第一回チート転生RTA選手権大会

瀬口恭介

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第一回

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「さあ始まりました第一回チート転生RTA選手権大会。実況は異世界転生転移でお馴染み神様と、私の部下であり幾多の転生者を轢き殺してきたトラックの運転手さんにお越しいただいておりますこんばんは」

「こんばんは。あれ普通に心が痛むのでやめてほしいです」

「なるほど。最近ではトラックを受け止める転生者もいるらしいのでお気を付けください」

「怖いですね。神様も別作品の話題は危険な気がするので気を付けてほしいところです」

「コメディなので多少は許されるでしょう。あーーっと、そんなことを言っている間に今回挑戦する選手が入場しました!」

「転生のことを入場って言うんですね」

「肉体が異世界に完全に現れたタイミングでタイマースタートです。魔王を倒した瞬間にストップします。チート転生RTAですが、レギュレーションは殺人禁止、始まりの街第三区域の民家から入れるクリア後要素の魔王城へのワープ禁止、デスルーラ禁止となっております」

「そんな要素があったんですね。あと最後は要らないと思います」

「男が始まりの街に向かいました。スタート位置は始まりの街の前の草原です。何もないです」

「男に名前はないんでしょうか」

「聞きそびれましたね。田中とかでいいんじゃないでしょうか」

「チートを渡した張本人とは思えない発言が飛び出しました。轢き殺しただけなので名前を知らない僕に罪は無いと思います」

「おおっとここで情報が入ってきました。なになに、佐藤吾郎さんだそうです」

「野球が上手そうですね」

「小説家になろうに相応しくない名前なのは分かりました。さあ佐藤選手が始まりの街に到着しましたが……街に入れないようですね」

「おそらく通行証が必要なのでしょう。大きな街ならば警備もしっかりしていますから。ご都合で簡単に入れるという浅はかな考えではクリアできません」

「そうですね。ちなみに正解は城壁を破壊するか、忍び込むかの二択です」

「人としてはどちらも間違ってますね」

「……長いですね。実況としては進展がないのは反応に困るのですが」

「荷物検査と身体検査をしているようです。この時間を利用してお聞きしたいのですが、佐藤選手の選んだチートは何なのでしょうか」

「今回佐藤選手が選んだチートは……エクスカリバーですね」

「ビーム出ちゃう感じですか」

「出ちゃいますね。しかも光ってます」

「そりゃ止められますよね」

「あ、何とか街に入ることができたようです」

「どうやって入ったんでしょうか、すみません、リプレイってできますか?」

「あ、できますよ。ついでに音量も大きくしましょう」

 ピッ

『俺は勇者だ。魔王を倒すためにこの世界に来た』

『な、なに!? 勇者さまだと!?』

『ふっ、こんなところで止まっている場合ではない。早く通してくれ』

『は、はい! すぐに!』

 ピッ

「見てられないですね」

「さっきまで一般の日本人だったとは思えませんね。転生する人って全員こうなんですか? 全員こんななら僕喜んで轢き殺しますよ」

「このケースは稀ですね。しかも強い武器を持ったことにより謎の自信が芽生えてしまったようです」

「足は地震かと思うほど揺れてますけどね」

「上手くないですね」

『地図! 地図はどこだ!』

「焦ってます。この世界は何度か覗いたことがあるのである程度は知っているのですが、RTAとしてはどのような行動が一番いいのでしょうか」

「なるべく早く魔王の城の場所を知って、チートでぶっ殺すのが速いと思います。選手には転生する前にRTAについての説明はしていますから、何年もかかるということは無いと思います」

「魔王を倒した場合何がもらえるのでしょうか」

「生き返れますね。日本に生き返るもよし、異世界で生き返るもよしです。RTA中の身体で異世界に残ることもできますが、チートは失うことになります。お金や武器、人間関係などは残るのでそこは安心です」

