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第三章 前世其ノ弐
第二幕 公爵家の妻⑴
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ガーディランス公爵家での淑女教育は、公爵夫人の優しいお心遣いにより、楽しくそれでいて気の抜けないものでした。
また、リュークアッセドラ殿下の執務の補佐をされていらっしゃるロイド様は、時間を見つけては公爵家に帰ってこられ、お約束どおり私にお菓子の作り方を御指南くださいました。
「ここは、この様に生地をさっくりと混ぜるのが大事だ。」
「この様にですか?」
「そうだ。上手いぞ。」
ロイド様はお言葉使いが乱暴ではありましたが、とても優しく教えて下さるので、私は嬉しく思っておりました。
2人並んで仲良くお菓子作りをする姿をご覧になられた公爵閣下は、目を細め暖かく見守って下さっていた事を、私もロイド様も分かっておりませんでした。
「よし!焼きあがったようだな。熱いから気をつけて取り出せよ?」
オーブンの蓋を開けると、ボワッと熱風が顔にかかり思わず仰け反ってしまいました。
ロイド様はそんな私に小さく笑い、大きな手袋を嵌めた手で、焼き上がったパウンドケーキを出してくださいました。
「ロイド様。ありがとう存じます。」
ニコリと笑ってお礼を申し上げると、ロイド様は真っ赤なお顔をされてそっぽを向かれてしまわれました。
(お言葉使いはお悪いけれど、こういった仕草はお可愛らしいのよね。でも、やはり殿下の方が……)と考えてしまう私は、どうしようもない女なのでしょうか…。
いくら貴族と言えど、お慕いする気持ちを抑える事は、私にはどうしても出来なかったのです。
それほどリュークアッセンドラ王太子殿下は、私の理想の殿方でした。
いつかこの想いを告げる事が出来たらどんなに嬉しい事でしょう。
所詮叶わぬ想いと知りながら、パウンドケーキを切り分けて下さっているロイド様の手元を見ておりました。
また、リュークアッセドラ殿下の執務の補佐をされていらっしゃるロイド様は、時間を見つけては公爵家に帰ってこられ、お約束どおり私にお菓子の作り方を御指南くださいました。
「ここは、この様に生地をさっくりと混ぜるのが大事だ。」
「この様にですか?」
「そうだ。上手いぞ。」
ロイド様はお言葉使いが乱暴ではありましたが、とても優しく教えて下さるので、私は嬉しく思っておりました。
2人並んで仲良くお菓子作りをする姿をご覧になられた公爵閣下は、目を細め暖かく見守って下さっていた事を、私もロイド様も分かっておりませんでした。
「よし!焼きあがったようだな。熱いから気をつけて取り出せよ?」
オーブンの蓋を開けると、ボワッと熱風が顔にかかり思わず仰け反ってしまいました。
ロイド様はそんな私に小さく笑い、大きな手袋を嵌めた手で、焼き上がったパウンドケーキを出してくださいました。
「ロイド様。ありがとう存じます。」
ニコリと笑ってお礼を申し上げると、ロイド様は真っ赤なお顔をされてそっぽを向かれてしまわれました。
(お言葉使いはお悪いけれど、こういった仕草はお可愛らしいのよね。でも、やはり殿下の方が……)と考えてしまう私は、どうしようもない女なのでしょうか…。
いくら貴族と言えど、お慕いする気持ちを抑える事は、私にはどうしても出来なかったのです。
それほどリュークアッセンドラ王太子殿下は、私の理想の殿方でした。
いつかこの想いを告げる事が出来たらどんなに嬉しい事でしょう。
所詮叶わぬ想いと知りながら、パウンドケーキを切り分けて下さっているロイド様の手元を見ておりました。
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