トップランカーだったゲームに転生した俺、クソみたいな国を滅ぼす悪役集団の団長になる。

黒野マル

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85話  甘い責任

「私のすべて、カイに奪われたい……」


ニアから先に、こういうことを言われるとは思わなかった。

だから、俺は口をポカンと開いてニアを見つめるしかなくて。ニアもまた、赤らんだ顔で俺の頬を両手で包みながら、涙目でぶるぶると震えていた。


「…………」
「…………」


狂おしいほど互いを見つめながら、俺たちはどんどんダメになっていく。

心臓の鼓動がヤバい。すぐにでも爆発しそうで、いくら深呼吸をしても収まらない。

これは、確かに救いようのない浮気者だと思ってしまった。クロエと一緒にいた時に感じたどきめきを、今はニアに感じているから。


「私、カイがいい」
「………」
「初めては全部、カイがいい。初めてのハグも、初めてのキスも、初めての……け、経験も………全部全部、カイがいい……」
「………ぁ、ぅ」
「……カイは初めてのキス、クロエにあげっちゃったけど」
「うぐっ……!そ、それは……!」
「……知ってる。クロエもカイのこと大好きだし、カイもクロエのこと大好きだから、理解はできる」


言葉ではそう言いつつも、ニアはまたもや頬を膨らませた。


「……でも、モヤモヤする」
「………そっ、か」
「私にとってクロエは、すごく大事な存在。かけがえのない友達。私の命ほど大切。だから、クロエとカイを共有するのは仕方ないこと」
「……うん?今なんて言った?共有?」
「でも、思ってた以上にモヤモヤする。やっぱり、どう考えても浮気者のカイが悪い」
「ちょっ、結論おかしくない!?大体、クロエも少しは罪があるじゃん!!」
「クロエ、カイに命を助けられてずっと優しくしてもらった。女の子として好きになるのが当たり前。カイがクロエに優しいのがいけない」
「そんなバカな……!!お、俺は普通に接しただけなのに!?」
「……その普通が、いけない」


なんとか抗議しようとしたところで、ニアは急に俺の顔を引き寄せる。息遣いが当たる距離まで、互いの顔が近づく。

視界がすべて、ニアの綺麗な顔で埋め尽くされる。女の子らしい柔らかい香りも伝わってきて、どんどん顔に熱が上がっていく。

そして、俺と同じように。

ニアも、負けないくらい顔を朱に染めながら言う。


「カイは、平然と他の女の子に優しくする。リエルにもそうだったし、アルウィンにもそう。ずっと……ずっと、私をモヤモヤさせる」
「い、いや。リエルはまだしも、アルウィンは……」
「未来は誰にも分からない。それに、カイを見る時のアルウィンの目つき、妙に優しい」
「い、いやいや!!そんなはずは……!」
「……私は見てくれない」


えっ、と変な声が出そうなとき、ニアはとうとう我慢できないとばかりにもっと、顔を近づける。

鼻の先が当たって、ますますニアの香りが濃くなっていく。

理性が段々と削られる感覚に襲われる中、恨めしさが滲んだニアの声が響いた。


「私、いつもカイの隣にいるのに、私のことは甘やかすだけ。ずっと私のこと、女の子じゃなくて妹みたいな扱いしてくる」
「そ……れは………」
「エ……エッチな目で見ることもなかった。夜這いもして来なかった。私、毎日のように待ってたのに」
「待ってたの!?」
「……だから、カイはお仕置きをされるべき」
「に、ニア!?一旦落ち着こう?なんか、目が光っ―――んん!?」


