42 / 97
第1章
お買い物2
しおりを挟む
北部の食器、家具。
東部の銀細工、金細工。
目まぐるしくブースを回っていく。
「リリちゃんは本当に何も欲しがらないねぇ。今日の記念に何か僕から贈りたいのだけれど、これなんてどうかな?リリちゃんに似合うと思うんだ」
聖都にあるヴェルダム湖からとれる透き通った真珠のような宝石を加工したアクセサリーを売る店を見ていると、バラを模した豪華な髪飾りをあてがってくれる。
「こんな高価な物、いただけません……」
「僕、立場上なかなか稼いでいるからね。気にしなくてもいいよ、どうか贈らせて欲しい」
「……でしたら……ありがたく、頂きます。ありがとうございます」
「君にアクセサリーを贈れて嬉しいよ」
「あら殿下、わたくし達にも何か贈ってくださらないかしら。殿下のために着飾って参りましたのにわたくし、寂しいわ」
なんかすごいの出てきたな。
ご令嬢方の圧を感じる。
私がいる間は高位の貴族のみが商団ブースに入場できる人数制限の規制がかかっているそうだから、公爵家とか、伯爵家のご令嬢達なのだろう。挨拶の時に会ったような気もするけれど、人に会いすぎて正直あやふやだ。
「落ち人様、お買い物中失礼致しました。わたくし、ヴェアリー公爵家が長女、イライザですわ。先程父と兄と共にご挨拶させて頂きました。こちらはユノンとイルマ、ビズ侯爵家の双子姉妹ですわ。
わたくし達、カイウス殿下の婚約者候補ですの。お買い物、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
へー、婚約者候補、いたんだねえ。まぁ、王子様ならいて当然なのかな。
しかし令嬢っていつも三人グループなのはなんでなの。
イライザと名乗ったご令嬢はスタイルが良く、身体の圧がすごい。
薄い茶色の髪が丁寧に巻かれていて見るからにお嬢様って感じだ。
双子の2人は意地悪そうなツンとした印象の水色の髪のご令嬢と、おどおどとした大人しいタイプの青い髪のご令嬢だ。
「君たち、落ち人様に失礼だよ」
心なしか殿下がタジタジしているように見えて、ちょっと楽しい。
「殿下こそ、いつもなら私達みなと踊って下さるのに、今日はエルスウィーズ様とだけなんて……忘れられてしまって、泣いておりましたのよ……」
よよよ、とハンカチで目元を押さえている仕草が女優のようで笑ってしまう。
「そ、それは……」
うんうんカイウス殿下は人気者だね。
「婚約者候補様なのですね。私が至らないせいで、本日はカイウス殿下にお時間をたくさん割いて頂きました。感謝申し上げます。私の事はお気になさらず皆様でどうぞお買い物をなさって下さいませ」
「「「え…………??」」」
「は……??」
「さ、じいや、次行こっか!」
「ふおっふおっふぉっ、カイウス殿下、
この爺、腐ってもまだまだ戦えますゆえ、お嬢様の護衛はお任せくだされ」
「あ……あぁ」
「では、皆様失礼します。カイウス殿下、ありがとうございました!」
四人がポカンとしている間にブースを出る。
婚約者候補としては面白くないよね。わかるわかる。
でも私、ライバルじゃないからね!!
そこんとこよろしく!!!
私の後ろにじいやとケイトさんがニコニコとついてきてくれるし、少し自由にウィンドーショッピングを楽しもう!
そう思って周りのブースを見渡すと、たくさんの生地の巻物と動物の革を丸めたものが木箱に無造作に入っているお店が目についた。
「ねぇじいや、あれは何のお店?」
「ほぉ、あれは馬具の店ですな。乗馬を嗜むご婦人用の洒落た物を作るようですよ」
「ふーん」
「お気に止まったのなら、寄ってみましょう」
「あ、うん、ちょっとあの生地が気になっただけで」
「お嬢様、行ってみましょう」
ケイトさんまで。
「すみませんが、少し見せて頂きますよ」
じいやが率先してブースに入っていくので慌てて後に続く。
「おっ、何でも見ていってくれ。馬具も乗馬服も両方扱うぞ」
今回の商人さんは割とフランクで話しやすい。ワイルド系のおじさんだ。こちらの世界ではモテない部類に分類されてしまう事が嘆かわしい。薄めの茶髪なだけ、マシなのかな。
「お嬢様、この生地でしたか?」
「あ、うん、ちょっと、気になって……」
「動物の毛皮にみえるだろ、けどそれ冬毛樹っつー植物の皮なんだわ。鞍の表面に使うとあったかいからご婦人に人気だぞ。あとはブーツの裏なんかにも使うな。元の色は黒だが、どんな色にも変えれるから安心しな」
「ええと、あの、もっと全然違うものもできたりしますか?」
「ん?縫うのは魔法でぬうからな。デザインさえもらえれば何でも縫う。一応馬具の店だが、小物も扱っているからな」
そう言って、紙と万年筆を出す。
「万年筆で…………上手く描けるかな」
この生地を見た時からピンときちゃった、元の世界においてきちゃった宝物。
インクの量や掠れ具合に四苦八苦しながらなんとか描き上げる。
わりと美術は得意だったんだぞ!
