気ままにダラダラ狩猟生活~冒険しながら世界を食らいつくします!~

瀬口恭介

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ドラゴンステーキを食す

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 今、数人の兵士にドラゴンを見せ、本当にドラゴンを倒したことを証明した後、そのまま解体をしてもらっている状況だ。
 解体が終わるまでの間私たちは宿をとったり、食事をすることにした。
 宿のチェックアウトを済ませ、酒場に移動する。食堂にもなっているので、夕飯はここで済ませよう。今から料理とか死んじゃう。

「そういえばさー、少しお肉貰ったじゃん? 料理してもらおうよー」
「あーいいね、でもできるのそれ」
「聞いてみるであります。すみませーん」

 疲れ切ってテンションがおかしくなっている。でもせっかくドラゴン肉が手に入ったんだし美味しく食べたいよね。あとで塩で焼いたのも食べるけども。

「あの、持ち込んだ肉を焼いてもらうことってできるでありますか?」
「できますよー」
「できるんかい」

 まさかの許可が出るという。なんでも、狩人が多い街なので、狩った動物の肉を焼いてくれと頼まれることが多いそうな。なんてサービス精神あふれる酒場だ。

「じゃあお願いするであります」
「こっちまだー???」

 隊長が布に包まれたドラゴン肉を渡そうとしたとき、他のお客さんが店員さんを呼んできた。忙しそうだ。

「あ、すみません呼ばれちゃって。厨房まで自分で運んでいただけると嬉しいのですが」
「わかりました」
「じゃあお願いするであります」
「全く同じことを言うな」

 隊長からドラゴン肉が包まれた布を受け取り、厨房へ向かう。肉をその場でカットし、キッチン担当に肉を渡す。要望はステーキだ。安定だね、肉の旨味を確かめないと。

「さて、じゃあ飲もうか」
「かんぱーい」
「乾杯でありますー」
「はい乾杯」

 くぅー、仕事終わりの一杯は最高だね。まあ私今日仕事なんてしてないんですけどね。
 お酒が美味すぎて馬にはならない。残念、もう私たちは馬じゃ満足できない身体になってしまったのよ。いや深い意味はなくギンのせいで。
 皆疲れてちびちび飲むことしかできなくなっている。隊長に至っては寝てる。寝ながら飲んでるよこの冒険家。ちょっと無防備すぎじゃない?  無防備なのに器用すぎない?
 この子、黙ってれば可愛いのになぁ。うれ、うぃうぃ。

「みんな疲れてるねー」
「ポコが一番体力余ってるでしょ。隊長は移動で、私は王様との対話で疲れた。ポコ何かしてたっけ」
「寝てたよー気持ちよかった」
「そうだね。思い返してみれば王様の前でもきょろきょろしてたよね」
「ダメだと思ったが知識欲を抑えきれなかった……」

 なんて犯罪を犯した人が言いそうな言葉なんだ。

「おまたせしましたー、えっと、ご注文のステーキです」
「ありがとうございます。よし食べよう、このために頑張ってたんだ私は」
「その割にはテンション低いよ?」
「もうこれ以上テンションは上がらないんだ。ごめんね」

 これでも今出せる一番のテンションなんだから。
 でも、隊長のようなこの街に住んでいた人が同じ状況ならもっと疲れるのかな、精神的に。

「たいちょー、ほら、肉ですよー」
「にく……より酒であります」
「おっさんじゃん。ほっといて食べよっか」

 皿の上に乗った一枚の分厚いステーキ。あれだけ獰猛なドラゴンだったのに、脂は繊細だ。ナイフを入れるまでもなく肉汁があふれ出してくる。
 いざとナイフを突き立てると、ぐにっと弾力を感じた。かと思えば、スッとナイフが皿まで落ちる。それにより肉汁がさらにあふれ出す。大洪水である。思わずよだれを飲み込んだ。味の想像がつかない。

「じゃ、じゃあせーので食べよう」
「わ、わかった!」

 湯気を吸っただけでも元気が湧いてくる。これが食欲という奴だろうか、久しぶりに空腹というものを感じたような気がする。いつもは暇があれば干し肉をかじっていたからだろうか。

「せーのっ」
「あむっ」

 同時に口に入れる。私は口に入れたフォークを抜くと、規格外の肉汁の量に口を抑えた。こぼれてしまう。
 頑張って抑えても頬が緩んで、出したくないのに肉汁が口から出てくるのだ。これは凶器だぞ。
 緩みっぱなしの頬を復活させるために口を動かす。上下に顎を動かし、肉を噛みつぶしていく。

 第二波。

 もう出ないと思っていた旨味が噛むほどにジュワ~っとあふれ出す。無限の味。食べれば食べるほど味が濃くなっていく。それなのにくどくならない。
 美味い、美味いけど、他に例えられる味がない。あるとすれば、遠くの方に鳥肉の味がするくらいだろうか。味が濃すぎて似ても似つかない味になっている。肉汁の量は牛肉か。例えられたね。盛ったわ。

「美味しい!」

 今はこの気持ちを口に出さねばなるまいと他の人の迷惑にならない範囲でそう言った。口に出してしまえばこっちのもんだ。これから先は食事、空腹を満たすだけ。
 ポコがやけに静かだなと思い見ると、フォークの先を口に入れたまま固まっていた。え、何してるの。

「……! ……! ……!」
「えっと、どうしたの」
「…………!!!」
「わかんねぇよ」

 なんで動かないのさ。フォークが、刺さった? んなわけないか。でも今の状況だけ見ると抜けなくなったと考えるのが妥当だよね……。

「あ、今フォークを抜くと肉汁をぶちまけるからだ!」
「…………!」

 ポコは頭を縦にブンブン振った。どうやら正解らしい。

「いい? ドラゴン肉の初見攻略法はね、慣れることだよ。だからフォークで蓋をしながら肉を噛んでみて」
「……んふっふー」
「多分……おいっしー、かな」

 まあいいや、このまま楽しんでもらおう。

「そんで問題は、隊長だ」

 どうしてやろうか。食べさせてあげようか、でも寝てるし……起きてるのか? どっちだこれは。

「隊長、あーーーん」
「あーーーん? んぐっ」
「おっ、入った入った」

 フォークを隊長の口の中に入れ、すぐさま引き抜く。これでポコ事件は起きない。

「んんんんんんんんんんんんん!!!!!!!」

 私の反応をそのまま再現したかのように口元を抑える隊長。わかる、わかるぞその気持ち。

「どした」
「くっそうめぇですわ!!!! じゃなくてあります!」
「やめとけお前マジで」

 どうやら目が覚めたらしい。私も目覚めたよ。テンション上がりまくりよ。王様かかってこいってなー。
 酔ってないです。

「でもこれは気持ちわかるわ。なんか、自分じゃない自分が出てくるの。一瞬だけど私の出せるテンションの上限をぶっ壊してくるからね」
「今日からこれが主食でありますか……」

 確かにドラゴン肉は余るほどあるけど、これしか食べないわけじゃないよ。
 というかこれだけ食べたら普通のお肉には戻れなくなっちゃうでしょ。ダメだよそんなの、舌破壊するとか凶悪すぎるよこの肉。

「それは逆に大変だから別の肉も食べるよ。クマ肉の時もそうだったでしょ」
「なるほどであります」

 その後、なんとかドラゴン肉式拘束術から抜け出したポコも加えて、ドラゴンステーキと、その他に頼んだ料理を堪能したのだった。
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