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武器と素材は使いよう
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武器の値段と私の全財産を比べてみると……足りませんね。
値段の差は……値下げとかそういう次元じゃないね。
「ごめんなさいっ!」
「あーそうだね、これは値下げしたら赤字どころの騒ぎじゃないね……残念だけど、売れないように予約ってことにしておくからまた買いに……んん?」
最初は断ろうとしていたお兄さんだったが、私の荷物を見て表情が変わる。
「え、なんですか」
「その大きな袋は?」
「ああ、これはラピットスの毛皮と角が入ってるんです。これを売ったらお金足りるかなって考えてるんですけど」
袋から毛皮と角を出しながらそう言う。
「な、なら僕に売ってくれないかな? 角を加工させてくれるなら、少しくらいなら僕のポケットマネーから出すよっ! ねっ!?」
すると、突然お兄さんのテンションが変わる。え、そんなキャラだったっけ。
「お、おお……どうしたんですかそんな必死になって。そりゃこっちとしては願ったり叶ったりですけど」
「ラピットスの角は加工がしやすい素材なんだ。僕は鍛冶屋見習いだからさ、加工も練習をしなきゃいけない。でも難しい素材しか手に入らなくてね、爺さんにも最初は初心者向けの素材からやれって言われてたから、練習ができなかったんだ。だから、そっちさえよければ君たちの武器を加工させてほしい。もちろん失敗したら賠償する。どう?」
「私達の武器を加工……ですか」
要は練習台にさせてくれということだ。
ぶっちゃけ、武器は手に入るし、強くなるし、こっちにはデメリットがない。
しいて言うなら、失敗した時に謎の申し訳なさを感じるくらいだろう。
「よくわかんないけど、武器が強くなるならいいと思う!」
「うん、そうだね。それじゃあお願いできますか? あ、でも少しくらいは生活費残してほしいです」
「いやいや、半額でいいよ。僕からしたらラピットスの角は激レア素材なんだから」
「半額!?」
これはまた随分ぶっ飛んでいる人だ。
鍛冶屋の世界がどんな感じなのかは知らないが、それだけ厳しい世界なのだろう。
たまたま私の持ってきたラピットスの角が初心者向けの素材で、お兄さんがそれを欲していた。それだけだ。
「あ、どうせなので加工するところ見てていいですか?」
「えっ見学するのかい? 構わないけど、緊張しちゃうなあ」
そう照れながら笑うお兄さん。私達と同じようにこの人にも夢があるんだ。それを尊重しようではないか。
いざ加工をしようと武器屋の外に出る。隣にある鍛冶屋、加工屋? に移動。鍛冶屋のおじいさんと目が合う。こ、こわい。
「何の用じゃ、店番はどうした」
「その店にお客さんが来たんだ。お客さんの武器を加工するから作業場を使わせてくれ。了解も取った」
「いかん。お前はまだ未熟者。それにお客の武器を加工するなど……失敗したらどう責任を取るつもりなんじゃ?」
「その分の金を払うさ。それに、使う素材はラピットスの角だ」
「なに? お前さんらが手に入れたのか?」
ラピットスの角、そんなに珍しいのか。鍛冶屋のおじいさんも眼が変わる。
ラピットス、調べたがそこまで珍しいわけじゃないっぽいけど、最近は見つかってなかったのかな?
「は、はい。ラピットスとたまたま出くわしまして」
「ふむ……ならばわしも見てやろう。一応聞いておくが、お前さんらは本当にこの男に任せていいんじゃな?」
「ええ、そのつもりです」
「もちろんっ!」
ポコと一緒に返事をする。
「ならばよかろう。さあ、素材を見せよ」
「や、やった! ありがとう爺さん!」
素材を見せろと言われたので、袋から角と毛皮を取り出す。
現状、素材として持ち歩いているのはこの二つのみ。それ以外も素材を集めたいところだが、荷物が多くなってしまうのが難点。それを解決する大きさ以上の容量があるバッグが欲しいところ。必要な物だらけだ。
「これは……素材が足りんな。片手だけ角を加工するとバランスがとれん。作れなくはないんじゃが、それでは納得がいかん。他の魔獣の爪か牙でもあればいいんじゃが……」
そ、素材が足りない……? そんな、それじゃあ私達の武器は後回し?
