26 / 65
移動手段が欲しいよ……
しおりを挟む
魔獣を運べる。そんな人が旅に同行すれば、楽になるなんてものではない。運べないことで無駄になってしまう素材や肉などを安全に街まで運ぶことができるのだ。荷物運びが楽になるだけではなく利益も上がる。
そうなると話は別だ。この子は今仲間がいない、一緒に冒険をして、役に立ちそうならば仲間に誘ってみてもいいかもしれない。
「詳しく聞かせて」
「きゅ、急にグイグイ来るでありますな。おほん、先程も言った通り、吾輩は精霊の加護を受けてるんでありますよ」
「うん、なにそれ」
まず精霊の加護ってなに。単純にパワーアップですか?
「えっちゃん、精霊の加護って言うのは、精霊が素質がある人間と契約して、手助けしてくれることを言うんだよ」
「つまり、その精霊に手伝ってもらって、魔獣を運ぶと?」
「そうでありますな。あ、でもその場合は手伝ってもらうと言うよりかは空間を提供してもらう、の方が正しいと思うでありますよ。もちろん手伝ってもらうこともありますが」
「なーるほど」
つまりは、素質がある、天才でありますな?
ふむ、評価が変わりまくってるぞ。その暴走気質、この目で確かめてやろう。
「じゃあ、少しだけならいいよ。一緒に冒険しよう」
「ほ、本当でありますか!!! いよっしゃあああああああああ!!」
天に向かって吠えるアバン。そんなに嬉しいか。
「一緒に冒険するの? わーい! 行こう行こう!」
「やったでありますなぁ!」
ポコと一緒にハイタッチするアバン。こうしてる分には面白い人なんだが、果たして冒険に出たらどうなるのか。
「とりあえず、依頼主はそっちだからどこに行くか決めていいよ」
「え……? じゃあ、今日は東へ進むであります! いざ、太陽の沈む方角へ!」
「おっしゃー!」
んー曖昧だけどまあよし。そして太陽は西に沈んでいた気がするがここはツッコミポイントだろうか。
元々城下町の外に出る気満々だった私達は、いつでも探検ができるようにしていた。抜かりはないぜ、さあ冒険に出よう!
「吾輩が隊長であります! ついてくるであります!!」
「サー! イエッサー!」
「はいはい、隊長、早く進んでください」
城下町から出て広大な草原を進んでいく。
ここで気づいたんですけど、隊長を先頭に立たせるのは危ないのではないだろうか。だってそうでしょう? 突っ走るんだから、後ろにいた方が絶対にいい。
まあ、今回は依頼主という立場だから仕方ないか。大体、旅をしていたらそういう状況だってあるだろう。最大限危険な状態で、暴走を受け入れる……は無理でも止められるのなら十分だ。
「何もないです隊長」
「ま、まだ出発したばかりでありますよ!?」
いやー、移動手段がないのも問題だね。冒険は楽しいものだが、こういう何もない場所での移動は退屈なのだ。
次の国に移動するまでに入手すればいいや、みたいに考えていたが、お金稼ぎもあるしこういう時にあると便利なのだ。なんなら荷物持ちよりも馬車を手に入れる方を優先させてもいいかもしれない。
「馬車借りればすればよかったのにー」
「えっ、借りられるの!?」
初耳である。
「うん。貸し出してる馬小屋があるはずだけど。え、隊長に従うんでしょ? 隊長が言わなかったから必要ないのかなって」
「あります! ありありでーす!」
足痛いよおおおお!!! やだよおおお!!! もう歩きたくないよおおおお!!