「チートがなくてもある程度は楽しく暮らせるんですね」

「まあ生き返った後も私は異世界の監視をしているので悪いことをしたらお仕置きしますけどね」

「世知辛いですね」

「ああっと! 佐藤選手が地図を手に入れたようです!」

「早いんですか?」

「転生特典が武器と考えると順調ではありますねー」

「武器意外だと何が良いのでしょうか」

「やはり移動ができるチートでしょうかね」

「移動ですか。あ、トラックとかですかね!」

「論外ですね。トラックよりも馬の方が小回りが利いて扱いやすいです。ついでに、トラックは舗装されていない道をまともに走れません。選ぶなら戦車ですかね」

「厳しいですね」

「物以外だと、やはり魔法の能力ですかね。魔法で空を飛ぶこともできますし、攻撃もできますから」

「最強じゃないですか」

「最強です。ですが一つ問題があります。魔王は魔法耐性を持っています。物理攻撃よりもダメージが入りにくいんですよ」

「あらら、では長期戦になってしまうんですね。でも、流石に長期戦とはいえ一気に魔王城までいける魔法の方が速いんじゃないですか?」

「それがそうとも言い切れないんですよ。この世界には仲間になってくれる人がいます。勇者に力を貸してくれる人は当然いるわけで、その中には空を飛べる魔法を使える人もいます」

「つまり、物理攻撃ができるチートを手に入れて、空を飛べる仲間に手伝ってもらって魔王城に行く方が速いと?」

「魔法チートとどっこいどっこいですね。まあ最速の行動なんてまずとれないんですけど」

「なんて言っている間に魔物を狩り始めましたよ」

「お金稼ぎでしょう。魔物を倒してお金を稼いで馬に乗る必要がありますから」

「しかし、この行動は街に入る前にできたのでは?」

「そうですね。普通お金よりも情報を集めようとしますから、最初にお金を集めだしたら逆に引きます」

「可哀想ですね。一つ気になったのですがなんで魔物を倒したらお金が手に入るんですか」

「これは王道RPGでよくある魔物を倒した時にお金を入手できるという換金描写を省略した運営の計らいを楽をしたいと思った作者が利用して、小説にそれを取り入れたからですね。この世界も数あるご都合主義の世界にすぎませんから」

「なるほど……ですが現実が辛くなって癒しを求めている人が多い今、ご都合主義というものは逆に需要に合っているのではないでしょうか」

「ええ、というかそもそもご都合主義じゃない作品なんてほとんどないですからね。露骨かそうでないかの違いですよあれは」

「露骨で楽に軽ーく読める作品の方が好きという人もいますからね。僕は断然頭使わない作品の方が好きです。心に余裕がないですから」

「なぜでしょうか」

「なぜでしょうね。もしかしたら誰かに頼まれて人をトラックで轢いてるからかもしれません」

「さあ佐藤選手、馬に乗って魔王城を目指しはじめました」

「魔王城は遠いんですか?」

「近いです。馬に乗って二日でしょうか」

「クッソ近いですね。でも近いとはいえ二日……これはさすがに長いですね」

「それまで実況を続けるのは苦痛なので異世界の倍率を上げましょうか。五分で一日が経過する倍率になります」

「ソードアートですね」

「しかもアンダーワールドですね。アニメの戦争が楽しみです」

「話が脱線しましたね。ええと、約十分間時間を潰す必要があります。どうしますか?」

「お便りが届いております。読み上げましょうか。えー『いつも見てます』」

「第一回なんですけどね」

「『今回の企画を知った時、自分も参加できたらなと普通に異世界に転生したことに後悔しました』」

「他の異世界にリスナーがいるんですね」

「『個性豊かな選手を見るのがいつも楽しみで、毎週録画して見ています』」

「個性豊かな選手、今加速してますね。あと異世界にテレビあるんですね」

「『最後になりますが、一言。あの時自分を轢いてくれたお兄さんに謝罪ができないことだけが心残りです。もし神様が会うことがあれば、ごめんなさい、そしてありがとうと伝えてください』異世界チー太郎さんからのお便りでした」

「僕この人轢いたかもしれないですね。少しは心が救われました。あ、佐藤選手が魔王城に到着したようです。等速に戻してください」

「こっちは見ている分にはつまらなかったですね」

「動きが洗練されていませんからね。次からは完全にルートを計算した人を選んでほしいです。RTAってそういうものでしょ」

「エクスカリバーが直撃し、魔王が一刀両断!!! あふれ出る魔力に溶け、世界に平和が訪れました!!!」

「ここでタイマーストップ。記録は52時間34分47秒です。これは速いのでしょうか」

「分かりませんね。前例がありませんので。次回からはこのRTAのリプレイなどが公開されますので、もっと速いタイムが期待されます」

「楽しみですね。長い間お疲れ様です。お相手はトラックの運転手である僕と」

「超絶可愛い神様がお送りいたしました。ではまた次の機会に。おつかみー」

「あれ、これモニターのキャラが動いて……」

【コメント】
・おつかみー
・神様hshs
・おつかみー
・おつかみ
・運転手ちゃんhshshshs

「VTuberだったんかい」
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