孤独者の残光 ~預かった子どもを闇堕ちさせないため、嫌われることにした~

華霧むま

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99、友達の父親

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 オクルスは、ヴァランとルリエンが会話しているのを聞いており、たまに会話に参加していた。

 少し時間が経って顔を上げたルリエンが、オクルスとヴァランに断りを入れてどこかに向かう。

 不思議に思いヴァランを見るが、彼も分からないようで首を振った。

 ルリエンの向かう先を見ていると、1人の男性のところに行ったようだった。父親だろうか。その男性は連れがいないように見える。

 しばらくして戻ってきたルリエンは、どこか申し訳なさそうな顔をオクルスに向けた。

「父が大魔法使いさまと話したいと言ってきましたけれど、断りましょうか?」

 やはり父親だったようだ。それは良いとして、ルリエンが「オクルスは断る」と確信しているのはなぜなのか。

「……えっと、なぜ断る前提なのですか?」
「ヴァランから、オクルス様はあまり人と会わないと聞いたからですね」

 なるほど。ルリエンが歯切れ悪いのも、ヴァランにどう思われているのかも理解した。口元に笑みを浮かべたオクルスは、ヴァランのことを軽く睨んだ。

「ねえ、ヴァラン?」
「本当のことしか言ってないです」
「そうだけど……。別に私は人に会わないとは言ってないよ」

 オクルスが人を拒絶していた、というよりは、人々がオクルスを拒絶していた時期の方が長かった気がする。

 すると、ルリエンが驚いたように声を上げた。

「え!? 手紙を送っても返事は来たことないと聞きましたよ」
「確かに手紙はあまり読んでいませんが、こういう場で会うことは断っていないです」

 燃やしているから、本当にルリエンの父親から手紙が来ていたのかは知らないし、確認の取りようはない。

 それに断ってはいないが、積極的に動いているわけでもない。それをわざわざ言う必要はないだろう。

「少しなら話しますよ」

 ヴァランの友達の父親だ。拒否をする理由もない。オクルスがそう言ったところで、ルリエンが付け加えた。

「あ、それから別室でお話をしないかって言っていました」
「……別室」

 パーティーでは、休憩所が設けられている。そこで歓談することもできるのだが、オクルスは言ったことがない。

 周りの人に聞かれたくないときや少人数で休憩したいときに使うらしい。

 それでも、別室となると少し話は変わってくる。何でもいいから話したいのではなく、何か話したいことがあるというのか。

「……ビジネスの話、ですか?」
「えーっと、すみません。分からないです」
「……」

 本当に何の話だ。オクルスは頭を抱えたくなる。オクルスと伝手を作りたいだけだろうか。そうだとしたら、わざわざ別室に行く必要も感じない。

 うーん、と考え込んだオクルスの服の袖を、ヴァランが引っ張ってきた。

「オクルス様、断って良いんじゃないですか?」
「用事もないのに?」
「……」
「それに君の友達の父君だからね」

 ヴァランの友達の親だ。今のところは保護者はオクルスなのだから、悪印象を与えるわけにはいかない。

 オクルスはそう言ったが、ヴァランは難しそうな顔をしていた。

「……」
「ヴァランは嫌?」
「嫌では、ないですが……」

 うろうろと視線を彷徨わせていたヴァランの表情はあまり明るくない。しばらくしてヴァランは小声で零した。

「心配、です」
「ありがとう、でも大丈夫だよ。きっと」

 オクルスはヴァランの頭に手を乗せた。それにより、ヴァランは黙り込んでしまったが、反対の言葉を言うこともなかった。

 ◆

 ヴァランの友達の保護者と会うのは初めてだから、オクルスは少しだけ緊張していた。そもそもオクルスはあまり自分よりも年上の人間と会う機会はほとんどない。失礼なことをしなければいいのだが。

 そう思って案内されて部屋で、優しそうな男性と会った。彼がルリエンの父親だと言う。

「こちらからの誘いに応じていただき、ありがとうございます」
「……いえ。こちらこそ、ありがとうございます」

 ルリエンの父親であるノヴェリス伯爵は、少し緊張した面持ちだった。やはりオクルスのことが怖いのだろうか。それなら、関わる必要なんてないのに。

 オクルスはそう思っていたが、ノヴェリス伯爵は強張った表情をしながらも、口元には笑みを浮かべた。

「いつもヴァランくんには、ルリエンと親しくしていただいて、感謝を申し上げたくてお誘いしました」
「そう、ですか。こちらこそ、ありがとうございます」

 オクルスが軽く頭を下げると、ノヴェリス伯爵が頬を緩めた。

「家でもルリエンはヴァランくんのことばかりで」
「ちょっと、余計なこと言うなよ」
「事実だろう?」

 仲の良さそうな父と子。少しだけ眩しくて、オクルスは目を細めた。自分は手に入らなかったものを見て、なんとも言えない気持ちになった。

「オクルス様?」

 それでもオクルスにはヴァランがいる。永遠ではないけれども、少なくとも今だけは。

「なんでもないよ」

 眩しいが、羨ましいとか、手を伸ばしたいとかは思わない。思わなくなった。オクルスはヴァランを見ながら微笑んだ。
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