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ある幼馴染のお話
しおりを挟む「お前ら付き合ったりしないの?」
学校の昼休み、佐間拓斗とその幼馴染である北上愛衣に対し、二人の友人である三瓶雄馬はそう言い放った。
「何急に、どしたの」
先程まで昨日のテレビ番組の話をしていたのにいきなり何を言い出すのだと拓斗は不思議そうな顔をした。
「二人共仲いいじゃん? いつも一緒にいるし。付き合ってないのかなーってさ」
「わ、わたしとたっくんは別に、んふふっ」
にやける顔を抑えながら変な声を漏らす愛衣。否定をしつつも、心の中では付き合いたいと思っているのだ。
そんなことに気付きもせずに、天然男はこう答える。
「そういうのじゃないから」
「ヴぁっ……!?」
愛衣に電流走る。
この鈍感天然男、これはない。こんなに可愛い幼馴染が気にかけてくれているというのに、恋心に気が付かないとは。
ショックを受けた愛衣はその日、放課後までぼけっと過ごすことになった。
* * *
場所は変わって佐間家。いつものように愛衣も家に入るが、今日は拓斗の部屋ではなく妹の栞の部屋に来ている。
そして、学校での拓斗の言葉を栞に伝えた。
「おーよしよし、うちの馬鹿兄がまたあほなこといってごめんねぇ」
「栞ちゃーん!!!」
明るめの茶髪美少女である愛衣と、派手さは無いが十分美少女の栞が抱き合っている光景は一部の人にとってはとても眼福だろう。
栞は豊満な胸が身体に当たり内心ドキドキしながらも少しだけ羨ましいとも思った。
(その凶暴な武器を使えよ。って言いたいけど流石に言えないよねぇ)
「? どうしたの?」
栞の微妙な視線には気付かず、愛衣は不思議そうな顔をした。
拓斗も天然だがこの幼馴染も大概であった。
「なんでもない。それより愛衣さんはどうしたいの」
「そりゃ付き合いたいよぉ!」
「なら好きって言えばいいのに」
「それができたら苦労しないよぉ!」
(こいつらめんどくせー! 早く付き合っちゃえよ!)
実際、好きだと告白された場合鈍感な拓斗でも好意には気付く。
そして、当然のようにその告白を受け入れ、交際を開始するだろう。
だがそうはならない。拓斗は恋愛感情に気付いていないし、愛衣は告白ができないのだ。
「でも言わないと付き合えないよ。ほら、あたしも愛衣さんのことお姉ちゃんって呼びたいから、頑張って」
「うひぃーん……それしかないのかなぁ?」
「無理無理、あの馬鹿兄が告白とか無理。かっこ悪いお兄ちゃんでごめんね」
「? たっくんはかっこいいよ?」
(あぁ……そういえばこの人も馬鹿だったかぁ)
そう、佐間拓斗は天然鈍感馬鹿であり、北上愛衣は天然馬鹿なのである。
愛衣が先に自身の恋心に気付いただけで、それ以外はほとんど同じなのだ。
「とりあえず、選択肢は二つだよ。一つは愛衣さんが告白すること。もう一つは……まあかなり難しいけどお兄ちゃんに恋心を芽生えさせて告白させるか。そしてすぐに実行できるのは前者。もう答えは出てるよね?」
「わたしが……告白する……!」
「よし、隣の部屋にいるから行っておいで」
「栞ちゃん! わたし、頑張るね……!」
顔の前で両手で激しくガッツポーズをする愛衣を見ながら、栞は深く頷く。
勝った。でも不安なのでドア越しに部屋の中の会話を聞いておくことにした。
一人になり寂しがっていた拓斗は、部屋に入ってきた愛衣を見てテンションを上げる。
既に好感度は天元突破していることが伺える。
「栞と何の話してたの?」
「へ、平和について」
「マジか」
アホだ、と栞は思った。
しかし本番はここから。過程や方法などどうでもいいのだ。
愛衣がたった一言、「好き」と言ってしまえばそれで全てが終わるのだから。
「たっくん、今日は大事な話があるの」
「大事な話……?」
まさか平和についてか……!? と拓斗は思った。馬鹿である。
だがそのおかげでお互いに向かい合い顔を合わせる結果になった。
後は告白をするだけ、さあ早く! 今だ! とドア越しの栞はスポーツ観戦のようなテンションで応援していた。
「すっ……す……すしとラーメンなら焼肉だよね!」
「え?」
「飲み物取ってくりゅうううううううううううう!!!」
風になった愛衣が廊下を駆け抜け、一階の冷蔵庫へ向かう。
「俺はすき焼きがいいな」
みんなで外食にでも行くのかな? と思った拓斗はそう呟きながら背伸びをする。
拓斗の部屋の前にいた栞は、部屋の中でふざけたことを呟く拓斗とリビングにいるであろう愛衣を交互に見た後、深いため息をつき一言。
「ダメだこりゃ」
続かない。
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