俺の体に無数の噛み跡。何度も言うが俺はαだからな?!いくら噛んでも、番にはなれないんだぜ?!

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バチコーン!!


と、横っ面に母さんの張り手が入って、俺は眼から星が出るのを見た。


いや………いやいやいや。

俺、レイプされたんだけど???

無数に噛まれてヒリヒリするし、体もプロレス技喰らったくらい痛いんだけど???


な状態の直後な俺が。


介抱してくれた流水と………その……人様ん家の風呂場で、ヤっちまってさ。
その行為が母さん曰くの『高校生たるもの!!』の、ルールに反したんだ。

なぜバレたかというと、流水の母さんがベラベラ喋ったから。

「やっぱり〝番〟ってスゴいんですねぇ」って、おそらく俺と流水のヤっちゃってるトコを風呂場の外で聞いていた流水の母さんは、乙女みたいに顔をピンクに染めて、俺の母さんに言った。
その瞬間、怒りと羞恥心の限界に達した母さんの髪が、静電気のように立ち上がったんだ。

そして。

帰路につく間ずっと我慢していた母さんは、家に帰り着くなり、豪快な張り手を俺の横っ面に入れる。

「隙あらば、いちいち盛った犬みたいにヤるんじゃないの!!」
「いや……ヤろうと思ってヤッたわけじゃ………」
「じゃあ、どういう正当な経緯があるの?!」

樫井に中出しされたのを、流水にとってもらっていたら、俺本来のエネルギーが藤波辰巳みたいに蘇ってヤッちゃいました。

っなんて………口が裂けても、言えないじゃんか。


それより、何より。


母さんよっか、流水の方がよっぽど優しい気がする。


「いい?!アンタ達は、まだ高校生なの!!そういうことは、ちゃんと稼ぐようになってからしなさい!!」

稼ぐようになってからって……昭和かよ、その考え方。

………でも、心配してたんだろうなってのは、すぐに分かった。

強がっていつもの母さんっぽく振る舞ってはいるけど、張り手の力もどことなく弱かったし。
そして、張り手を喰らって床に倒れ込んだ俺を、こうして抱きしめるなんて………。

「何でも一人で抱え込むんじゃないの!家族はそのためにいる。母さんだって、父さんだって。瞑も眶も椎もいるのよ。………少しくらい、頼んなさい」

流水みたいに優しくらい抱きしめる、とは程遠い。

チキンウィングフェイスロックのみたいに力強い母さんの抱きしめられた方に、俺は思わず笑ってしまった。


………愛情が、深いんだよな。


大事にされてることくらいわかってる。
わかってるけど………。


いつまでも守ってもらうだけじゃダメなんだよ。
体はもちろん、心も強くなんなきゃ………。

「大丈夫。ありがとう、母さん。そして、心配かけてごめんな、母さん」
「睟ーっ!」
「うげっ!」

ラスボスとして各務家に君臨している母さんの目が涙が溢れて、抱きしめる腕により力をこめるから。
チキンウィングフェイスロックがキマッたみたいに苦しくなって。
感動的なシーンにも関わらず、俺は床を叩いてタップをしてしまったんだ。











異様に増えてしまった噛み跡が、俺をなんだか強くしている気がした。
強くしているハズなんだけど、俺は俺の弱点を見つけてしまったんだ。


首筋……。


うなじより前の喉仏に近い、流水が噛んだあのあたり。


そこが、異様に弱い。


そこを舐められただけでも、体の力が抜ける感じがするくらい、本当に弱い。
2、3日学校を休んでいた俺は、登校初日にそのことを伊佐美に言った。
伊佐美が言うには「性感帯じゃね?」ってことらしいけど。
こんなトコにそんなモノがあったら、俺しょっちゅう発情してんじゃねぇか?!

「そういうえば、おまえにつきまとっていた樫井。アイツの停学一週間らしいぜ?」
「へ?」

晴天の霹靂のようは伊佐美の一言に、俺は不意打ちを喰らって変な声を上げた。

「体育倉庫で、ズボンずらしてオナって、失神してたんだとよ。それを先生に見られて………」


………あ、あちゃー。


それって、あの時のアレだよな?


樫井にヤられてる真っ最中の俺を救い出すべく、流水がプロレスさながらパイプ椅子で樫井を殴って、そのまま放置してしまった結果。

学校のエース的存在だった樫井は、先生に萎えてダラダラのナニを見られた挙句、停学になっちまったなんて………。

ヤバ………それに一枚噛んでるなんて、絶対に言えねぇよ。

「どうした?睟?」
「い、いや。なんでもね」
「久しぶりに学食のカレーでも食う?」
「そうだなぁ、カツカレーがいいなぁ」

久しぶりの学校で、浮ついていたのは認める。

だって、鬱陶しい樫井はいないし。

バカな森は妙にオドオドして近寄ってこないし。

やっと!

