俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

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#4

「このたびはっ!!うちのバカ息子が、大変申し訳ございませんでした!!」

母さんに後頭部を鷲掴みにされて。
小さなオバさんとは思えないような力で、そのまま床に俺の頭を叩きつける。



ガゴォッ!!



と、すごい音がして。

俺のおでこから煙が出るんじゃないか、ってくらいの衝撃が走った。


……母さん、ここは人ん家なんだよ。


人様ん家をぶっ壊すような勢いで、頭突きをしたらマズイんじゃねぇのか???


こういう状況になってしまったのには、ワケがある………と、いうか。

俺と落合……流水が、まだ高校生という身分にもかかわらず、ヤリまくってしまった結果、番になってしまったから。
俺ん家で、まるで漫画のようなアルファとオメガそのまんまの感じで、イタして、番って、ほぇ~ってなっている時に………。

間が悪いことに、父さんと眶が帰ってきたんだ。


あの……時が止まった感と、居心地の悪さは忘れようにも忘れられない。


多分、一生、忘れない。


その瞬間。


マッパの俺と流水は、「ぎゃっ」と短く悲鳴を上げると、思わず抱き合って。
真面目一直線の父さんと眶は、阿鼻叫喚し。


まさに、カオス………。
まさに、地獄と化してしまったんだ。


そんな混乱を巻き起こした状況が、各務家のラスボスである母さんの耳に入らないはずがなく。
その行為は、いくら運命に導かれたアルファとオメガの正当な行為だったとしても。
曲がったことが嫌い、順序を重んじる、ド体育会系の母さんの逆鱗に触れたんだ。

パンツ一丁の俺に対して、三角絞めをしてその後、腕固めで俺の戦意と反抗心を奪った母さんは、ダイビング・ボディプレスで俺にとどめを刺した。

こうして。

母さんは文字通り引きずって、身も心もヨロヨロな俺を流水ん家に連れてきたんだ。
床に頭突きをかました俺の横で、母さんが床に顔を擦り付けんばかりに頭を下げる。

「あのぉ……各務さん、そんなにされなくても……」
「いいえっ!おたくの大事な息子さんに、こんな大それたことなんかして!!世が世なら、打首獄門なんです!!本当、なんてお詫びをしたらいいか」

流水によく似た優しげな印象の流水のお母さんのか細い声が、龍の咆哮のような母さんの声にかき消される。

「あの、睟のお母さん……」

人ん家でも機関銃のように喋り、ホイール・ローダーのように騒がしい母さんを、流水が静かに止めた。


………響く、耳に心地いい低音が。


キャンキャン喚く母さんの言葉を、有無を言わさない雰囲気で止めて………。


俺は、頭を床に擦り付けたまま、その流水の声に耳を傾ける。


「僕が、睟を誘って……。
僕は、睟と番になりたかったんです。
………だって、僕は……お母さまは信じがたいでしょうが、僕、睟と運命を感じたから。
お母さまがおっしゃることもわかります。
親のスネをかじっている分際で、こんなことをしたなんて………怒られて当然です。
でも!僕は後悔していません!
今はまだ、経済力もないし何も持ってない、睟に何もしてあげられないけど………ちゃんと大学に行って、一人前になったら、睟と籍をいれるつもりです!
僕は絶対に、睟を幸せにしますから!!
だから、お願いします!!
僕たちのことを、認めてくださいっ!!お願いします!!」


………つーか、さ。


その言い方、さ。


まるでプロポーズなんじゃねぇの???


さらに付け加えるとしたら、夫・流水、嫁・俺の図式が出来上がっているように思える。


………いや、俺、嫁か???


「と、本人も申してますので、どうぞお顔を上げてください。各務さん」
「本当、できた息子さんでいらっしゃるぅ!流水くん!本当にうちのバカ息子で、いいの?大丈夫なの?」
「うちもこんな大胆のこと、するなんて思わなかったので………よっぽど睟さんが好きなんでしょうねぇ」
「いやいや、うちのバカ息子には勿体ない!!」

母親同士がなんとなく打ち解けて、空気が少し緩んできたけど、俺は頭を上げることができなかった。

だって………。

こんな状況にめたかかわらず、俺はつい、ニヤついてしまったから。


だってさ、嬉しいじゃんか。


家族以上に、俺のことをこんなに好きで、こんなに思ってくれている人が、この地球上にいるなんてさ。
運命とか縛られた理由より、奇跡に近いなって。


………だから、さ。


母さんにこてんぱんにやられても、目から火が出るくらい怒られても。


………全然、平気だ。

全然………へこたれない!!


その前に!
こんな誓いをたててくれた流水を、俺は一生守ってやんなきゃって思った。
母さんと、瞑、椎直伝のプロレスで、身体的に流水を守ってあげる。
父さん譲りで眶ににている真面目さで、流水の笑顔と心を守ってあげる。

