殺し屋のオシゴト

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ネーミングセンス?

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世の中にはどうしようもないクズがいる。
それこそ死んでもいいようなクズ、抹殺されるべきクズがいる。
そのクズでゴミな奴らを消し去りたい、心底そう思う。

「世の中にはどうしようもないクズがいる。そのクズ共を消し去る為にここに来ました。」

言い終わると同時に再び長い沈黙が訪れる。
マズい、こういう事は言うべきではなかったのか…。と、少し後悔にも似た感情に陥っていると4、50代(ぽい)おじさんが口を開いた。

「そうか、先程まではこんな小僧…と思っていたが案外そうではないのかもしれんな。」

そして美女が続く。

「…あなた私達とも同じなのね。」

さらに歳の近そうな男が続く。

「うん、君も僕達と同じような考えを持っているらしいね。」

同じような考え…?

「ここにいる全員君と同じような思考をしているよ、だから君もこの仕事を選んだんだろう?人を殺した奴がのうのうと生きているのが許せない。わかるよ、それはここにいる全員同じさ。」

「ま、あたし達が言えたことじゃないんだけどね。」

「そういう輩は法律では裁けない程の罪を背負っている、だから僕達が裁いてやるんだ。」

「まぁ、それも犯罪なんだけどね。」

なるほど…最近、明らかに黒なのに釈放された人や数年前の殺人事件の犯人が原因不明の死を遂げたりするのはその所為か。

「君はどうしようもないクズ共を殺す為にここへ来たって言ってたけど、僕達がただ殺人や略奪をする犯罪集団だったらどうするつもりだったんだい?」

「既に犯罪集団なんだけどねぇ…。」

「お前は黙ってろ」

ちょいちょい口を挟んでくる少女についにツッコんだと思ったらなかなかドスの効いた声で怖い。

「正直、最近で原因不明の死亡が続いてるのが怪しい人達だけでしたので殺している人は悪い人ではないんじゃないかって思ってました。」

「あら、なかなか鋭いわね。」

「そうか…そろそろ違う隠し方を考えなくちゃいけないな…原因不明が続きすぎると怪しまれるし。」

「もう怪しまれてるけどね。」

「なんか言ったか?」

「いいえ何も。」

「取り敢えずこの仕事は生半可な気持ちでは絶対にダメだ、命を落とす事になる。それでもこの世界に足を踏み入れるかい?」

「…」

「…」

「無論、覚悟はしています。」

「そうかい、それだけはっきり言いきれるなら心配は要らないかな。ただ、君が能力を使いこなせないっていうのが少し引っかかるんだ。使いこなせない能力を実際に使った時に何が起こるか分かったもんじゃないし、完璧に使えるようになるまでは使用は控えめにしてもらえるかな?」

「使いこなせないというかまだ自分の能力の及ぶ範囲がよく分からなくて…。色々試したんですがそこまで大規模な事とかは試せないですし。」

また小柄な少女が話に首を突っ込んでくる。

「能力の及ぶ範囲って…そんな危険な能力なの!?」

「確かに、範囲攻撃は強力だが暗殺向きではない…。君の能力の詳細を伝えて貰えると嬉しいんだが。連携を取る為にもお互いの能力を把握しておく事は必要だろ?」

おじさんが口を開く。

「おい、あまり不用心に能力を探ろうとするな…我々だって最初はお互いの能力を知らぬままだったろう。」

「でも今ではパターンも決まっているしそれに組み込むためには能力を聞き出さないと…。」

「ならば今まで通り殺るだけだ。特にそいつのサポートなどいらん。小僧、自分に何が出来るかはよく考えてやるんだ。こちらからは指示しない。」

「ちょ、ちょっと、あまりにもそれは危険すぎるじゃないですか!まだ何も知らないのに…命を落とすかもしれないんですよ!?それに彼だけではない僕達だって危険だ!」

「自分の身は自分で守る。それは小僧も我々も同じだ。小僧が何かしでかしてその巻き添えで死んでも私達は文句は言えまい。それにあいつがそんな思慮も糞もない奴をグループに組み込むとは思えん。」

「そ、それはそうですけど…。」

「最初から能力を知った上で連携など取れるものか。お互いの能力を知らないと連携が取れないならグループの殺し屋なんてやるべきではない。自分で考えて自分で行動する。それによって生まれた連携にこそ真の信頼が生まれるのではないのか?」

「ど、ど正論すぎる…ッ!何も返す言葉がない…。」

「それにもっと聞き出すことがあるだろう。」

「た、例えば?」

「名前とか。」


「あ、あぁ、そうだった。自己紹介がまだだったな。僕はイドハ。一見美人に見えるその子はルミールで君の隣の子はリファイ、ガタイのいい人がチュトラさん。」

「一見って何よ失礼ね。」

「最後に、帽子をかぶった人がルヴァンさん。無口だけど根は優しいよ。」

帽子?帽子なんて被ってる人…ってあれ、いつの間にあのおじさん帽子かぶったんだ?それにさっきめちゃくちゃ喋ってた気が…。

「それで、君の名前は?」

ていうかもっと普通の名前だと思ってたけどそうでもなかったな。日本人じゃないのか。

「あ、勿論だけど本名じゃないからね。そんな危険な事は出来ないよ。」

なんだそういう事か。確かに本名で活動するのはまずいかも。じゃあコードネームってやつか、そんなの考えてないんだけど。

「どうしたんだい?名前が思い浮かばないとか?」

「あぁ、いや…まぁ…そうですね。」

何だかすごく尋問されている気になってくる。名前…名前!えぇと…どうしよう、本当に思い浮かばない?ポチとか?タマとか?いや動物じゃないか…

「う~ん…その…あの…えっと…う~~~~む…」

「そ、そんなに悩む事かい…?何でもいいんだよ、ポチとかタマでもいい。」

なんだこの人?人の心が読めるのか?
えぇと…と、取り敢えず…

「リ…リジェ…で…。」

「ほほう、なんで?」

「い、いや…特に…音がカッコイイじゃないですか…」

「…」

「…」

「そ、そうか…よろしくなリジェ(笑)」

そう言うとイドハは肩をぽんぽんと叩いた。
な、何だかとても恥ずかしい…顔から火が出るとはよく言ったものだ…ていうかなんで(笑)みたいなやつつけるんだよ、リジェ、いいじゃないかカッコイイじゃないか…!何がそんなにダメなんだ…?

「と、取り敢えず…プフッ…次の標的の情報が来るまでは自分の部屋で休んでなよ…案内するからさ……プッw」

こいつ…いつか必ず殺してやる…
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