最初にして最後の、普通の高校生活が送れるって思うと、武藤敬司がリック・フライヤーに勝った時くらいの嬉しさが込み上げてくる。

「各務くん………これ」

その〝オドオドくん・森〟が、徐に俺に白い封筒を渡してきた。

「ボクは関係ないっ、からね!!渡したからね!!じゃっ!!」

オドオドにもまして手まで震えてた森の背中を見送り、俺は白い封筒の中を確認する。


『落合を預かってる。

これだけでわかるよな?膵。

場所は下記の地図だ。樫井』


………ドキッとしたけど、この手紙……ツッコミどころが満載すぎて、イマイチ切迫感に苛まれない。


睟だよ、睟。

膵臓の膵じゃねぇよ。

あえて難しい漢字で間違うなよ。

あとな『下記』って書くときは、文章のどっかに『記』って言葉を入れんだよ。


アルファなのに、どっか抜けてる樫井の手紙にドッと力が抜けた。


「伊佐美……。今日、流……落合、学校に来てたよな」
「あぁ。でも」
「でも?」
「休み時間に森と歩いてどっか行くとこ、見たぜ?」
「はぁ?!早くそれ言えよ!!」
「今、聞いてきたじゃねぇか」

俺は、白い封筒を握りしめて走り出した。

「おいっ!睟!!どこ行くんだよ!!」
「早退っ!!具合悪い」
「具合悪いヤツが、全力疾走なんかするかっ!!」


……しくった!!


樫井の野生のカンが、鋭いことを忘れていた……!!


多分、流水から微かに漂う、俺と同じ匂いを察知したんだ………!!


………俺の、番だって!!


落合が………首筋以上の俺の一番の弱点だって………!!











「……くっ………あっ、あ」


走って、走って……。


たどり着いたのは、市街地から外れた別荘のような一軒家の中。
うす暗い室内で、薬で眠らされている落合の顔が、カーテンから微かにもれる明かりに照らされている。
身につけている制服も乱れてないし、苦しんだ様子もないから。


………とりあえず、何もされてなくて………よかった。


そういう、俺は………。


体中をロープが絡みつくように巻きついて、俺の動きの自由を奪う。

そのロープは脚まで及んで、無理矢理に俺のナニが見えるように開かされてる。


さっき、薬を飲まされた。

小さな小瓶を3本ほど。

そのせいか、頭がぼんやりして。

視界もだんだん滲んで、すぐ近くにいる落合の表情が見えなくなる。


うつ伏せにねじ伏せられ、俺のケツの穴にトロトロしたのが注ぎ込まれて、体が外からも中からも耐えがたい熱を帯びていく。
変なローターらしきものが俺の中でブルブル震えて、それに追い討ちをかけるかのように…………指が、俺の中をかき乱す。


「………すげぇ、もうトロトロじゃん」


樫井の声が俺の耳に、グワングワンに響いてきた。


「翔太、コイツに咥えさせていい?」
「睟は負けず嫌いだから、喰いちぎられるかもしんねぇぜ?」

樫井とは違う声が、また頭に響いて………混濁する意識の中、俺はようやく声を発したんだ。

「流……水………流水には………手ェだすな………」
「あぁ、出さねぇよ。おまえがオレのモンになるならな?睟」


背後から樫井の声が聞こえたと同時に、太くて熱を帯びたモノが俺の中に一気に入って、奥まで突き上げられた。


「んふっ………あぁっ………」

「やっぱ、いいな………。睟ん中は」

「おい。上の口はサボってんじゃねぇぞ?」

「んぐっ……んっ、んんっ」


そう言ったもう一人の男は俺の顎をつかんで、口の中いっぱい、喉の奥までソイツのナニを突っ込んでくる。


薬のせい………縛られてるのも、相まって。


ろくに抵抗すらできず、ひたすら樫井とソイツに犯される。


………流水が………流水が………無事なら……。


でも、ごめんな。


俺、流水に誓った約束を果たせそうもない。


〝流水より先に死なねぇ〟って言ったんだけどな………。


番になったのに、番をすぐ解除することになるかもしんねぇって。


より流水に、ツラい思いをさせちまうかもしんねぇって。


………ごめんな、流水。


でもさ、俺はおまえが無事なら、それだけで幸せで。


それだけで、何にでも耐えられるんだよ。

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