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第2章
ホワイトデー2
しおりを挟むホワイトデーまであと三日しかない!!!
慌ててじいやとテオ君を呼んで訳を話す。
「お嬢様、お任せください。移動魔法を覚えたてのテオさんの練習にもなりますね」
「僕、簡単なお手紙とお荷物なら送れます!」
配達では日数が心許ないと、移動魔法を使ってくれるらしい。
「テオ君すごい!!!神!!!クリストフさんにも連絡してくれる?ホワイトデーのお返しはちゃんとしないと後が怖いって!」
「めんどくさい行事だな。勝手に押し付けといて……」
足を組んで椅子の背に肘を乗せ、長い指でこめかみを支えるシェイドさまはゲンナリした様子で言う。
完全に興味なさそう!!!無駄に色気がすごい!!!
「シェイドさまの分は婚約者の私の仕事です!」
「ふーーん」
琥珀色の瞳を優しく細めて私を見る。
ドキドキするけど、ドキドキしてる場合ではないのだ!
「シェイド様、明日王城に一緒に連れて行ってくれませんか?」
「いいけど、何すんだ?」
「私が聖都を歩くのは、護衛とか大変ですよね?じいや、ロビリー菓子店と小物屋さんを王城に呼べない?みんなそうやってお買い物するんでしょう?」
「雑作もありません。ですがお嬢様自らお選びになるのですか?私どもで処理できますが」
「うん、向こうの価値観が分かる私が選ぶ方がいいと思うの。贈る物でこちらの気持ちも表さなきゃいけないから。もしよかったらクリストフさんの分も買うから、カードだけ用意してくださいって、伝えてくれる?」
「今言っといだぞ。ここの会話そのまま送った。お願いしますだとよ」
「はーい!任せて!私もシェイド様の分、カード沢山用意しなくちゃ!せっかくだからエルに会えるかな?お手紙書いてみよう。テオ君、後で送ってくれる?」
「はい!お任せください!」
「テオ君は魔力を使って辛くなったりしない?」
「テオは明かりの魔法はできたからな。何年も使ってりゃ何も感じねぇよ」
「はい!大丈夫です!僕、明かりの魔法で虫捕まえるんです!」
「えっと、虫かぁ……」
虫ね。また虫。男の子、怖い。
◇◆◇
「リリっ♡久しぶりね?会いたかったわ♡♡リリの方から王城に来てくれるなんて、お父様、泣いて喜んでたわよ♡」
「こちらこそ、突然誘ったのに会えて嬉しい!王城、シェイド様がいればもう怖くないよ!」
そのシェイド様は今日は総騎士団長の方のお仕事があるとかで、王城の執務室に行ってしまったので、今日はクリストフさんが私の護衛についてくれた。
お買い物のためにじいやとテオ君も後ろでニコニコと見守ってくれている。
テオ君が他所行きの格好をしていて悶絶急に可愛い。
「今日は義姉様も呼んだの♡♡みんなで買い物して、お茶会しましょう♡」
エルは相変わらずハートマークの目でドア付近に控えているクリストフさんを凝視しながら私に話していて面白い。器用だな。
クリストフさんのスルースキルもすごいけど。
すっごい無の顔してる。
「リリ様、お久しぶりにございます。王太子妃のラミアですわ。今日はご一緒できて嬉しいです」
アスラン第一王子のお嫁さんだ。ふわふわのミルクティー色の髪に、タレ目の糸目さんで、とっても可愛らしいお顔なのに、グラマーという何とも羨ましい人だ。
「ラミア様、お久しぶりでございます。私も嬉しいです」
「会場は西棟の中ホールにしたわ。私達のオススメの商団と店も呼んだのよ?まずはお買い物しましょ?」
◇◆◇
小物屋さんでシルクと総レースのハンカチでセットをつくり、化粧品のコーナーで華奢なガラスボトルに入ったオイルを香りがかぶらない様にチョイスする。
ロビリー菓子店で可愛らしいパッケージの小さな砂糖菓子の詰め合わせを買って、三点セットでラッピングをお願いする。
シェイド様の分二十七個と、クリストフさんの分十五個のギフトセットを作って購入して行く。
二人に同時に渡した強者もいたのでクリストフさんの分は、真鍮のミニ手鏡とクッキーのセットに変更した。
「じいや、テオ君、これでお願い。シェイド様の分にはこのカードをつけてね」
〝お気遣いに感謝を“
の一言と名前を添えたカードを封筒に入れて公爵家の紋章の蜜蝋でとじたものを渡す。
因みにこの一文はクリストフさんにも伝えて同じにしてもらった。
下手に相手に期待を持たせず、感謝のみを伝えるのだ!
