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野生に生きる
野生で生きてみたら、出会いがあったらしい
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「野...自由...い、そ...の...なん...?」
「記...ない.........む」
「...ほど...、じゃ...の個体...タリか...」
「くれ...気を...ね?転...基......僕...ノー...だ...」
なんか変な夢を見た。でも殆ど覚えてないや、あるあるだよな?こういうことって。
巣も完成した翌日からは、狩って食って寝ての生活を繰り返していた。
仕事とか娯楽のある人間と違って、野性動物は他にやることも無いのだ。
ただ、狩りの際に少し遠出したら、1体だけ俺に向かってくる大きめの鹿がいた時は少し血が踊った。まぁ、食ったんだが。旨かった。
軽く鑑定してみたが、ビッグシッカーというらしい。ステータスは忘れた、体力と力が強めだったような...?
ある日、獲物を探して散歩していたら、日当たりのいい昼寝スポットを見つけた。
この森には俺を襲うことが出来るような奴も少ないし、俺は此処で毎日のように昼寝をすることにした。
ひとつ問題があるとすれば、町に比較的近い事だが、何かしらが近づかれれば本能が起こしてくれるし、大した問題ではないだろう。
因みに最近危険な目に遇うことが少ないからか、本能もあまり語りかけてくることがない。
...本当に大丈夫だろうか?まぁ大丈夫だろう。多分。
数日後、今日も前に見つけた昼寝スポットで昼寝をしていた。
そんな時、甲高い叫び声みたいなのが少し遠くから聞こえた、悲鳴か?こんな声で鳴く生き物が森にいたか?
疑問に思った俺は様子を見るために、声の聞こえてきた方へ出来るだけ足音を消し、姿勢を低くして向かった。
ライオンの後ろ足のお陰で足音はかなり消せるんだが、日中に馬よりデカイ真っ黒なグリフォンは目立つんだよなぁ...
辿り着いた場所には、生き物が大勢いる気配がしたので、近くにあった草木の密集している場所に隠れるようにして様子を窺う。
するとそこにいたのは、ゴブリン10匹位と、若い人間が4人いた。前世基準だとまだ子供だろう。年齢は中学生ぐらい?15歳前後か?
聞きなれない悲鳴は人間の物だったみたいで、何人かが怪我をしている。
女性3人に男1人のパーティーで、怪我をした男を女2人が心配し寄り添っているように見える。
全員打撲、擦り程度の傷はあるみたいだが、あまり重症ではない。
ゴブリンの方を警戒した方が良いんじゃないのか?
もう1人の女はゴブリンと向き合い、手にした槍でゴブリン牽制している。
槍を持った女を殿に森から撤退しようとしているのだろうが、ゴブリンも獲物を逃すまいと石を投げたり、逃げ道を塞ぐ為、回り込もうとしているのもいる。
このままでは彼らはゴブリンに捕まるだろう、だが、あんまり助けようと言う気にはなれない。野生に馴染みすぎて、『これも弱肉強食だ』と思うようになっている。
本能さんも同意している。久しぶり。
しかし、次の瞬間、信じられないことが起きた。
突然、男に付き添ってた女の1人が、殿にいた槍を持っている女の足目掛け、ナイフを投げたのだ。
後方からの足元への攻撃に、殿を務めていた女は対応出来ず太股にナイフを受けて転んでしまう。
それを見た3人は一斉に逃走、ゴブリンは逃げた奴らには目もくれず、目の前の女に襲い掛かろうとしている。
それを見た俺は頭の中が、真っ赤に染まるような衝動に駆られた。脳内に『いじめ』の文字が浮かび、消えない。
今の光景を見て、前世の逆鱗に触れたりでもしたのだろう、記憶には何も残っていないが魂が怒りの感情を露にし暴れている、そんな感覚がある。
そして、その怒り狂う自分を『理解できない』と冷静に見ている野生の自分もいる。
どちらも俺だ、だが感情的な魂と野性的な体が別のことを考えているというか...混乱してきた、難しいことを考えるのは面倒だ、今はこの魂の怒りを解消させてやるのが一番だろう。
それからの俺の行動は早かった。〈乱声〉を撒き散らしながらゴブリンの集団へと突撃する。
突然の大物の出現にゴブリンは戸惑っている、それだけでなく乱声の効果も加わり僅かに混乱もしている。
そうなってしまえば、いくらズル賢いゴブリンも、正しい判断ができず俺に蹂躙されていくこととなる。
俺の体当たりを受けたゴブリンはもはや即死、生き残っても全身骨折で虫の息。
何とか横に避けた奴には翼で木をもへし折るラリアットを、食らわせ重症。
奴らが投げてくる石など痛くも痒くもない、投げられた石を全力の頭突きで返すと、石を投げていた筈のゴブリンの顔面に石がぶつかり陥没する。あれも即死だな。
乱声から立ち直り、逃げようとするゴブリンどもの背中には、翼をはためかせ眠羽を飛ばす。背中に眠羽が刺さり、眠気でよろめき倒れるゴブリンを追いかけ、走りながら踏み潰す。
クソ、数匹逃しちまったか。
蹂躙の跡地には返り血を浴び、元の黒さと相まって赤黒く染まった俺と、血塗れた森、そして足に怪我を負った1人の女が残された。
どうやら俺は前世では...いじめにでもあっていた、らしい。
______________________
○ビッグシッカー
シッカーの進化系。縄張り意識が強くなり、少し好戦的になる。
筋力がかなり上がっており、1体倒すのに、初心者冒険者なら5人は欲しい。
雄の角は鋭さを増し、雌の角は厚さと範囲が広がっている。
肉は旨味と量が増しており、冒険者ギルドでも結構高値で買い取ってくれる。
「記...ない.........む」
「...ほど...、じゃ...の個体...タリか...」
「くれ...気を...ね?転...基......僕...ノー...だ...」
なんか変な夢を見た。でも殆ど覚えてないや、あるあるだよな?こういうことって。
巣も完成した翌日からは、狩って食って寝ての生活を繰り返していた。
仕事とか娯楽のある人間と違って、野性動物は他にやることも無いのだ。
ただ、狩りの際に少し遠出したら、1体だけ俺に向かってくる大きめの鹿がいた時は少し血が踊った。まぁ、食ったんだが。旨かった。
軽く鑑定してみたが、ビッグシッカーというらしい。ステータスは忘れた、体力と力が強めだったような...?
