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最終章『黄昏の約束編』
156 コレクター、コレクターと出会う
しおりを挟む〈空間移動〉による青い光が視界を覆う。
ふわりとした浮遊感。光が消え、周囲が無機質な白い壁に変わる。
「お疲れ、レクト」
日本人と思われる男が俺を見ながら握手を求めてくる。誰ですか貴方。
「……え、誰」
「おっと初対面だったか。悪い悪い。ライトだ。君の前にあの神に選ばれた人間だ」
ライト、そういえば偽名を使ったときに俺もライトを名乗っていた。あの世界での御伽噺としての『トワイライト』の主人公の名前もライトだったか。
「俺の前に? え、俺って神に選ばれたの?」
「生き返ってただろ? それだよ」
「あーあれか」
死んだと思ったら空を飛んでいたのはそういうことだったのか。
神に選ばれて、生き返ったと。んで生き返った理由はあの隕石を止めることだと。
どういうことだよ。
「おお、久しぶりだなレクトくん」
「ア、アルカナさん!?」
背後から話しかけてきたのは、紫がかった髪の毛に片目が隠れた髪型が特徴的な女性だった。
忘れるはずもない。『トワイライト』での相棒、アルカナさんだ。
こんなところで再会できるとは思わなかった。というかなんでこんなところにいるんだ。
「よ、よう」
「……?」
アルカナさんの隣にいた男が声をかけてくる。
えっと、この人は……この顔、この声……
「うっわ俺だ!?」
「あーこのリアクションはレクトくんだ」
アルカナさんがうんうんと頷いているが、それどころじゃない。
なんで俺がここにいるんだ。というかこんなに女顔だったっけ俺。オフ会でいちごみるくさんに迫られたのはあの人の趣味とかじゃなく普通に女に見えるからだったの?
まさか周りの意見が正しかったとは。女だと勘違いされて不機嫌になってごめんなさい。
それはそれとして、地面には縄で縛られた根上が横たわっていたり気まずそうなミカゲがこちらをチラチラ見ていたりするのが気になる。
状況も把握できていないのだ。まだやるべきことがあるのではないかと不安になる。
「ちょっと、混乱しっぱなしなんだけどさ。説明してくれる?」
「じゃあ俺が話そう。まず俺の話からだな。俺は――――」
ライトを名乗った男が今の状況を説明してくれた。
最初はライトの正体だ。まさか本当に英雄ライト本人だとは思わなかった。ドレイクと戦ったことも覚えているようなので今度会わせてやろう。絶対面白いぞ。
そして次にアルカナさんと俺がここにいる理由だ。
まずアルカナさんが『トワイライト』の運営に関りがある人間だった。そこに俺が巻き込まれたという形らしい。
全てはコピーされてしまった俺をどうにかするためだったようなので、そこは感謝してもしきれない。
「ってことは、後は俺を生み出した人間を倒すだけってことかぁ」
今からやるべきことなどを考えた結果、俺を生み出した人間を倒すという目的だけが達成できていないことが分かった。
とはいえその研究者は力も持たないただの研究者らしく、押しかけて拘束するだけで解決するという。
つまり、もう全ては終わっているのだ。
「ミカゲも、お疲れ様」
「ああ、といっても私は何もしていないが……むしろ根上に騙されて迷惑をかけた人間だ」
「利用されてたんでしょ? ならこれからはあの世界のためになることをすればいいよ」
「そう、だな。これからは己の罪を償ってあの世界のために活動しようと思っている」
ミカゲは騙されていたとはいえあの世界で様々な事件を起こしてきた。
その罪を償うためにあの世界のために活動してもらうのだ。俺もあの世界ではまだまだやっていないことがある。ミカゲには俺の手伝いもしてもらってもいいかもしれない。
「それにしても俺ってこんな顔してたっけ」
「こっちのセリフだよ。中性的な顔にはしたけど、ここまで女顔だとは」
「いやいや、そっちこそちょっと女顔過ぎない? そんなんじゃ女と間違われても文句言えないよ?」
「レクトくんたち、それはお互いに刺さるだろう?」
「ぐっ……!」
「ぐっ……!」
返す言葉もございません。
リアルの俺は髪を切るのが面倒で少し伸びた髪の毛をしている。鏡で見た時はそうでもなかったが、こうして対面してみると中性的……というより女に見える。
声もハスキーな女声だと考えれば違和感もない。目の前の男は俺なのだ。俺と同じことを経験しているため煽りが自分に返ってくる。
「俺、これからは女に間違われても文句言わない……」
「俺も……」
二人して落ち込む。相手は俺だし、嫌悪感はない。でも違和感はあるので友達になるのは難しそうだ。
「んー、そうだねぇ。ねぇ、俺」
「何さ」
「『トワイライト』なんだけどさ、続きがプレイできるか分からないけど……絶対クリアしてよ」
「……任せてよ」
真っ直ぐこちらを見つめながら返事をしてくる。
「だよね。あと、アルカナさんをよろしくね」
「それも当たり前だよ」
「うん、よかった。俺はもうあっちには戻らないと思うからさ……」
それだけ確認出来たら満足だ。これ以上俺から俺へお願いすることはない。
さて、と。ここからが本番だ。
「アルカナさん」
「何だ」
「少し、いい?」
「構わない」
ここで話をしてしまってもいいのだが、大事な話をしようとしていると察したライトが口を開いた。
「じゃ、俺たちは外させてもらうわ」
そう言い、ライトはもう一人の俺とミカゲ、縛られた根上を連れて外に出た。
残されたのは俺とアルカナさんだけ。アルカナさんのことはもう一人の俺に任せようとは思うが、俺個人としてまだアルカナさんに話したいことがある。
小さなことだ。すぐに済むような話。前にした約束を果たすだけだ。
そんなことを考えながら、俺は深呼吸をしてキャスケットに手を掛けた。
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