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第二章 お見合い編
三者三様のスローダンス
しおりを挟むスローダンスは身体をくっつけてゆったりした音楽に合わせて揺れるだけのものだ。
ステップとか、振り付けなんてものはないので初心者でも出来る。
インテリアかと思っていた大きな蓄音機から音楽が流れると、笹音さんが私の手を取る。
同じ様に恭さんが桜子の手を取ったのが視界の端に見えた。
「緊張しないで。私にお任せください」
余裕そうなだけあって、柔らかなリードでリズムを取ってくれる。
本当に波に揺れている様な優しい動き。
綺麗なお顔が近くて、何も言えなくなる。
「お可愛らしいですね。私にもお心を開いて頂ければ嬉しいのですが」
「ふぇ、は、はいっ」
何言ってんだ私!ドギマギしすぎて頭パンクしそう。
月宗様はソファーにどっかり座り、膝に乗せた涼風の前に青い火の玉を何個も出して遊んでる。何してんだろ。
涼風が手刀で消そうとするけどなかなか消えない様で、面白がった涼風が黒い棒を出したものだから月宗様が慌てている姿が見えた。
「結衣様、こちらに集中を」
また耳元で囁かれ、慌てて耳を抑えた所で曲が終わった。
「残念。3人もおりますので短く設定してあるのですよ。もしもお疲れなら少し休憩なさいますか?」
恭さんがこちらに近づいて来るのをチラと見やりながら笹音さんが私に優しく問う。
「だ、大丈夫です……」
「結衣殿、俺とも踊って頂きたい」
両手を柔らかく持たれ、恭さんのリードが始まる。曲調は違うけれど、やっぱりスローテンポな音楽が始まり、ゆっくりと動き出す。
「手を肩に」
「は、はい」
肩に手を回すと抱きついているみたいになる。
背が高いから、下を向くのがちょっとキツくて、強制的に上を向いてしまい、恥ずかしすぎて顔が熱い。
笹音さんよりも筋肉質で胸板が広い。軍服を着た軍人さんと踊ってることに現実感が全くなくて、ふわふわとしてしまう。
月宗様をチラと見ると、やっぱりまだ涼風と遊んでいた。
棒を出されたせいか離れた天井付近に青い火の玉を移動させていて、黒い鉄の棒を構えた小さなクマさんが火の玉と睨み合ってる。
何してんだ。
「結衣殿、明日は俺の贈ったドレスも検討してもらえたら嬉しい」
「は、はい、あの、お礼が遅れてすみません。プレゼント、ありがとうございました」
私の片腕をとり、やや身体を離して話しやすい体勢を作ってくれる。
「少しずつでいい、俺ともくだけて話してもらいたい」
「…………はい」
恭さんがニカっと笑うと、尻尾が左右に振れたのが見えた。笑うと幼く見える人だな、と思う。彼が1番年上なはずなのに。
笹音さんと月宗様が25、恭さんはたしか28だったはず。
年上のイケメンが、笑うと幼く見える。
ようやく曲が終わり、恭さんが私を月宗様の所までエスコートする。
何かの協定が結ばれているのかと思うほど、争わずに順に譲り合う。
嫁取り争いなはずなのに。
◇◆◇
「やっと俺の所に帰って来たな。あいつら殺そうかと思った」
そうかな?涼風と楽しそうにしてたのに。
月宗様は私を連れて庭に続くテラスに出た。
どういう仕組みなのか、暗闇に数個灯籠がういていて、ぼんやりとオレンジの光を放ってる。
「くっそ!結衣お前、今日はもっかい風呂入れよ!!!」
汗もかいたし、お化粧も落としたいから入るけど……何なのだろう。
うっすらと聞こえる曲がはじまると、バサっと音がしてあたりが真っ暗になる。
暗闇の中で抱き上げられて、ダンスというより、抱っこになって困惑する。
「そのまま、俺に体重預けろ」
片腕に座るように抱き上げられた体勢のまま首に手を回して、首筋に顔を埋める。
「うおっ!?」
どうせ羽に隠れて誰からも見えないからと大胆に抱きついた私にビックリした月宗様の声が可笑しい。
「会いたかったの」
「ああ、俺もだよ」
「本当に、会いたかったの」
「………………」
「あの時、私の彼氏って言ったの、覚えてる?」
「覚えてるよ」
そうか、覚えていてくれたのか。
あの時月宗様は私のカレシなの?の質問に“ そうだな ”って答えたんだよ。
それも覚えてる?
心の中で問う。
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