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第三章 それぞれの魔獣戦

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魔銃の試し撃ちをした翌日。
僕はルードリッヒさん達に連れられ、予定どおり冒険者ギルドへとやって来た。

受付けで渡された用紙に、僕はこの世界の文字で、【のぞむ・わたせ】と書き記すと、それを見ていたルードリッヒさんが驚いていた。
「のぞむ。お前はこの文字が読めるのか?」
と。馬鹿にしてる?と言わんばかりの視線をルードリッヒさんに向けると、
「いや、な。異世界人のお前が、この国の文字を読める事が不思議だっただけだ。城の連中は、「字が読めないから分からない!」と言っていたのを耳にしたからな。」
とさっきの言葉の理由を説明された。
おそらく、"城の連中”とは勇達の事だろう。
「ハイネさんの家に最初に泊めてもらった日に、店のメニューが読めない僕の為、子供向けの絵本を貸してくれました。それを見ながら文字を覚えたんです。」
と、当時どう覚えたのか?を受付けの女性に促されるまま、水晶に手を乗せながらルードリッヒさんに話すと、彼は「お前は本当に努力家だな。」と言って笑ってくれたんだ。

そうこうしてるうちに、受付けの女性が
「のぞむ・わたせさん、17歳。男性。魔法スキル無し。魔力MP20。魔法属性無し。という結果でした。冒険者ランクはEです。では、此方がのぞむさんの登録カードです。どうぞ。」
と、真っ白カードを渡してきた。
「じゃ、イリーナ。のぞむは俺のパーティーに入れるから、それも登録して貰えるかな?」
とルードリッヒさんが言うと、
「畏まりました、ルードリッヒ様。では、のぞむさん。再度先程のカードを貸して下さい。」
と言われ、僕は受け取ったカードをもう一度渡した。

すると受付けのイリーナさんは、カウンターテーブルの下で何やら作業をした後、
「登録出来ましたのでお返しします。」
と再度カードを返されたんだ。

「鑑定してみろ、のぞむ。」
と言われ、カードの鑑定を行うと、僕の個人情報と、パーティーメンバー;ルードリッヒ、カールソン、ミランダ と表示された。
「ルードリッヒさん。この ミランダさんは?」
と尋ねると、
「ミランダは私よ、のぞむ君。」
とバシッと肩を叩かれた。
振り向いた僕の前には、ルードリッヒさんと同じ金髪で紺碧の瞳の可愛らしい女の子が立っていた。

「紹介するよ、のぞむ。此奴はミランダ。俺のパーティーのヒーラーだ。」
「改めましてミランダよ。よろしくね、のぞむ君。」
と差し出された彼女の右手を……握る前に、僕は自分の手をズボンのポケットから出したハンカチで手を拭いてから、
「のぞむです。ルードリッヒさんのパーティーに入れて貰いました。平民なので、パーティーでの役割りはありません。よろしくお願い致します。」
と言ってからミランダさんの手を握った。
「噂どおり謙虚な方ね。」
と天使の様な微笑みを浮かべるミランダさん。
僕はそんな彼女の顔を直視出来ずに俯いてしまう。
元の世界で、勇達から
「見るな!キモいんだよ!」
「不細工が感染うつります。」
「ホント、キモい顔。よく生きていられるよね~。」
「それは言える~。愛子。こんな顔だったら絶対絶対ぜぇ~ったい外出らんな~い。」
と散々な言われようだったから、人の目を見られないし、怖くて仕方がないからだ。

「大丈夫?のぞむ君。顔色が良くないわ。」
と心配そうな面持ちで僕の顔を覗き込んで来たミランダさんの顔を見た僕の顔は、きっと茹でダコの様に真っ赤だろう。
だって手汗出方が半端ないし、顔の熱も半端ない状態だったから。
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