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第二章 お見合い編
迎え
しおりを挟む1人になりたいと言ったものの自分だけでは抱えきれず、マリーの図書室に足が向いていた。
腕の中の涼風は大人しく、前を歩く獅子丸タクシーの類君も何も言わない。
「ありゃ?もう終わったの?すごい顔してるよ!美人が台無し!!」
「マリー………………」
ドレスのまま本棚を背にズルズルと座り込むとマリーも隣に座ってくれた。
ぽつりぽつりとさっきあったことを話す。
———誰も悪くない。彼女らも、恭も。
「ふーん……ねぇそもそもさ、結衣はなんで八咫烏の彼氏にふられたの?」
一通り黙って聞いていたマリーがキョトンとした顔で私に問う。
「振られてない。身を引いただけ。私じゃ彼の役に立てないから」
「役に立たないから、身を引いたの?」
マリーは心底わからないという顔をする。
「桜子の力が、八咫烏には必要だもの」
マリーは私の膝の上でドレスのフリルをいじって遊んでいる涼風の頭を優しく撫でる。
「役に立つことで側にいようとするのはさ、怠慢だよ」
「え?」
「本当の人間関係を作ろうとしない、怠慢」
驚いてマリーを見るけれど、涼風を優しく撫で続けている。
「んーとさ、例えば私はママの役に立ちたいから介護してるわけじゃないよ?」
「それは……お母様が、好きだからでしょ?」
マリーは奥の窓際のソファーに座るお母様をチラと見やりまた私を見る。
「うーんと、ざっくり言えばそうなんだけど、そうじゃなくてさ?私は、ママに優しさを渡したいの」
「?」
「ママの役に立とうとか、ママが好きだからとかじゃなくて、一番はね、感謝したいの。彼女が私を一人で育ててくれたから」
「?」
「そんなに難しい事じゃないと思うんだけど…………じゃあ結衣はさ、この子、役に立つからそばにおいてるの?」
この子?涼風??
「そんな事!!…………そんな事ない!」
「ね?天衛君の序列は結衣には関係ない。たまたま一位だっただけだよね?かわいくて、愛したいから側に置いてる。ちがう?」
それは、そうだ。
「天衛君の為に茶葉を探してるのだって、この子に感謝を示したい、優しくしたいって事でしょう?」
目の奥がどんどん熱くなる。
「それ、結衣の大事な彼氏だってそうだと思うよ?狛犬族の私がこんな事言うのもなんだけど」
「……………………………………」
「ほら、天衛君に頼めば、会いに来てもらえるんでしょ?」
「っ……………………」
「天衛君?結衣は八咫烏のご当主と会って仲直りしたいんだって」
「……………………っ!!!」
涼風は上を向いて私の顔を覗き込む。
私が泣きながらこくんとうなずくと、今度はジッとマリーを見た。
「まり」
「はーい。天衛君、声も可愛いのね。私の事、忘れないでね」
私の腕の中でぺこりと頭を下げた涼風が鐘の音を響かせる。
リーーーン、リーーーン
図書館中に、いや、きっと狛犬の里中に響く澄んだ鐘の音。
「狛犬の次期当主が来ております!涼風様、一度移転を!!」
類君が涼風の頭にとまる。
「マリーありがとう。なかなおり、がんばってみる。私の初めてのお友達、背中を押してくれてありがとう。また会える?」
「はーーい、きっとまた会えるよ。私は結衣の事、忘れない」
涼風が移転の神術を使い、足元に青い模様が現れた。
————「うん、私も。」
◇◆◇
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