言い出した。
 できないわけじゃないだろう。時間を操れば過去に戻って止めることだって出来るし、空間を操れば隕石を消滅させることだって出来るのだから。
 それを根上は知らないのだろう、勝ち誇ったような顔で見てくる。うざい。

「そうだ、何故だライト。馬鹿か? できるだろ」
「そうだそうだ! できるできる! 諦めんな諦めんな!」
「口悪いなおい……」

 舐めプで余裕をぶちかましているライトを動かすために声を張ったがまた別の理由がありそうだ。

「お、お願いします……隕石を止めてください!」

 突然、床に倒れていた魔術師が声を上げた。
 体を一切動かさず、声だけ発している。何かしらの理由で動けないのか。

「誰だ?」
「ミカゲと言います、レクトと共に根上に拘束されまして……」
「なるほど、じゃあこっち側だな。えー“ミカゲの拘束を解除”」

 ライトさんの言葉でミカゲという男が動けるようになる。
 ふらふらと立ち上がり、小さく頭を下げた。

「あ、ありがとうございます。あのライト……ですよね? あのライトさんでも隕石は止められないのですか」
「ふっ、流石のライトでもこの隕石は止められまい」

 根上はにやりと口元を歪ませる。
 だが残念、きっとライトさんが何もしなくてもこの事件は解決するのだ。

「いんや、やろうと思えばできるけどな。今回世界を救うのは俺じゃないらしい」
「なに?」

 やはり、ライトさんが何もしないのには理由があった。
 余裕の表情でライトさんが空中のモニターを動かす。そこに何か秘密があるのだろうか。

「お前らも見ろ、ほら、この空の光が見えるか?」

 拡大されたモニターには、隕石が映し出されていた。
 そして、そこに小さな光が飛んでいるのが見える。ゆっくりとズームしていき、その正体が分かる。
 あれは……

「レクトくんじゃないか」
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