9 / 9
#9
しおりを挟む「円佳ーっ、バーベキューセットってどうすんだ?車に積み込む?」
「全部付いてるよ、食材だけ準備すればいいから。途中のスーパーで親父に買ってもらおうぜ」
倉庫から叫ぶ友哉の声に、僕は着替えとかの最低限の荷物をラングラーに積み込みながら答えた。
友哉と家族になって、義兄弟という立場になって初めて、僕たちは家族旅行に行く。
まぁ、ホテルとか温泉とかは、なんかこっぱずかしくて。
以前、合宿で利用したことのある、山ん中の廃校になった小学校を宿泊施設に改装したトコに行くことになったんだ。
もちろん、この一泊二日の小旅行、僕たちが企画・立案して、費用は僕と友哉のバイト代から捻出した。
………まぁ、親父たちにこれといったプレゼントもしていなかったから。
今まで育ててくれたお礼と、これは言わないけど僕と友哉を、また元に戻してくれるきっかけを作ってくれたお礼を兼ねて。
とにかく、新しい家族4人での思い出になることがしたかったんだ。
「友哉………体育館あるけど、軽くバレーなんかする?」
「あぁ、持ってくよ、シューズ。そのかわり」
「そのかわり?」
「堂々と………円佳を描いていいか?」
「………いいよ、恥ずかしいけど」
「じゃ、脱いでくれる?自然の中で裸体、描きたいんだけど」
「!!……調子のんなっ!!」
お互いの気持ちを確認して、生じていた深い溝を埋めて。
僕らは、なんだかんだ言って義兄弟を超えた存在になった。
まぁ、そんなことは表向きには大声でいえませんが………僕は今、僕史上、最大級に幸せで充実していて。
………幸せを手に入れた自分が、なんかくすぐったいような………。
そんな感覚に陥って。
気がついたら、バイト先でも買い物中でも、変にニヤついている自分がいる。
正直、気持ち悪いヤツだよな?
友哉と家族に義兄弟になりましたって言われたあの日。
僕は、色んなモノを失った。
親父が俺に向けていた視線とか、男としてのプライドとか、それまで築いてきた生活とか、………なんでかよく分からないけど処女まで失って。
守っていたモノが一気に崩壊したんだ。
そのかわりに………僕はかけがえのないモノを手に入れたんだ。
人を好きになること、とか。
人に愛されること、とか。
それをひっくるめて信じること、とか。
全部、友哉がいなかったら気がつかなかった気かもしれない。
そんな単純なこと、他の人にはすごく簡単なことなんだろうけど。
僕にとったら………友哉にとっても………全然簡単なことじゃなくて。
変なトコで意地を張っちゃった分、それ以上に素直になれちゃうし。
評価が最低だった分、それまで以上に友哉を思いやることができるし。
遠回りをした分、友哉をとても愛おしく思うんだ。
「実はさ、友哉には黙っていたことがあるんだけど」
「何?」
「僕たちが泊まる部屋、元校長室なんだよ」
「へぇ、そうなんだ」
「親父たちの部屋からも、他の部屋からも隔離されてるんだよね」
「うん、そうなんだ」
「だから、ね………結構、色んなコトもできるとおもうぜ?」
「知ってる」
「え?」
「インターネットで検索済み。俺が〝予習〟をしてないわけないだろ?」
「…………」
「何年、おまえを守ってきたと思ってんだよ?おまえのことなんか、全部分かんだよ?円佳」
友哉の笑った顔が、本当にキラキラしていて、僕の胸野柔いトコを深くえぐってくるから。
僕は恥ずかしくなって、友哉を直視できなくなってしまった。
「なぁ、友哉」
「何?」
「まだ、義弟とか義兄とか、こだわってる?」
「………そうだなぁ、その関係は多分俺たちが死ぬまで続くわけだろ?結婚って言う肩書は、離婚したらそれっきりだけど、俺たちの関係は何があってもずっと続くから。普通の恋人や夫婦より、深く繋がってるって、思うから………」
「思うから?」
「こだわってもいいんじゃない?弟くん」
12
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?
知らないうちに女神になってた義兄と綺麗でおかしな義弟の話
月丘きずな
BL
平凡に高校生活を送る花岡悠は、学校一の人気者である花岡蓮の義兄だった。いつでも悠を守ってくれる優しい義弟との義兄弟ライフは、側から見たら少しおかしいようで…!?
義兄弟とその優しい友人たちが繰り広げる、怪しい義兄弟ラブロマンス
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
とてもきゅんきゅんしました❀.(*´▽`*)❀.
イライラしない程度の鈍感主人公…よき…!!
作者様は天才ですね( ◜ω◝ )
ありがとう😇
こちらこそ、ありがとうございます😊
天才なんて、恐れ多くて恐縮しております💦
こうしてご感想を頂けること自体、嬉しすぎです❗️
本当にありがとうございました😊
はちゃめちゃに好みの展開です!!!!
この先どうなるのかどきどきです…♡
ありがとうございます😊
ドキドキ……して、待っててくださいませ。