………そして、流水より先に絶対死なねぇって、誓ったんだ。

俺は、頭を上げて言った。 

「俺は全力で流水のそばにいるからなっ!!」

決まったって思った瞬間、「一丁前に偉そうなこというなっ!!」と人ん家でキレた母さんに、俺はサソリ固めを決められたのはいうまでもない。


まぁ、公認って言うんだな。

先にヤって番になっちまったけど、親も認めた仲ってのも悪くない。
ただ、学校では内緒にしておくことにした。

まぁ、コレは。
オメガをカミングアウトしたことによって生じる、流水の生きづらさを考慮して。

噛み跡だってアルファの俺にも、オメガの流水にも噛み跡がついてるから、「アイツもどっかのバカに噛まれたのか」ぐらいで終わって。

………まぁ、なんだ。
順風満帆っていうんだろ?って思ってた。




あの日までは。




あの日、放課後俺は一人で英語の強化補修を受けてて。
すっかり暗くなった外を横目に、廊下を歩いていた。

「スイちゃーん!」

俺と流水が番になっても、樫井だけは相変わらず通常運転で、やっぱり隙あらば俺に噛みつくし、ベタベタつきまとう。

「いい加減にしろよ、樫井」
「だってさ、最近。スイちゃん、匂いが強いから発情期来ちゃったんじゃないかってさぁ」


………これは、間違いなくあってる。


自覚だってある。


流水と番になった途端、俺の特異体質はより過剰になってしまった。
匂いが分からなくなった流水に対し、俺の匂いは強くなる一方で。
結果、よってくるバカなアルファが倍増した。
従って、俺は毎回毎回、腕固めでそれらのバカを駆除する。
でも、俺でよかったんだ。
流水じゃなくて、流水がそういう目に合わなくて本当によかったと思った。

だって、マジでめんどくさいもんな。

「ってか、マジで噛むなって!!いてぇんだよ!」
「噛まないって方が無理……。と、いうかさ」

この前のように、樫井の唇が俺の耳に近付いて、その熱い吐息が皮膚にふれる。

「番に、なったんだ……睟」



ドクン、と心臓が張り裂けるんじゃないかってくらい大きく音を立てた。



脊髄反射的に右手の拳を握りしめ、そのまま樫井の左頬にストレートをくりだす。

いつもならヘラヘラして俺のストレートを避ける樫井が、真剣な眼差しのまま俺の手首を掴んだ。

ギリギリ、手首を締め付ける樫井の握力が、ビックリするほど強くて………サーっと血の気がひいた。

「なっ……!!何言ってんだ、樫井っ!!」
「睟の〝運命〟はオレなのに、何勝手なことしてんの?」
「…離っ………離せっ!……」

抵抗すればするほど、樫井の手が俺の手首に食い込んで、有り余るはずの俺の体力まで消耗していく。

樫井は、俺の右手首をグッと引っ張ると、コンプレックスの塊である小さな体に腕を回して、動きを封じたんだ。

「おまっ……いい加減にっ!!」
「……女でも男でも、アルファでもベータでもオメガでも!!睟が他人のものになるなんて、絶対に許せない!!睟は……睟は……俺のモンだっ!!」

俺の背骨を折らんばかりに締め付け、さながらライオンに捕食される一歩手前のインパラみたいに。


………肺が圧迫されて、苦しくなる。


体が………軋んで、悲鳴を上げる。


「…っか、は!!………か…し……い……。かし……」
「………オレんだよ、睟は。オレんなんだよ!!」


樫井が腕に力を入れて、俺の体を締め上げた。


………息が、し辛い…。


頭が………ボーッと………してくる……。


………ヤバ、い。


樫井が………本気だ………!!


そう、感じた時には手遅れだったんだ。


流水が噛んだ首筋に、激痛が走った。


「…あ“っ!!………」


痛くて……苦しくて………逃れられなくて。


噛まれた傷口から、樫井の熱量が入ってきて………血管を循環して、全身を巡る………。


樫井に体の外側も、内側も支配された………。


強いアルファに、体を乗っ取られた瞬間だった。






「……!!」


声が……でない………!!


喉が、カサカサして………声を出そうと抗うと、咳き込んでしまって体力を奪われる。


胸を掻き毟りたくて手を動かそうとすると、両手が離れない。


制服のネクタイがガッツリ手首に巻きついて、俺の腕の自由を奪っていた。


と、いうより………一服、盛られたっぽい。


体の中が熱くて、動かない……。


やばい……な………。


流水に、連絡しなきゃ………心配かけちゃいけねぇんだよ。


………俺が、流水を泣かしちまったら、いけねぇんだよ。


そう思うといてもたってもいられず、芋虫みたいに無理矢理体を動かした。

「気がついた?睟」

いつもと違う………樫井の声音が耳に響いて、全身がゾワっと泡立つ。

「ごめんね、睟。プロレス技なんかかけられたら大変だから、薬を使ったよ」
「………!!」

樫井の大きな手が、はだけたシャツの間から露出した体を滑るように撫でた。


………薬のせいか、イヤにくすぐったくて、イヤに感じて………体が大きく反り返る。


無理矢理に勃ちあがらされた俺のナニが、ノットまで痛いくらいなっていて……。


「……へぇ。やっぱり、アルファなんだね、睟は」

樫井がオレのナニを掴む。
触られただけでも、ズキズキ、ドクドク脈打つ衝撃に俺は思わず身をよじった。

「んっ……!!」
「中は、初めて……?」

もう片方の指は俺の中に入れて、おかしくなりそうな場所を弾く。


………いやだ、いやだぁっ!!


柄にもなく、泣きたくなってきた。


流水の顔が目の前に浮かんでは、その表情をかえて次々と消える。


「良くしてあげるよ。だからたくさん、よがって、喘いで………運命を、かえてあげる。睟」
「あ“ーっ!!」


中が太くて熱いので、ギチギチになる……。


痛いのに、気持ち悪いのに………薬のせいで、変な高揚感に襲われた。


………この時ほど、俺の身にふりかかった特異体質を恨んだことはない。


この時ほど………、俺の身にふりかかったコレが、流水じゃなくてよかったって、思ったんだ。

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