むらゆう―村人を目指す英雄―

瀬口恭介

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冒険者編

予知夢

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 ……意識がある。

 先程までいた部屋……ではない。

 真っ暗な世界、ああ、予知夢か。
 前回は……小麦村襲撃事件の時だな。
 王様の言っていた嫌な予感ってのが起こるのか。
 やっぱり時期が近かったか、予知夢を見てからその事件が起こるまでは長くても数日、一週間もないのだ。

 ってことはザンとイアが危ない……のか?
 でもこれも成長のためってことだろう? そうなんだろう? 王様。
 俺は二人を信じるぞ、何かあったら駆けつければいい。
 その気になれば音速は出せるし、直線のみだが。

 そろそろ光が出てきてもおかしくない頃だな。
 まぁ魔大陸だろう、そこで何かが起こるんだ。

 ……光がない?

 俺は予言の光を探して辺りを見回す。

 あった、下だ。

 足元を見ると、カラフルな点が大量に光っていた。
 まるで、宇宙から見た地球のように、光が一箇所に集中していたり、ポツポツ光っているだけだったり。
 本当にそう見えるな……綺麗に何も光っていない場所がある。
 真ん中に大きな塊、その塊の上下に小さな塊。
 下の塊から少し離れた場所に同じような塊。
 妙な既視感、どこだ、どこで見たことがある。

 赤や青、緑。明るい緑……小麦村!?

 この光の集まりは小麦村か!? ってことは真ん中の塊はここ、マールボロ、アイコス。
 上下の光は港か。

 そしてさらに左に離れた光はセブンスタ、キャトル村やファー村だろう。
 さらに北大陸や東大陸、魔大陸も光っている。
 つまりこの世界全体に何かが起こる、ということだ。

 魔大陸には紫の光が大量に集まっている。
 魔物や魔族の魔力色はすべて紫なので、魔大陸の大半が紫色に光っている。
 人間は魔力色がみんな違うからな。
 ソウルのような紫の魔力色を持っている人間は間違えやすいから困る。

 一体何が起こるっていうんだ……?

——ポンッ

 紫の光が何も無い場所から……?

——ポンッポンポンポンポンポンポン

 海にも……!? 無差別に紫の光が増えている。
 ……まさか!

ポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン

 アカーーーーン!! これ絶対魔物が出るやつやん!
 魔物の封印が解かれるやつやんか!
 エセ関西弁っぽくなってしまった。

 これは大変なことになる。
 魔物自体はそこまで強くはないが、死者が出るかもしれない。
 街や村には魔物が入れないようになる加護がかかっているので問題ないが、旅人などがとても危険だ。
 これをどう伝えようか……魔物程度ならザンやイアでも倒せるだろう。
 魔物と違って、魔族は加護を突破できる。
 魔物の復活により、魔族の動きが活発になることが一番の問題だ。

 中央大陸だろうと東大陸だろうと、危険度は変わらないだろう。
 なら東大陸に行く予定は変えないでおこう。

 またミントを待たせることになってしまうからな、さっさと行ってさっさと帰ってこよう。そうしよう。
 さすがに温泉には行かないとな。

 とにかく、みんなにこのことを伝えなくては……
 魔物が……現れるようになることを……
 伝え……なくては……

 魔物……?

 どんな光だったっけ……?
 忘れてはいけない……絶対に覚えていなければ……きっと事件が起こる……
 何で……? 何が理由で事件が起こる……?

 魔大陸で……? いや、世界全体……?
 紫の光……世界全体……それで何が起こる?

 ……あ

* * *

 夢を見ていた。
 あの夢は何だったのだろう。

「……ト! ユウ……! ……ウト!」

 声が聞こえる。

「ユウト!」
「ハッ!」

 ミントの声で目が覚める、水は……かかってないな、よしよし。

「なんかすごい汗かいてたよ?」
「夢見てたんだよ……なんか大切なことだった気がするんだが……」

 思い出せないな。
 覚えているのか紫が広がるってことくらいだ。

「昔のこと思い出したりしてたの……?」
「いや、そういうのじゃない」
「よかった」

 なんだよ、よかったって。
 なんかモヤモヤする、なんの夢だ?

「他のみんなは?」
「まだ眠ってる」

 ふと腕に柔らかい感触を感じた。
 えっなに、暖かい。

 腕を見ると、イアが俺に抱きついて寝ていた。
 馬乗りじゃないから許す。
 てか胸が当たってる、胸が。
 ムネガアタッテ=ルムネガさんじゃないよ。

「気持ちよさそうに寝やがって」
「なんかユウト顔緩んでない? イアちゃんも離れてよぉ」
「緩んでない緩んでない。あと、せっかく気持ちよさそうに寝てるんだから起こさない方がいいぞ」

 マフォは寝起き酷いからな、きっとイアも酷いはずだ。

「むぅ……私も寝る」

 ミントが俺の隣に移動して横になる。

「まてまて、お前まで隣に来たら俺はどうすりゃいいんだ」
「このまま寝ればいいんですよぉ」
「起きてやがったのか、イア」

 起きてるならもう動いてもいいよな。
 引き剥がす勢いで立ち上がってやるぜ。

「きゃー、胸触ったー」
「ユウトさいてー」
「いやいや……え? でも確かに動いたら触ったことになるし……」

 まいった、逃げたら痴漢扱いされるし、そのままいたら美少女二人と添い寝のきっつい状況になる。
 助けて、ソウル……!

「ぐぁー……んんっ、にゃめくじ」

 めっちゃ寝てるよ、なんだよその寝言、ナメクジが夢に出るとか最悪だろ。

「さあ覚悟を決めてください」
「……わかった、みんなが起きるまでこのままでいてやる」
「やったぁ」

 無心だ、柔らかい感触とかしてない、何も当たってない。

 ガシッ

 ……まて、なんでミントまで抱きついてくるんだ。
 両サイドから抱きつかれて眠るとかどんなハーレム主人公だよ、俺にそんなの似合わないぞ。
 リトさんならもっとすごいことする。

「ゆうとぉ……」

 ……そうだ、素数を数えよう、偉い神父も言ってたじゃないか。
 3.14159265358979323846264338……これ円周率だ。
 しかもここまでしか暗記してない、よく覚えてたな俺。

「すーっ……はぁぁぁ……」

 匂い嗅ぐな。
 あの夢について考えよう……

 その後数分、俺は左右からくる感触に耐えながら夢について考察することになった。
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