「おや、可愛らしいですねぇ。クマですか?」
じいやが隣で褒めてくれるぐらいには上手に描けたと思う。
じいや、何でも褒めそうだけれど。
「そう、テディ・ベアっていうんだけど、この世界はぬいぐるみとか、あんまりない感じ?子供が欲しがったり…………」
「玩具ですか?そうですね、あまり、無いですね、彫刻なら、さかんですが」
「せっかく綺麗な黒の毛皮だから……えっと、抱いてちょうどいいこのくらいの大きさで、その……目は、濃いめの琥珀色で」
「ここまで丁寧なデザイン画があれば完璧だ」
「ふぉっふぉっふぉっ」
じいやが何かを察したように笑う。
うぅう…………そりゃあすぐバレるよね。
「じいや……シェイド様には……内緒にして」
「ふぉっふぉっふぉっ、ご随意に。何も見なかった事に致しましょう。坊ちゃまには、ハンカチを買った、とでも」
「……うぅ、ありがと…………」
テンション上がってお願いしちゃったけど、コレ支払いシェイド様だったよ!!
でもシェイド様ベア、ぜったい欲しい!!
東部の銀細工、金細工。
目まぐるしくブースを回っていく。
「リリちゃんは本当に何も欲しがらないねぇ。今日の記念に何か僕から贈りたいのだけれど、これなんてどうかな?リリちゃんに似合うと思うんだ」
聖都にあるヴェルダム湖からとれる透き通った真珠のような宝石を加工したアクセサリーを売る店を見ていると、バラを模した豪華な髪飾りをあてがってくれる。
「こんな高価な物、いただけません……」
「僕、立場上なかなか稼いでいるからね。気にしなくてもいいよ、どうか贈らせて欲しい」
「……でしたら……ありがたく、頂きます。ありがとうございます」
「君にアクセサリーを贈れて嬉しいよ」
「あら殿下、わたくし達にも何か贈ってくださらないかしら。殿下のために着飾って参りましたのにわたくし、寂しいわ」
なんかすごいの出てきたな。
ご令嬢方の圧を感じる。
私がいる間は高位の貴族のみが商団ブースに入場できる人数制限の規制がかかっているそうだから、公爵家とか、伯爵家のご令嬢達なのだろう。挨拶の時に会ったような気もするけれど、人に会いすぎて正直あやふやだ。
「落ち人様、お買い物中失礼致しました。わたくし、ヴェアリー公爵家が長女、イライザですわ。先程父と兄と共にご挨拶させて頂きました。こちらはユノンとイルマ、ビズ侯爵家の双子姉妹ですわ。
わたくし達、カイウス殿下の婚約者候補ですの。お買い物、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
へー、婚約者候補、いたんだねえ。まぁ、王子様ならいて当然なのかな。
しかし令嬢っていつも三人グループなのはなんでなの。
イライザと名乗ったご令嬢はスタイルが良く、身体の圧がすごい。
薄い茶色の髪が丁寧に巻かれていて見るからにお嬢様って感じだ。
双子の2人は意地悪そうなツンとした印象の水色の髪のご令嬢と、おどおどとした大人しいタイプの青い髪のご令嬢だ。
「君たち、落ち人様に失礼だよ」
心なしか殿下がタジタジしているように見えて、ちょっと楽しい。
「殿下こそ、いつもなら私達みなと踊って下さるのに、今日はエルスウィーズ様とだけなんて……忘れられてしまって、泣いておりましたのよ……」
よよよ、とハンカチで目元を押さえている仕草が女優のようで笑ってしまう。
「そ、それは……」
うんうんカイウス殿下は人気者だね。
「婚約者候補様なのですね。私が至らないせいで、本日はカイウス殿下にお時間をたくさん割いて頂きました。感謝申し上げます。私の事はお気になさらず皆様でどうぞお買い物をなさって下さいませ」
「「「え…………??」」」
「は……??」
「さ、じいや、次行こっか!」
「ふおっふおっふぉっ、カイウス殿下、
この爺、腐ってもまだまだ戦えますゆえ、お嬢様の護衛はお任せくだされ」
「あ……あぁ」
「では、皆様失礼します。カイウス殿下、ありがとうございました!」
四人がポカンとしている間にブースを出る。
婚約者候補としては面白くないよね。わかるわかる。
でも私、ライバルじゃないからね!!
そこんとこよろしく!!!
私の後ろにじいやとケイトさんがニコニコとついてきてくれるし、少し自由にウィンドーショッピングを楽しもう!