ニアの目が急に赤く光り出したから、俺はひとまず距離を取ろうとするが―――それよりも先に、ニアに唇を塞がれてしまった。

明らかに熱があって、ぬめりのある口づけ。

ニアはもう絶対に離さないとばかりに体を密着してきて、恨みを爆発させるようなキスを何度も、何度も送ってくる。


「んむっ……!?ニア、ちょ……んん!!」


もはや、キスの域を通り越して―――ニアに貪られている気分だった。

それほどニアの勢いは激しくて、俺は目をぐるぐるさせながらも精一杯ニアに応えようとする。

でも、その唇の動きすらも逃げていると認識しているらしく、ニアは益々唇を動かして、俺を捕食して行った。

それから、何分くらい経っただろう。

俺の頭はもう飛んで真っ白になって、すべてがニアに埋め尽くされてしまって。

ニアはようやく唇を離してから、浅い呼吸を繰り返す。

互いの唇の間には、唾液の線が繋がっていた。


「ふぅ、ふぅ……わ、私は、女の子」
「……し、知ってるよ。それくらい……」
「……違う。カイは知らない」
「え?」
「私がどれだけカイのこと好きなのか、カイは知らない」


さっきはあんなに荒々しくキスをしていたのに。

ニアはいつの間にか乙女の顔になって、俺の胸板に手を当てながら言う。


「私の気持ちも全部知らないのに、カイは他の女の子たちに目移りする。カイは……責任を、取るべき」
「………………ニア」
「……責任を持って、私のは…………初めて、を……奪うべき」
「…………」


数十秒前のキスがウソのように思えるほど、初々しい反応。というか、ニアはちゃんとエッチの概念を……知っているんだ。

なんだかおかしくなって、少し苦笑いが出てしまう。それと同時に、俺は俯いているニアの顎を軽く、持ち上げてみる。

ニアはハッと息を呑んだけど、懸命に俺から目を離さなかった。


「……………」
「……………」


……確かに、ニアの言う通りかもしれない。

ニアに好かれていることは、ずっと前から分かっていた。だけど、俺はいつの間にか、ニアを手のかかる妹みたいな感じで接していたかもしれない。

ニアは、可愛いから。一緒にいると癒されるから。だからこそ、その類の欲望を向けることはなかったのだ。

……でも。


「………なにか、言って」
「………」
「か、カイは……今すぐ、なにかを言うべき……」


………これは、さすがに我慢できそうにない。

あんな激しいキスをされて、こんな小動物みたいな顔をされたら調子が狂う。

少しくらいだけど、めちゃくちゃにしたくなる。

……だから、その欲望がむき出しになる前に、俺は告げる。


「……責任、取るよ」
「……え?」
「ニアが言った責任、今から取る。そして―――」


俺はずっと前から抱いてきた本心を、伝える。


「……ニアのこと、一生幸せにするという責任も、取るから」
「………………………………………………………………………」
「これは、けっこう前から考えたことで……その、勢いで言っているわけじゃないから。これ、ちゃんと本心だから」


真剣に伝えたつもりだった。

いや、そもそも一生という重い言葉を選んだ時点で、真剣じゃないと話にならない。

だというのに、ニアはまた恨めしい視線を送りながら、目じりに涙を溜める。


「……やっぱり、カイが悪い」
「……な、なんで悪いのかな……俺、本気で言って―――」
「すぐそうやって、女の子の心を揺さぶる」


コン、と俺の胸板を軽く叩くのと同時に、ニアは嬉しそうに言う。


「一生、カイの傍にいたいって願っちゃう。カイのお嫁さんになって、一生を添い遂げたいって……願っちゃう」
「……………………………………っ」
「……だから、責任を取るべき」


ニアはもはや我慢できないとばかりに、俺の胸板に顔を埋ずめながら言う。


「責任を持って私を抱いて、幸せなお嫁さんにするべき。じゃないと、一生カイのこと許さない」
「……重いな、俺の相棒は」
「全部全部、カイが悪い」
「……ふふっ」


欲望と温もりが入れ交じって、気づけば俺は自然とニアを抱きしめていた。

……お嫁さん、か。転生してからその単語を聞いたことはなかったけど。

……そうだよな。責任、取るべきだよな。


「……カイ」
「うん」
「……私のすべて、もらって」
「…………」


ドクン、と心臓が大きく鳴り出す。

それを感じたからか、ニアはゆっくり俺の胸板から顔を離して、俺を見上げてくる。

真っ赤な顔には、笑顔が咲いていた。


「未来のお嫁さんの初めて、すべて……奪って」


その夜。

俺は前世のゲームのラスボスだった女の子と、互いの初めてを捧げ合った。
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