ないよっ!! 馬車ないよぉぉぉぉ! ついでに剣もないよっ! 別に必要ないけど。そして毒武器もない。別に必要ないけど。
「だって、あの山まで行くにしても結構歩くよ!? しかも、しかもだよ? 今から戻って馬車を借りるのも大変すぎるよ!! やっべーい!」
「ふむ、ではこれを渡すであります」
「なにこれ」
隊長……じゃなくてアバンがビンを取り出す。ビンの中には黄色い液体が。なんか見覚えあるんだけど。
「疲れにくくなるポーションであります。苦痛に耐えられぬ時に飲むであります」
グイっと一気に飲み干す。ふいー、効くわー。ちょっと酸っぱいのは何なんだろう。果物かな? ポーションに味求めてるのすごいね。
「もう飲むでありますか!?」
「だってさあ、もうそろそろ草原じゃなくなってくるんだよ? 歩きにくくなって疲れやすくなるんだから、早めに飲んだ方がいいでしょ」
「うう……吾輩なりのお詫びの気持ちだったんでありますが……まあ使い方は人それぞれであります」
「あーなんかごめんね。さ、早く行こうぜっ!」
「絶対その元気はポーションのせいだ!」
アバンから聞いたアバンの暴走話よりも、私の方が暴走してない??
これはまずい、冷静になれ。KOOLになれエファ! 私はそういう担当ではないはずだ!
そう、私はいつも冷静で清楚な凄腕ハンター。こここっ、この程度で取り乱したりしない!! してるねこれ。
「とにかくっ! 今はから元気を出してでも進むしかないと思うんだよね」
「まあ、そうだねぇ」
「というか、隊長は吾輩でありますよ!!」
どういうわけか全員が元気を取り戻した。ふむ、三人だとにぎやかさがまるで違う。ポコも今まで以上に楽しそうだ。これなら、仲間に誘ってみるのもありかな。
そう考え始めたタイミングで、山の奥から獣の叫び声が聞こえた。叫び声ではあるが、悲鳴ではない。ただ、大きな声で叫び、縄張りを主張しているような声。
「今の……」
「魔獣の可能性もあるけど、普通の獣かもしれないよ。いずれにしても気を付けないとだけど」
「俄然やる気が出てきたであります! うおおおおおおお!」
「隊長!?」
「待ってアバン!!!」
アバンの初暴走は緩やかなものだったが、突っ走ってしまうという特徴はなんとなくわかった。
その後は、アバンの後ろを歩きつつ、いつでも追いついて止められるように気を付けながら歩いた。
そうなると話は別だ。この子は今仲間がいない、一緒に冒険をして、役に立ちそうならば仲間に誘ってみてもいいかもしれない。
「詳しく聞かせて」
「きゅ、急にグイグイ来るでありますな。おほん、先程も言った通り、吾輩は精霊の加護を受けてるんでありますよ」
「うん、なにそれ」
まず精霊の加護ってなに。単純にパワーアップですか?
「えっちゃん、精霊の加護って言うのは、精霊が素質がある人間と契約して、手助けしてくれることを言うんだよ」
「つまり、その精霊に手伝ってもらって、魔獣を運ぶと?」
「そうでありますな。あ、でもその場合は手伝ってもらうと言うよりかは空間を提供してもらう、の方が正しいと思うでありますよ。もちろん手伝ってもらうこともありますが」
「なーるほど」
つまりは、素質がある、天才でありますな?
ふむ、評価が変わりまくってるぞ。その暴走気質、この目で確かめてやろう。
「じゃあ、少しだけならいいよ。一緒に冒険しよう」
「ほ、本当でありますか!!! いよっしゃあああああああああ!!」
天に向かって吠えるアバン。そんなに嬉しいか。
「一緒に冒険するの? わーい! 行こう行こう!」
「やったでありますなぁ!」
ポコと一緒にハイタッチするアバン。こうしてる分には面白い人なんだが、果たして冒険に出たらどうなるのか。
「とりあえず、依頼主はそっちだからどこに行くか決めていいよ」
「え……? じゃあ、今日は東へ進むであります! いざ、太陽の沈む方角へ!」
「おっしゃー!」
んー曖昧だけどまあよし。そして太陽は西に沈んでいた気がするがここはツッコミポイントだろうか。
元々城下町の外に出る気満々だった私達は、いつでも探検ができるようにしていた。抜かりはないぜ、さあ冒険に出よう!