いや、それならそれでお金を集めるのだが、期待してしまったからショックが大きい。
「確か西の森にデクセスが数体見つかったとか言われてたね。討伐隊が出発するらしいし、到着するのを待つ?」
「いや、それならばお前さんらが直接入手してくるのじゃ。わしら鍛冶屋としては半端な者に武器を使ってほしくないからの」
「ついでに実力を見せろってことですか?」
「そうじゃな。わしらの作った武器を使うに値する実力を見せてくれれば、気合が入るというもの。その間、同じ武器を貸し出そう。どうじゃ?」
魔獣と戦うチャンス。しかも討伐隊と一緒に。
これは正しい戦闘を見られるかもしれない。当然行きたいところ。
「やります。ポコ、いいよね?」
「うん、この先、沢山の魔獣と戦うことになるからねっ」
「よかろう。ではこれを持っていくといい」
おじいさんに四角い紙を差し出される。
「これは?」
「紹介状じゃ。これを城に持っていけば討伐隊に同行させてもらえるはずじゃから、持っていけ」
「あ、ありがとうございます!」
見かけによらず優しいなこのおじいさんと思いながらも、紹介状を受け取る。
討伐隊、そんなのがあることすら知らなかった。武器を貸してくれるのなら練習にもなる。
私は魔獣と戦うことを楽しみにしつつ、お城に向かうのだった。
値段の差は……値下げとかそういう次元じゃないね。
「ごめんなさいっ!」
「あーそうだね、これは値下げしたら赤字どころの騒ぎじゃないね……残念だけど、売れないように予約ってことにしておくからまた買いに……んん?」
最初は断ろうとしていたお兄さんだったが、私の荷物を見て表情が変わる。
「え、なんですか」
「その大きな袋は?」
「ああ、これはラピットスの毛皮と角が入ってるんです。これを売ったらお金足りるかなって考えてるんですけど」
袋から毛皮と角を出しながらそう言う。
「な、なら僕に売ってくれないかな? 角を加工させてくれるなら、少しくらいなら僕のポケットマネーから出すよっ! ねっ!?」
すると、突然お兄さんのテンションが変わる。え、そんなキャラだったっけ。
「お、おお……どうしたんですかそんな必死になって。そりゃこっちとしては願ったり叶ったりですけど」
「ラピットスの角は加工がしやすい素材なんだ。僕は鍛冶屋見習いだからさ、加工も練習をしなきゃいけない。でも難しい素材しか手に入らなくてね、爺さんにも最初は初心者向けの素材からやれって言われてたから、練習ができなかったんだ。だから、そっちさえよければ君たちの武器を加工させてほしい。もちろん失敗したら賠償する。どう?」
「私達の武器を加工……ですか」
要は練習台にさせてくれということだ。
ぶっちゃけ、武器は手に入るし、強くなるし、こっちにはデメリットがない。
しいて言うなら、失敗した時に謎の申し訳なさを感じるくらいだろう。
「よくわかんないけど、武器が強くなるならいいと思う!」
「うん、そうだね。それじゃあお願いできますか? あ、でも少しくらいは生活費残してほしいです」
「いやいや、半額でいいよ。僕からしたらラピットスの角は激レア素材なんだから」
「半額!?」
これはまた随分ぶっ飛んでいる人だ。
鍛冶屋の世界がどんな感じなのかは知らないが、それだけ厳しい世界なのだろう。
たまたま私の持ってきたラピットスの角が初心者向けの素材で、お兄さんがそれを欲していた。それだけだ。
「あ、どうせなので加工するところ見てていいですか?」
「えっ見学するのかい? 構わないけど、緊張しちゃうなあ」
そう照れながら笑うお兄さん。私達と同じようにこの人にも夢があるんだ。それを尊重しようではないか。
いざ加工をしようと武器屋の外に出る。隣にある鍛冶屋、加工屋? に移動。鍛冶屋のおじいさんと目が合う。こ、こわい。
「何の用じゃ、店番はどうした」
「その店にお客さんが来たんだ。お客さんの武器を加工するから作業場を使わせてくれ。了解も取った」
「いかん。お前はまだ未熟者。それにお客の武器を加工するなど……失敗したらどう責任を取るつもりなんじゃ?」
「その分の金を払うさ。それに、使う素材はラピットスの角だ」
「なに? お前さんらが手に入れたのか?」
ラピットスの角、そんなに珍しいのか。鍛冶屋のおじいさんも眼が変わる。
ラピットス、調べたがそこまで珍しいわけじゃないっぽいけど、最近は見つかってなかったのかな?
「は、はい。ラピットスとたまたま出くわしまして」
「ふむ……ならばわしも見てやろう。一応聞いておくが、お前さんらは本当にこの男に任せていいんじゃな?」
「ええ、そのつもりです」
「もちろんっ!」
ポコと一緒に返事をする。
「ならばよかろう。さあ、素材を見せよ」
「や、やった! ありがとう爺さん!」
素材を見せろと言われたので、袋から角と毛皮を取り出す。
現状、素材として持ち歩いているのはこの二つのみ。それ以外も素材を集めたいところだが、荷物が多くなってしまうのが難点。それを解決する大きさ以上の容量があるバッグが欲しいところ。必要な物だらけだ。
「これは……素材が足りんな。片手だけ角を加工するとバランスがとれん。作れなくはないんじゃが、それでは納得がいかん。他の魔獣の爪か牙でもあればいいんじゃが……」
そ、素材が足りない……? そんな、それじゃあ私達の武器は後回し?
いや、それならそれでお金を集めるのだが、期待してしまったからショックが大きい。
「確か西の森にデクセスが数体見つかったとか言われてたね。討伐隊が出発するらしいし、到着するのを待つ?」
「いや、それならばお前さんらが直接入手してくるのじゃ。わしら鍛冶屋としては半端な者に武器を使ってほしくないからの」
「ついでに実力を見せろってことですか?」
「そうじゃな。わしらの作った武器を使うに値する実力を見せてくれれば、気合が入るというもの。その間、同じ武器を貸し出そう。どうじゃ?」
魔獣と戦うチャンス。しかも討伐隊と一緒に。
これは正しい戦闘を見られるかもしれない。当然行きたいところ。
「やります。ポコ、いいよね?」
「うん、この先、沢山の魔獣と戦うことになるからねっ」
「よかろう。ではこれを持っていくといい」
おじいさんに四角い紙を差し出される。
「これは?」
「紹介状じゃ。これを城に持っていけば討伐隊に同行させてもらえるはずじゃから、持っていけ」
「あ、ありがとうございます!」
見かけによらず優しいなこのおじいさんと思いながらも、紹介状を受け取る。
討伐隊、そんなのがあることすら知らなかった。武器を貸してくれるのなら練習にもなる。
私は魔獣と戦うことを楽しみにしつつ、お城に向かうのだった。
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