「畏まりました。クリストフ殿の分も我が家から発送する事になっておりますので、テオさん、先に帰って準備に取り掛かって頂けますか?」
「はい!姫様、お先に失礼しますね!」
「うん、ありがとう。お願いね」
クリストフさんから貰った一覧表に、一人だけ家名のある女の子がいた。
マリアン•ヘスタ。
前に夜会のお誘いが来たのはこの子からだとすぐに分かった。
きっと臣君に魔力を持てる様に相談に行ったんだと思う。
門前に集まる人にも日本の価値観を植え付けたと言っていたから、彼女の目にはシェイド様は完全に王子様に映っているに違いない。
「ギフトばかり選んでいるけれど、あなたの分は買わないの?」
「私?買っていいって言われてないよ?」
「馬鹿ね!何のためにスランがつけられてると思ってるのよ。私には父様の側近のうちの一人がついてるでしょ?義姉様にはアスラン兄様の侍従がつけられているわ。何でも買いなさいってことよ?」
「えぇ、うちは違うと思うなぁ……」
「お嬢様、殿下の言う通りでございます。坊ちゃまはギフトなど既にお忘れのご様子でしたよ。店ごと買ってやれと申しつかっております」
「えぇええ……」
「ね?言ったでしょ?私、今日は義姉様にテディベアを作ってあげたいのよ!」
「ふふふ、そうなんですの。皆様が持っているのを見て羨ましくなってしまって」
見渡すと馬具店のあのおじさんが、こっちに手を振ってくれていた。
「久しぶりだな、嬢ちゃん!何やら偉い人だったみてぇで……」ゴニョゴニョ
「ふふふ、おじさんは今のままがいいよ」
「リリが不敬に問うてないのに私達が出来るはずもないわ。義姉様早速作って頂きましょう!」
アスラン殿下の濃緑の髪にシルバーの瞳を模したテディベアが出来上がって行く様を眺めながら、思いついた事をお願いしてみる。
「あの、栗色の毛皮でペリドットみたいな黄緑色の目の子を作ってもらえますか?私の作ってもらったのより一回り大きめで、綿の感じは私と同じぐらいがいいんだけど……」
「おうよ!嬢ちゃんのおかげでかなり儲かったからな!まけとくぞ!栗色はこんぐらいか?」
「さっきここにいた小さな子を覚えてますか?あの子の髪と同じにしたいの」
「さっきの坊主か。挨拶に来てくれたから覚えてるぞ!まかせとけ、また刺繍糸の目でいいのか?」
「うん。この色がいい」
目の見本で置いてある宝石の中からペリドットを指差す。
首用のリボンの見本もあったので、私と同じ紺色を指定する。
「テオさんの色の物を作るおつもりですか?」
「ふふふ、アラン君ベアだよ?結局テオ君と同じだけど!」
じいやがやっぱり不思議そうな顔をするので笑ってしまう。
「もうすぐテオ君のお誕生日でしょ?だからプレゼントに。アラン君色のベアがあれば、夜に一人の時も寂しくないかなって」
「成る程」
「あとはロビリー菓子店でお土産をかいたいの、いいかな?」
「店ごと買いましょう」
「じいや、シェイドさまとそっくり!規模が大きい!!」
「ふぉっふぉっふぉっふぉ」
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