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第二章 お見合い編
マホガニーのクローゼット
しおりを挟む「涼風、おはよ」
私の横で猫のように丸くなって眠る涼風の三角帽子の頭を撫でる。
あの後私はすぐに自室に運ばれてしまい、疲れていたのかほっとしたらすぐに眠ってしまった。
おじ様達は無事にお家に帰れただろうか。
「お嬢様~~~今日は若夜までいないんで、ちょっと遅れましたけど屋敷を案内させて下さい~!!」
そうだった。到着した日は夜だったし、昨日は大学でバタバタしてここのことを全く知らない。
知っているのは大広間とお茶室がある事ぐらいだ。
「月宗様、忙しいの?」
「重役会と、夕方からはこちらで蛇一族との顔合わせですね!」
「会えるかな?」
「会いにきますねきっと。お嬢様と、糖分補給に!」
そうだったら嬉しいな。
スマホを確認するとメッセージが一つ。
————俺にも茶くれ
お手前の事かな。
ふふ、嬉しいな。メッセージを確認する癖がついてしまいそう。
————扉、直してくれたらね
怒ったスタンプと一緒に送るとすぐに返事がくる。
————すぐ直す
私今ぜったいニヤニヤしちゃってると思う。
テーブルに私の朝ごはんのカトラリーをセットし始めるレレさんがニマニマしてるもの。
「あ、お茶は私淹れます……涼風のを、淹れたくて…」
「了解です!」
毎日朝ごはんと共にレレさんがお茶を淹れてくれている。紅茶だったり、緑茶だったりメニューによって選ばれていて、部屋には専用の戸棚がちゃんとある。
「お嬢様、こちらをお使いになりますか?」
マキノさんがガラスポットを持って来てくれた。
普段はお湯を食堂から運んでくるけれどこれならここでお湯を沸かせる。
「素敵……」
ガラスポットは持ち手が彫りのあるデザインガラスになっていて、八咫烏の紋様が刻まれている。
「この輪の上に置いておけばお湯になりますよ~~~!火よりも遅いですけど!!」
それならばちょうどいい。時間をかけた方が涼風は喜びそうだから。
黒曜石の輪っかの上に水を入れたガラスのポットを置いて、部屋を見回す。
「レレさん?クローゼット、空っぽ……」
確かに昨日はあの中に何枚かワンピースが入っていたはず。無難な物を急いで選んだ記憶があるもの。
お湯を沸かしている間に着替えてしまおうと思ったのに無い?
「あ~~~、若が買いすぎまして……………」
「??」
「こちらです……」
起きたらしい涼風がそばに来たので抱き上げてレレさんの後を追うと、寝室の隣の続き部屋の居間に新たなドアが現れていた。
「あれ?昨日までは壁でしたよね?」
「開けてみればわかりますよ~~~!」
恐る恐る開けると、部屋一面のクローゼット。
左右の壁に嵌め込まれたマホガニーの造作クローゼットは、赤みを帯びた艶やかな濃い茶がアンティークっぽくてすごく可愛い。
中央に細長いスツールまで置かれ、同じマホガニーの重厚な彫りが施された大きな姿見まである。
「わあ…………」
「なんとヤバいことにまだ隣のお部屋があるんです!若の溺愛もここまでくるといっそ清々しいです!!」
クローゼットのお部屋の奥にはまた扉があって、統一された赤茶の木で出来た格子ドアを開けると奥のお部屋は和室になっていた。
衣桁に振袖がかかり、脇には桐の着物箪笥が並ぶ。
「凄い…………」
「今にアクセサリーだけの部屋を作り出しそうです!!ヤバめ!!!」
アンティーク調の椿柄の着物が気になって手に取ると、レレさんがすぐに帯の色を選び始める。
着物箪笥は日光に弱いのでこの部屋に窓はなく、和室なのに何故かシャンデリアがさがっている。
モダンなシャンデリアがキラキラとオレンジ色のきらめきをこぼす。
涼風のお洋服も和と洋に分けられて、私のクローゼット部屋に収納されたようでこの部屋には着ぐるみが無く、レレさんが見せる美しい狩衣にそっぽを向いている。
レレさんに手伝ってもらい椿柄の着物に着替えてお部屋に戻ると、ちょうど良くコポコポとお湯が沸いていた。
「涼風、どのお茶がいい?」
お星様の妖精みたいなレモン色のモコモコ三角帽子ツナギの涼風をティーキャビネットの天板に座らせて茶筒を出していく。
緑茶に紅茶、ほうじ茶、高級なものばかりそろってる。
「紅茶には見向きもしないねぇ」
涼風がくんくんと鼻をならすのは緑茶の茶筒ばかりだ。
今日の朝食は洋風だけど、まぁいいか。
「一緒に朝ごはん、たべようね?」
カップボードにぺたんと座った星の妖精は嬉しそうにぴょこぴょこ揺れる。
涼風のために丁寧にお茶を淹れる。
ふと思い立って、淹れている最中も涼風への感謝を思い、込めていく。
このお部屋には涼風用のベビーチェアもあるけれど、今日は私のお膝から動かなそうだしここでいいかな。
「さぁ手を合わせようか、頂きます」
一緒に手を合わせくれたけれどキョトンと止まっちゃってる。
「お陰様によりて生かされし身は 日々の恵みに抱かれて 支えに救われ今日ある命、ただありがたし」
何となく思いついた言葉を歌を詠むように優しく紡ぐ。涼風も喜んで柏手を打つ。
私と涼風は、これでいい。
涼風と食べる、2人の朝ごはん。
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