さっきのお話 vol.1

イキリ坊主

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進路について

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12023.


『おいタカシ、お前通学路から外れたことあるか?明日ちょっと行ってみようと思うんだ。街の外へ。』
急にそんなことをサトルは言ってきた。
もちろん私はそんなことをしたことがなかった。
「エイタは人間ランクが下がることが怖くないの?この前マサルがそれで消えたこと、覚えてないの?」
『おれはやるぜ。本当に世界が広いのか確かめるんだ。』
真剣な顔でそう言っていた親友は次の朝学校には来なかった。

「たまにあるんだよな、こうゆうこと。」
先輩は目を伏せて、
「あいつは人間じゃなくなっちまったのさ。ここでは人間ランクが全てだ。群れから離れると人間ランクが下がって消されちまう。」

私の唯一の友達のサトルが消えてから学校は今までに増してつまらないものになった。
ただ私には勇気がなかった。
とてもサトルに続く気にはなれなかった。
周りの人間も迷っているのだろうと、思った。
ただ皆、死ぬのが怖いのだ。

50年も生きていると、だんだんこの世の中の仕組みがわかってくる。
消えるやつは若い頃に消えちまう。
年老いてから消えるやつは滅多にいない。
私のような人間は平穏に、何事もなく生きて行ける。
ここでの生活に満足できないやつは消えてゆく。
消えた人間は死んではいないのだろうと、今では思う。
私達は選別されている。
《リスク》を取って今を変えようとする人間か。
《リスク》を避けてのうのうと生き続けるのか。
前者がいいとは限らない。
ただ、サトルは前者を選び、私は選ばなかった。選べなかった。
この歳になって、死ぬ間際になって、この【退屈な世界】の仕組みに気づくことができた。
死なないとわかってたらすぐにでも出ていったのに。
私はいつもと違う道を進んで行った。

"たったったっ"

突然後ろから足音が聞こえた。

驚いて後ろを振り向くと、そこには戯けたような表情の少年が立っていた。

「あーあー。おじさんもうちょっとだったのにね」
突然、ハンマーが現れた。
「グチャ、」
というキレのいい音と共に下半身が消えていた。

「残念、また失敗だよ。ここの世界は君で最後さ。」
その声が聞こると同時に私の意識は途絶えていた。
「残念、残念。なんで人間って我慢するだけのことができないんだろうね。なんでバカな希望を持つんだろうね。ここより幸せな世界なんてあるはずないのにさ。」
そう言って彼は歩みを進める
「みんな同じように生きて同じように死んでゆく。ただ平穏に生きることがなんでできないんだろうね。ぼくにはわからないよ。」
というと上を向いて、
「リトライだよ、みんな」

世界はまた、始まった。

12024.

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