「吾輩が隊長であります! ついてくるであります!!」
「サー! イエッサー!」
「はいはい、隊長、早く進んでください」
城下町から出て広大な草原を進んでいく。
ここで気づいたんですけど、隊長を先頭に立たせるのは危ないのではないだろうか。だってそうでしょう? 突っ走るんだから、後ろにいた方が絶対にいい。
まあ、今回は依頼主という立場だから仕方ないか。大体、旅をしていたらそういう状況だってあるだろう。最大限危険な状態で、暴走を受け入れる……は無理でも止められるのなら十分だ。
「何もないです隊長」
「ま、まだ出発したばかりでありますよ!?」
いやー、移動手段がないのも問題だね。冒険は楽しいものだが、こういう何もない場所での移動は退屈なのだ。
次の国に移動するまでに入手すればいいや、みたいに考えていたが、お金稼ぎもあるしこういう時にあると便利なのだ。なんなら荷物持ちよりも馬車を手に入れる方を優先させてもいいかもしれない。
「馬車借りればすればよかったのにー」
「えっ、借りられるの!?」
初耳である。
「うん。貸し出してる馬小屋があるはずだけど。え、隊長に従うんでしょ? 隊長が言わなかったから必要ないのかなって」
「あります! ありありでーす!」
足痛いよおおおお!!! やだよおおお!!! もう歩きたくないよおおおお!!
ないよっ!! 馬車ないよぉぉぉぉ! ついでに剣もないよっ! 別に必要ないけど。そして毒武器もない。別に必要ないけど。
「だって、あの山まで行くにしても結構歩くよ!? しかも、しかもだよ? 今から戻って馬車を借りるのも大変すぎるよ!! やっべーい!」
「ふむ、ではこれを渡すであります」
「なにこれ」
隊長……じゃなくてアバンがビンを取り出す。ビンの中には黄色い液体が。なんか見覚えあるんだけど。
「疲れにくくなるポーションであります。苦痛に耐えられぬ時に飲むであります」
グイっと一気に飲み干す。ふいー、効くわー。ちょっと酸っぱいのは何なんだろう。果物かな? ポーションに味求めてるのすごいね。
「もう飲むでありますか!?」
「だってさあ、もうそろそろ草原じゃなくなってくるんだよ? 歩きにくくなって疲れやすくなるんだから、早めに飲んだ方がいいでしょ」
「うう……吾輩なりのお詫びの気持ちだったんでありますが……まあ使い方は人それぞれであります」
「あーなんかごめんね。さ、早く行こうぜっ!」
「絶対その元気はポーションのせいだ!」
アバンから聞いたアバンの暴走話よりも、私の方が暴走してない??
これはまずい、冷静になれ。KOOLになれエファ! 私はそういう担当ではないはずだ!
そう、私はいつも冷静で清楚な凄腕ハンター。こここっ、この程度で取り乱したりしない!! してるねこれ。
「とにかくっ! 今はから元気を出してでも進むしかないと思うんだよね」
「まあ、そうだねぇ」
「というか、隊長は吾輩でありますよ!!」
どういうわけか全員が元気を取り戻した。ふむ、三人だとにぎやかさがまるで違う。ポコも今まで以上に楽しそうだ。これなら、仲間に誘ってみるのもありかな。
そう考え始めたタイミングで、山の奥から獣の叫び声が聞こえた。叫び声ではあるが、悲鳴ではない。ただ、大きな声で叫び、縄張りを主張しているような声。
「今の……」
「魔獣の可能性もあるけど、普通の獣かもしれないよ。いずれにしても気を付けないとだけど」
「俄然やる気が出てきたであります! うおおおおおおお!」
「隊長!?」
「待ってアバン!!!」
アバンの初暴走は緩やかなものだったが、突っ走ってしまうという特徴はなんとなくわかった。
その後は、アバンの後ろを歩きつつ、いつでも追いついて止められるように気を付けながら歩いた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる