放課後1分、君とだけの時間

ばななもち

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不思議な力

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 私、朝霧美緒あさぎりみおは、とことん一人で何でもやってきた。
 本来なら二人でやる日直の仕事、班での発表課題、担当じゃない週の掃除、全て一人でやってきた。しかし、一人でやったというのは自主的ではなく押し付けられたのだ。望んでする人が居ないとは言いきれないが、大多数の人はやりたくないだろう。私はその大多数の中に入っている。めんどくさいことはなるべく避けたい。
 昔は習い事を2つしていた。塾とピアノだ。その2つが同時に行かなくて良い状況になったのだ。塾は、学年1位を取り、その上で家でやる方が良いと母に伝えた。母はすんなり受け入れてくれ、行かなくても良くなったから。元々塾には知り合いも居なかったし好きじゃなかったから嬉しかった。ピアノは先生が少し体調を崩したようで習い事も一時的に中止になったから。
 急に何の話だって思っただろうが、それとこれとにはちゃんとした関係がある。
 その習い事が無く、放課後が暇になった週、このめんどくさい押し付けが始まったのだ。

「習い事もしばらくないし、暇だな~...」
 あの人たちまだ残ってる、確か今週掃除の班だったっけ?...やらなくていいのかな?
「掃除ダル~、俺今日姉ちゃんの誕生日会の準備あるんだよね~」
「え!?お前姉ちゃんの誕生日とか全力で祝ったりすんの!?」
「違ぇって!うちの両親サプライズとか大好きだからさぁ、手伝えって言われてんだよ毎年」
「えぇ、めんどいねそれ」
「まぁ今年はびっくり箱の中から虫のおもちゃでも入れといてやろうかなって、うちの姉ちゃん虫大嫌いだからさ」
 お姉ちゃんが誕生日という人は悪い笑みを浮かべて言っていた。
 まぁ、誕生日祝ってあげることはいいことだし、掃除代わってあげようかな。
「...あの、掃除代わりましょうか?」
「え!?マジ!?代わってくれんのマジ神~!じゃあ遠慮なくお願いするわ!」
「え!?お前だけズルいわ俺のも~」
「え、」
「は!?何でよ私だってやりたいことあるんですけど~、朝霧さん私のもお願い出来ない?」
「え、まぁいいですけど...」
 そのままじゃあ俺も私もと6人全員分の掃除を肩代わりさせられてしまった。
「...はぁぁぁぁぁ、誕生日会があるっていうから代わったのに、まぁいいかどうせ暇だし、暇よりはいいってことにしよ」
 盛大なため息をつき、そのまま掃除を続けた。

 そこから1日たち、また放課後になった。
「あ!朝霧さん!」
 あ、昨日の人たち、今日は掃除やるかな?
「俺たち今日大事な用事あるんだよね、今日も代わってくれない?」
「え?いや、その」
「もしかして用事とかある?」
「それはないですけど...」
「ならお願い!」
「...」
 無言が肯定に見えたのか、そのままほうきを押し付けられてしまった。
 流石に6人分を2日連続は面倒くさい。教室だけじゃなく、その近くの階段まで範囲だからだ。
「まぁ、今日で最後だろうし、やるか」

 翌日の放課後
「今日もお願い!」

 そのまた翌日の放課後
「今日も用事が...」
  
「これもう利用されてるだけだろ」
 そこに気づいてからも陽キャの圧に勝てず断れなかった。

 押し付けられてから5日が経った。今日で本当に最後だ。と思っていたが、どうやら陽キャ特有のすぐに広がる嘘か本当かも分からない噂話が流されていた。
 内容は、朝霧は少し強引にしたら何でもやってくれる、といったものだ。厄介だ。噂なんてどこかでねじ曲がるんだから。

 ...そこから今に至る。大体何でも一人でやってきた理由はこの陽キャたちのせいだ。ピアノはそれからというもの忙しくなり辞めた。好きじゃなかったので辞めることは良かったけど、理由が押し付けられるからというのは少々どころか大きくムカつく。まぁ別にこれといった友達も趣味もないので良いのだが。
 なんて事を考えながら、今日も保健委員会ではない私が委員会で配るという紙の切り取りをしている。…本当に何をしているのだろう、と過去を思い出したせいで今更ながらに思った。

 時間が経ち、ふと時計を見るともうすぐ帰る時間になっていた。物を片付け、教室を出て昇降口へ向かう。すると、ある男子生徒が目に入った。この時間に居る男子はあまり見たことがない。まぁ彼も何か作業か勉強かをしていたのかもしれない。そう思いそのまま帰ろうとも思ったが、何を思い立ったのか、私は話しかけていた。
「すいません」
「…」
「…あの、すいません!」
「…」
 なぜか話しかけても無言なので、肩を叩いた。
「うわぁ!?」
 めちゃくちゃ驚かれた。これで怒られたらどうしよう。
「えっと、すいません驚かせちゃって…」
「いや、こっちこそ…まさか僕に話しかけているとは思ってなくて」
「えっと…」
 気まずい沈黙が流れる。
「何か用事が?」
「すいません、この時間に居る男子あんまり見かけたことなかったので…」
「…え?」
「え、あ、」
「なんですかそれ、あはは!」
 …笑われた。変人だと思われたかもしれない。
「何年生ですか?」
「1年生です」
「同い年じゃないですか、タメ口でいいですよ」
 と言いながら敬語を使ってくるあたり無自覚なのだろうか。
「そちらもタメ口で大丈夫ですよ」
「え、じゃあタメ口で」
「はい…」
 再び気まずい雰囲気が流れ始めた。
「…あの、いつもこの時間なの?」
「あ、はい」
「そうなんだ!僕も毎日この時間だよ~」
「そうなんですか!?でも、見かけたことない気がします…」
「うーん、実は違うルートで帰ってたりして…」
「そんなルートあるんですか…?」
 どうやら毎日その別ルートというので帰っているらしい。道理で見かけない訳だ。
「…というか敬語のままじゃん」
「慣れなくて、」
「まぁ別に無理にとは言わないけど」
「では敬語のままでいきますね」
「それと…いつも帰ってる場所は秘密ね?」
「なるほど…?」
 秘密にしたい位だから隠すことでもあるのだろうか…?まぁ、これ以上は追究しないでおこう。
「ところで、毎日この時間になるんだよね?」
「そうですね」
「それなら、今日から少しだけ話して帰ろうよ」
「…え?」
「いや~やっぱいつも1人は寂しくて!」
「なるほど?まぁ、大丈夫ですけど」
「ありがと~!優しいね!」
「いえ…」
 急に決まったことだが、別に嫌な感じはしない。むしろ楽しみなぐらいだ。勢いで決められたことに少し混乱している。だが、何か不思議な力でも働いたのだろうか?急に話しかけたくなったのだ。ただ、また話せるのは楽しみではある。話したのは1分ちょっと。だけど、それだけで分かる人柄の良さが滲み出ていた。こんな一人だけが取り柄みたいな私でも、二人の方がいいじゃん!と言えるような相手が出てくるのだろうか…。とりあえず今日は帰ろう……。家に帰ったあと、頭の片隅にはずっとあの子が居た。
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