王子様に恋をした【完結】

Saeko

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第四章 今世其ノ弐

第二幕 告白

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「亜衣。俺……俺は、澤村亜衣さんを愛してます。どうか俺と付き合って下さい。」

「あ、愛して?」

「あぁ、ずっと入社の頃からずっとお前さん…いや、亜衣だけ見てきた。」

「そんな事……そんな風には見れなかったのに。」

「そうだな。ずっと茶化してからかってばっかりだったもんな。」

「そうだね。」

「なんか照れくさくてよ。それにお前は、ずっと先輩に憧れてたしよ。言えなかった。俺の気持ちなんてな。」

(確かにそうだった。私はずっと王子様と言われていた竜二先輩に憧れていたし、大好きだったもんね。
それに一眞さんはただの面倒臭い年上の同期としか思って無かったから。

でも……前世を思い出した今は……

ううん。今の私は誰も好きになっちゃ駄目な存在なんだから、『恋愛』なんてしちゃ駄目なのよね。
一眞さんの告白は吃驚びっくりしたけど、嬉しかった。だからこそ私もちゃんと断らないと駄目だよね。)

私は起こしたベッドに背中を預けながら一眞さんに向き合うと、

「告ってくれてありがとうございます。嬉しかった。でも……お付き合いは出来ないの。」

「そうか……まだ先輩のこと「ううん、違うよ。」」

「は?違うのか?」

「先輩の事は関係ないの。私……私の問題なの……」

「…………」

「私、一眞さん……ううん。私は人を好きになっちゃいけないんだ。」

吃驚した顔で何も言えなくなった一眞さんに、昼間私に告げられた体の事を打ち明けた。

「そ、そうか……」

「うん。だからね?私なんか忘れ「それでも!それでも俺は!」聞いて?一眞さん。そういう大事な言葉は、一時的な感情で言わない方が良いと思う。ちゃんと考えた方がいいよ。こんな体の女なんて、面倒臭いだけじゃん。」

「……」

「今日はもう帰って?」

「亜衣…お、俺は……」

「まだ疲れやすいんだよね。ほら私、見えない所も傷だらけらしいから。」

突き放す様に告げると、

「あ、あぁ…そ…だな。今日は帰るわ。」

一眞さんは何か言おうとした言葉を飲み込みそう言った。

「おやすみなさい。気をつけて。」

私はベッドを倒しながら、一眞さんから顔を背けました。

(ごめんなさい。ありがとう。でも…私といても幸せにはなれない。だからね?私の事は忘れて?ロイド様。)

病室のドアが閉まる音が聞こた後、私は枕に顔を押し付け、嗚咽が漏れないようにし夜があけるまで泣き続けた。


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