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第1章 新しい家族
第2話 母の臨終
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私の母 白金麗蘭が突然病に倒れたのは、私が10歳の時だ。
初等部5年生だった私は、祖父櫻井 兼近が理事を務める病院からの連絡を受け、急いで病室に駆けつけた。
そこには、祖父母と母の兄で医師の柊伯父様とその奥様の彌生伯母様がいらした。
「百合香ちゃん。お母様にお別れを……」
柊伯父様に促され、私は大人達の間をぬってお母様のベッドサイドへと進んだ。
そこには酸素マスクをつけ、沢山のコードに繋がれた青白い顔の母が横たわっていた。
「お母様。百合香です。」
すると、殆ど意識のない状態の母だったが、私の声に反応し左手を持ち上げた。
私はその手を握り、
「お母様!お母様!イヤ!イヤです。私を置いて逝かないで!」
泣きじゃくる私の涙を拭い、お爺様がいる方に目線を移したお母様。
「分かっておる。分かっておるぞ、麗羅。百合香の事は私達が必ず守ってやる。だから…だから…安心……しな……さい。」
涙声のお爺様を、お祖母様が泣きながら支えていた。
「麗羅、何も心配しなくていい。俺たち夫婦も百合香ちゃんを守るから。」
「そうよ麗羅。あの方も居るわ。あの方が必ずあの男の悪事を暴いて、世間に晒してくれるからね。」
お母様がか細い声で私を呼んだ。
「り、り…。」
「何?ママ。」
母が私を呼ぶ特別な呼び方 『りり』。
この時だけは、私もママと呼ぶ約束だ。
「り、り。し、幸せ…に。ママ…は、りり……を…あ、い…愛し…て……」
そこまで言った所で力尽きたのか、私の手の中から母の白い手が滑り落ちた。
そして、涙を一筋流した母は、静かに息を引き取った。
「いやーーー!ママ!ママ!いやーーー!!やーーー!!」
病室に私の絶叫が響いたが、母の臨終に、父が来る事は無かった。
母の葬儀の日
喪服に身を包み伯父夫婦に付き添われた私は、葬儀場の親族席に座った。
昨晩の通夜の場に現れた父は、柩の中で眠る母をチラッと見ただけで、読経が終わると仕事を残してきたと言って去っていった。
そして今日
葬儀の時間ギリギリに現れた父。
傍らには、秘書らしい女性がまるで妻のように寄り添っている。
何故母の葬儀に無関係な人がいるのか分からずにいた私だったが、祖父母と伯父が父を睨みつけている姿を見た時、子供心に不穏な空気を察していた。
✽✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽✽
母の7日の法要が櫻井家の菩提寺で行われた後、私は祖父母と伯父夫婦と共に屋敷に帰ってきた。
母の遺品整理の為だ。
子供の私にはよく分からないので大人達に任せたのだが、母の部屋にあるクローゼットの引き出しが鍵が無いと開かないと伯母が言っているのを聞いて、私は自室に入った。
伯母の『鍵』という言葉で思い出した事があるからだ。
母が生前私に渡してくれた『鍵』があったのだ。
「彌生伯母様。」
そう言って手渡した鍵を使って引き出しを開けた伯母は、引き出しの中身を出すと私達の前にそれ等を広げた。
何冊もある日記帳
3つのUSB
私名義の通帳1冊
日記帳をパラパラと捲っていた伯父様は、直ぐにその場で何処かに電話をかけ始めた。
伯母はUSBを母のパソコンに差し込み、中身をチェックしている。
私は訳が分からずキョトンとしているしか無かった。
初等部5年生だった私は、祖父櫻井 兼近が理事を務める病院からの連絡を受け、急いで病室に駆けつけた。
そこには、祖父母と母の兄で医師の柊伯父様とその奥様の彌生伯母様がいらした。
「百合香ちゃん。お母様にお別れを……」
柊伯父様に促され、私は大人達の間をぬってお母様のベッドサイドへと進んだ。
そこには酸素マスクをつけ、沢山のコードに繋がれた青白い顔の母が横たわっていた。
「お母様。百合香です。」
すると、殆ど意識のない状態の母だったが、私の声に反応し左手を持ち上げた。
私はその手を握り、
「お母様!お母様!イヤ!イヤです。私を置いて逝かないで!」
泣きじゃくる私の涙を拭い、お爺様がいる方に目線を移したお母様。
「分かっておる。分かっておるぞ、麗羅。百合香の事は私達が必ず守ってやる。だから…だから…安心……しな……さい。」
涙声のお爺様を、お祖母様が泣きながら支えていた。
「麗羅、何も心配しなくていい。俺たち夫婦も百合香ちゃんを守るから。」
「そうよ麗羅。あの方も居るわ。あの方が必ずあの男の悪事を暴いて、世間に晒してくれるからね。」
お母様がか細い声で私を呼んだ。
「り、り…。」
「何?ママ。」
母が私を呼ぶ特別な呼び方 『りり』。
この時だけは、私もママと呼ぶ約束だ。
「り、り。し、幸せ…に。ママ…は、りり……を…あ、い…愛し…て……」
そこまで言った所で力尽きたのか、私の手の中から母の白い手が滑り落ちた。
そして、涙を一筋流した母は、静かに息を引き取った。
「いやーーー!ママ!ママ!いやーーー!!やーーー!!」
病室に私の絶叫が響いたが、母の臨終に、父が来る事は無かった。
母の葬儀の日
喪服に身を包み伯父夫婦に付き添われた私は、葬儀場の親族席に座った。
昨晩の通夜の場に現れた父は、柩の中で眠る母をチラッと見ただけで、読経が終わると仕事を残してきたと言って去っていった。
そして今日
葬儀の時間ギリギリに現れた父。
傍らには、秘書らしい女性がまるで妻のように寄り添っている。
何故母の葬儀に無関係な人がいるのか分からずにいた私だったが、祖父母と伯父が父を睨みつけている姿を見た時、子供心に不穏な空気を察していた。
✽✽+†+✽――✽+†+✽――✽+†+✽✽
母の7日の法要が櫻井家の菩提寺で行われた後、私は祖父母と伯父夫婦と共に屋敷に帰ってきた。
母の遺品整理の為だ。
子供の私にはよく分からないので大人達に任せたのだが、母の部屋にあるクローゼットの引き出しが鍵が無いと開かないと伯母が言っているのを聞いて、私は自室に入った。
伯母の『鍵』という言葉で思い出した事があるからだ。
母が生前私に渡してくれた『鍵』があったのだ。
「彌生伯母様。」
そう言って手渡した鍵を使って引き出しを開けた伯母は、引き出しの中身を出すと私達の前にそれ等を広げた。
何冊もある日記帳
3つのUSB
私名義の通帳1冊
日記帳をパラパラと捲っていた伯父様は、直ぐにその場で何処かに電話をかけ始めた。
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