ある日、獲物を探して散歩していたら、日当たりのいい昼寝スポットを見つけた。
この森には俺を襲うことが出来るような奴も少ないし、俺は此処で毎日のように昼寝をすることにした。
ひとつ問題があるとすれば、町に比較的近い事だが、何かしらが近づかれれば本能が起こしてくれるし、大した問題ではないだろう。
因みに最近危険な目に遇うことが少ないからか、本能もあまり語りかけてくることがない。
...本当に大丈夫だろうか?まぁ大丈夫だろう。多分。
数日後、今日も前に見つけた昼寝スポットで昼寝をしていた。
そんな時、甲高い叫び声みたいなのが少し遠くから聞こえた、悲鳴か?こんな声で鳴く生き物が森にいたか?
疑問に思った俺は様子を見るために、声の聞こえてきた方へ出来るだけ足音を消し、姿勢を低くして向かった。
ライオンの後ろ足のお陰で足音はかなり消せるんだが、日中に馬よりデカイ真っ黒なグリフォンは目立つんだよなぁ...
辿り着いた場所には、生き物が大勢いる気配がしたので、近くにあった草木の密集している場所に隠れるようにして様子を窺う。
するとそこにいたのは、ゴブリン10匹位と、若い人間が4人いた。前世基準だとまだ子供だろう。年齢は中学生ぐらい?15歳前後か?
聞きなれない悲鳴は人間の物だったみたいで、何人かが怪我をしている。
女性3人に男1人のパーティーで、怪我をした男を女2人が心配し寄り添っているように見える。
全員打撲、擦り程度の傷はあるみたいだが、あまり重症ではない。
ゴブリンの方を警戒した方が良いんじゃないのか?
もう1人の女はゴブリンと向き合い、手にした槍でゴブリン牽制している。
槍を持った女を殿に森から撤退しようとしているのだろうが、ゴブリンも獲物を逃すまいと石を投げたり、逃げ道を塞ぐ為、回り込もうとしているのもいる。
このままでは彼らはゴブリンに捕まるだろう、だが、あんまり助けようと言う気にはなれない。野生に馴染みすぎて、『これも弱肉強食だ』と思うようになっている。
本能さんも同意している。久しぶり。
しかし、次の瞬間、信じられないことが起きた。
突然、男に付き添ってた女の1人が、殿にいた槍を持っている女の足目掛け、ナイフを投げたのだ。
後方からの足元への攻撃に、殿を務めていた女は対応出来ず太股にナイフを受けて転んでしまう。
それを見た3人は一斉に逃走、ゴブリンは逃げた奴らには目もくれず、目の前の女に襲い掛かろうとしている。
それを見た俺は頭の中が、真っ赤に染まるような衝動に駆られた。脳内に『いじめ』の文字が浮かび、消えない。
今の光景を見て、前世の逆鱗に触れたりでもしたのだろう、記憶には何も残っていないが魂が怒りの感情を露にし暴れている、そんな感覚がある。
そして、その怒り狂う自分を『理解できない』と冷静に見ている野生の自分もいる。
どちらも俺だ、だが感情的な魂と野性的な体が別のことを考えているというか...混乱してきた、難しいことを考えるのは面倒だ、今はこの魂の怒りを解消させてやるのが一番だろう。
それからの俺の行動は早かった。〈乱声〉を撒き散らしながらゴブリンの集団へと突撃する。
突然の大物の出現にゴブリンは戸惑っている、それだけでなく乱声の効果も加わり僅かに混乱もしている。
そうなってしまえば、いくらズル賢いゴブリンも、正しい判断ができず俺に蹂躙されていくこととなる。
俺の体当たりを受けたゴブリンはもはや即死、生き残っても全身骨折で虫の息。
何とか横に避けた奴には翼で木をもへし折るラリアットを、食らわせ重症。
奴らが投げてくる石など痛くも痒くもない、投げられた石を全力の頭突きで返すと、石を投げていた筈のゴブリンの顔面に石がぶつかり陥没する。あれも即死だな。
乱声から立ち直り、逃げようとするゴブリンどもの背中には、翼をはためかせ眠羽を飛ばす。背中に眠羽が刺さり、眠気でよろめき倒れるゴブリンを追いかけ、走りながら踏み潰す。
クソ、数匹逃しちまったか。
蹂躙の跡地には返り血を浴び、元の黒さと相まって赤黒く染まった俺と、血塗れた森、そして足に怪我を負った1人の女が残された。
どうやら俺は前世では...いじめにでもあっていた、らしい。
______________________
○ビッグシッカー
シッカーの進化系。縄張り意識が強くなり、少し好戦的になる。
筋力がかなり上がっており、1体倒すのに、初心者冒険者なら5人は欲しい。
雄の角は鋭さを増し、雌の角は厚さと範囲が広がっている。
肉は旨味と量が増しており、冒険者ギルドでも結構高値で買い取ってくれる。
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