そう思って周りのブースを見渡すと、たくさんの生地の巻物と動物の革を丸めたものが木箱に無造作に入っているお店が目についた。
「ねぇじいや、あれは何のお店?」
「ほぉ、あれは馬具の店ですな。乗馬を嗜むご婦人用の洒落た物を作るようですよ」
「ふーん」
「お気に止まったのなら、寄ってみましょう」
「あ、うん、ちょっとあの生地が気になっただけで」
「お嬢様、行ってみましょう」
ケイトさんまで。
「すみませんが、少し見せて頂きますよ」
じいやが率先してブースに入っていくので慌てて後に続く。
「おっ、何でも見ていってくれ。馬具も乗馬服も両方扱うぞ」
今回の商人さんは割とフランクで話しやすい。ワイルド系のおじさんだ。こちらの世界ではモテない部類に分類されてしまう事が嘆かわしい。薄めの茶髪なだけ、マシなのかな。
「お嬢様、この生地でしたか?」
「あ、うん、ちょっと、気になって……」
「動物の毛皮にみえるだろ、けどそれ冬毛樹っつー植物の皮なんだわ。鞍の表面に使うとあったかいからご婦人に人気だぞ。あとはブーツの裏なんかにも使うな。元の色は黒だが、どんな色にも変えれるから安心しな」
「ええと、あの、もっと全然違うものもできたりしますか?」
「ん?縫うのは魔法でぬうからな。デザインさえもらえれば何でも縫う。一応馬具の店だが、小物も扱っているからな」
そう言って、紙と万年筆を出す。
「万年筆で…………上手く描けるかな」
この生地を見た時からピンときちゃった、元の世界においてきちゃった宝物。
インクの量や掠れ具合に四苦八苦しながらなんとか描き上げる。
わりと美術は得意だったんだぞ!
「おや、可愛らしいですねぇ。クマですか?」
じいやが隣で褒めてくれるぐらいには上手に描けたと思う。
じいや、何でも褒めそうだけれど。
「そう、テディ・ベアっていうんだけど、この世界はぬいぐるみとか、あんまりない感じ?子供が欲しがったり…………」
「玩具ですか?そうですね、あまり、無いですね、彫刻なら、さかんですが」
「せっかく綺麗な黒の毛皮だから……えっと、抱いてちょうどいいこのくらいの大きさで、その……目は、濃いめの琥珀色で」
「ここまで丁寧なデザイン画があれば完璧だ」
「ふぉっふぉっふぉっ」
じいやが何かを察したように笑う。
うぅう…………そりゃあすぐバレるよね。
「じいや……シェイド様には……内緒にして」
「ふぉっふぉっふぉっ、ご随意に。何も見なかった事に致しましょう。坊ちゃまには、ハンカチを買った、とでも」
「……うぅ、ありがと…………」
テンション上がってお願いしちゃったけど、コレ支払いシェイド様だったよ!!
でもシェイド様ベア、ぜったい欲しい!!
684
あなたにおすすめの小説
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています
放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。
希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。
元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。
──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。
「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」
かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着?
優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。
異世界に行った、そのあとで。
神宮寺あおい@1/23先視の王女の謀発売
恋愛
新海なつめ三十五歳。
ある日見ず知らずの女子高校生の異世界転移に巻き込まれ、気づけばトルス国へ。
当然彼らが求めているのは聖女である女子高校生だけ。
おまけのような状態で現れたなつめに対しての扱いは散々な中、宰相の協力によって職と居場所を手に入れる。
いたって普通に過ごしていたら、いつのまにか聖女である女子高校生だけでなく王太子や高位貴族の子息たちがこぞって悩み相談をしにくるように。
『私はカウンセラーでも保健室の先生でもありません!』
そう思いつつも生来のお人好しの性格からみんなの悩みごとの相談にのっているうちに、いつの間にか年下の美丈夫に好かれるようになる。
そして、気づけば異世界で求婚されるという本人大混乱の事態に!
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
想定外の異世界トリップ。希望先とは違いますが…
宵森みなと
恋愛
異世界へと導かれた美咲は、運命に翻弄されながらも、力強く自分の道を歩き始める。
いつか、異世界にと想像していた世界とはジャンル違いで、美咲にとっては苦手なファンタジー系。
しかも、女性が少なく、結婚相手は5人以上と恋愛初心者にはハードな世界。
だが、偶然のようでいて、どこか必然のような出会いから、ともに過ごす日々のなかで芽生える絆と、ゆっくりと積み重ねられていく感情。
不器用に愛し、愛する人に理解されず、傷ついた時、女神の神殿で見つけた、もう一つの居場所。
差し出された優しさと、新たな想いに触れながら、
彼女は“自分のための人生”を選び初める。
これは、一人の女性が異世界で出逢い、傷つき、そして強くなって“本当の愛”を重ねていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる