41 / 70
双子の過去 真相編
彼女の目線の先には──
しおりを挟む
僕に彼女が出来た事は、すぐに兄さんと遥華にも伝わり、2人は僕を祝福した。
「おめでとう、海斗。俺も兄ちゃんとして、嬉しいよ。」
「まさか、カイくんに先を越されちゃうなんて、思わなかったよー。いいなあ、羨ましい!」
こうして祝福してくれるのは、悪い気はしないのだが、どこか腑に落ちなかった。
きっと僕は、兄さんに落ち込んでほしかったんだろう。
僕が兄さんの手から離れる。
そこから来る喪失感を、僕に見せて欲しかったんだ。
「ねえねえ、カイくん。今度の休み、カイくんの彼女も呼んで、みんなで遊びに行こうよ。」
遥華のやつ、突然何を言い出すんだろう。
「私、カイくんの彼女、見たーい。それでね、仲良くなりたいなあって思って。」
いつもそうだ。
遥華は僕たちの事などお構いなく、勝手に話を進めていく。
そういう、自分勝手なところが、僕は嫌いだった。
「おっ、いいなそれ。俺も、海斗の彼女がどういう子か、気になってたんだ。」
そして、そんな遥華に肯定的な、兄さんが嫌だった。
「ねえ、お願い!彼女に会わせて!!」
本当は別に、遥華の言いなりになる必要はない。
それでも僕は──。
「……いいよ。でも、彼女に聞いてみてからね。」
「本当?やったー!!」
あくまでも優しい海斗を演じるため、自分の心に嘘をついた。
そうして、日曜日になり、僕は兄さんとともに、待ち合わせ場所になった、バス停の前に来ていた。
「伊佐川さん…だっけ。あの子、結構可愛い子じゃないか。」
一応、兄さんと伊佐川美由は、学校で顔合わせはしていた。
その時の2人は、辿々しい様子で、どことなく互いに緊張しているようだった。
僕はそんな兄さんが少し気に食わなかったが、黙ってその様子を見ていたのだった。
「おっ!来た来た。海斗、呼びに行ってこいよ。」
そこには、白いワンピースを着た、可憐な少女がいた。
普通の男子なら、胸が高鳴るのかもしれない。
それでも僕は、何も感じなかった。
「……ったく。しょうがないなあ。おーい、伊佐川さん!こっちこっち。」
兄さんの呼ぶ声に気付いて、伊佐川美由がゆっくりと歩み寄ってきた。
「ごめんなさい。待たせましたか?」
伊佐川美由は、兄さんに向かって謝った。
「いや、そんな事ないよ。それにまだ、あいつも来てないしな。」
2人が話いているのを、横で聞きながら待っていると、後ろから足音が迫ってきた。
「ごめーん!!遅くなっちゃったー!!」
振り返ると、そこには肩で呼吸をしている遥華がいた。
「あのなあ……。ごめんって、言い出しっぺのお前が何で遅れてんだよ。」
兄さんに叱られた遥華は、ペロッと舌を出した。
そんな2人の様子を、僕と伊佐川美由は黙って見つめていた。
その後僕たちは、バスに乗ってアウトレットモールに向かった。
そしてアウトレットモールに着くや否や、遥華が、ティーンズファッションコーナーへとみんなを先導していった。
ティーンズファッションコーナーに着くと、遥華は伊佐川美由を引っ張って、2人で服を見始めた。
僕と兄さんはというと、そこまで服に関心がなかったので、適当に近くにあったソファに座ることにした。
「はあー……。あれは時間かかりそうだな。」
普段から遥華は、買い物に長い時間をかける方だ。
さらに今日は、同い年の女子と一緒なのだから、そう思うのは普通の事であり、実際僕もそう思っていた。
だから僕は、遥華と一緒にこういう場所に来るのは嫌いだった。
「……ねえ、兄さん。僕たちは僕たちで、どこか見に行こうよ。」
こんな事なら、やっぱり遥華の提案なんて乗るんじゃなかったと後悔しつつ、僕は兄さんに提案した。
「いや、それはまずいだろ。第一、お前は伊佐川さんの彼氏なんだから、そばにいてやった方がいいんじゃないか?」
確かに言われてみればそうなのだが、どうにも腑に落ちず、僕を目線を下に落とし黙り込んだ。
「おーい!何してるのー?早く来てきてー!!」
遠くから遥華の声が聞こえてきて、僕は兄さんたちにバレないよう、小さくため息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。
「早く来てって……、何のようだよ?」
「いいから早く来てー!美由ちゃん、とっても可愛いよー!」
兄さんはやれやれという様子で歩き出し、それに僕も続いた。
そうして遥華に案内され、店内に入って行くと──。
「えっ……ええっ⁉︎」
そこには黒を基調としたゴスロリ風のワンピースに着替えた伊佐川美由が、少し頬赤くを染めて突っ立っていた。
「い…伊佐川さん、こういう服が好みだったの……?」
てっきり僕は、清楚な服装な服装が好きだと思っていたので、その姿に呆気を取られてしまった。
「ちっ…違うの……。これは………。」
「私が勧めたんだよ。だってとっても似合いそうだったもん。」
遥華はそう言うと、自慢げに鼻を鳴らした。
「………あのさあ、遥華。伊佐川さん、困ってるよ。」
流石にちょっとやりすぎだと思い、僕は注意した。
でも遥華は全く耳を貸さず、兄さんに話を振った。
「ねっ、似合ってるでしょ?」
まさか自分に振られるとは想定していなかったのか、兄さんは少し黙り込んだ。
「そうだな……。少なくとも、遥華よりはよっぽど似合うだろうな。」
「ええーっ!何よそれー!!」
ああ、また始まったなと思った。
兄さんと遥華はいつも、僕を置いてけぼりにして、2人で盛り上がる。
それを見せつけられるたびに、兄さんを取られたように感じて寂しくなった。
「………ねえ、海斗くん。」
僕が振り向くと、いつの間にか、伊佐川美由が僕の隣に立っていた。
けれどもその目線の先は、あの2人に向けられていた。
「あの2人って………お似合いだよね。」
その言葉を聞いて、僕の中で抑えていた感情が込み上げてきた。
このままではまずいと思ったが、一度溢れ出した感情は、なかなか抑えられなかった。
「そんな事、ない!」
自分でも驚くほど、はっきりとした否定の言葉が出た。
もちろん伊佐川美由も、僕の予想外の反応に、目を丸くさせた。
「………そっか。」
それっきり、僕たちは黙り込み、兄さんと遥華の盛り上がる様を見つめていた。
それからの事は、何をしたのか、何を見たのかは、よく覚えていない。
ただ、今でも覚えている事は、僕と伊佐川美由が同じ思いをしていたという事だけだった。
「おめでとう、海斗。俺も兄ちゃんとして、嬉しいよ。」
「まさか、カイくんに先を越されちゃうなんて、思わなかったよー。いいなあ、羨ましい!」
こうして祝福してくれるのは、悪い気はしないのだが、どこか腑に落ちなかった。
きっと僕は、兄さんに落ち込んでほしかったんだろう。
僕が兄さんの手から離れる。
そこから来る喪失感を、僕に見せて欲しかったんだ。
「ねえねえ、カイくん。今度の休み、カイくんの彼女も呼んで、みんなで遊びに行こうよ。」
遥華のやつ、突然何を言い出すんだろう。
「私、カイくんの彼女、見たーい。それでね、仲良くなりたいなあって思って。」
いつもそうだ。
遥華は僕たちの事などお構いなく、勝手に話を進めていく。
そういう、自分勝手なところが、僕は嫌いだった。
「おっ、いいなそれ。俺も、海斗の彼女がどういう子か、気になってたんだ。」
そして、そんな遥華に肯定的な、兄さんが嫌だった。
「ねえ、お願い!彼女に会わせて!!」
本当は別に、遥華の言いなりになる必要はない。
それでも僕は──。
「……いいよ。でも、彼女に聞いてみてからね。」
「本当?やったー!!」
あくまでも優しい海斗を演じるため、自分の心に嘘をついた。
そうして、日曜日になり、僕は兄さんとともに、待ち合わせ場所になった、バス停の前に来ていた。
「伊佐川さん…だっけ。あの子、結構可愛い子じゃないか。」
一応、兄さんと伊佐川美由は、学校で顔合わせはしていた。
その時の2人は、辿々しい様子で、どことなく互いに緊張しているようだった。
僕はそんな兄さんが少し気に食わなかったが、黙ってその様子を見ていたのだった。
「おっ!来た来た。海斗、呼びに行ってこいよ。」
そこには、白いワンピースを着た、可憐な少女がいた。
普通の男子なら、胸が高鳴るのかもしれない。
それでも僕は、何も感じなかった。
「……ったく。しょうがないなあ。おーい、伊佐川さん!こっちこっち。」
兄さんの呼ぶ声に気付いて、伊佐川美由がゆっくりと歩み寄ってきた。
「ごめんなさい。待たせましたか?」
伊佐川美由は、兄さんに向かって謝った。
「いや、そんな事ないよ。それにまだ、あいつも来てないしな。」
2人が話いているのを、横で聞きながら待っていると、後ろから足音が迫ってきた。
「ごめーん!!遅くなっちゃったー!!」
振り返ると、そこには肩で呼吸をしている遥華がいた。
「あのなあ……。ごめんって、言い出しっぺのお前が何で遅れてんだよ。」
兄さんに叱られた遥華は、ペロッと舌を出した。
そんな2人の様子を、僕と伊佐川美由は黙って見つめていた。
その後僕たちは、バスに乗ってアウトレットモールに向かった。
そしてアウトレットモールに着くや否や、遥華が、ティーンズファッションコーナーへとみんなを先導していった。
ティーンズファッションコーナーに着くと、遥華は伊佐川美由を引っ張って、2人で服を見始めた。
僕と兄さんはというと、そこまで服に関心がなかったので、適当に近くにあったソファに座ることにした。
「はあー……。あれは時間かかりそうだな。」
普段から遥華は、買い物に長い時間をかける方だ。
さらに今日は、同い年の女子と一緒なのだから、そう思うのは普通の事であり、実際僕もそう思っていた。
だから僕は、遥華と一緒にこういう場所に来るのは嫌いだった。
「……ねえ、兄さん。僕たちは僕たちで、どこか見に行こうよ。」
こんな事なら、やっぱり遥華の提案なんて乗るんじゃなかったと後悔しつつ、僕は兄さんに提案した。
「いや、それはまずいだろ。第一、お前は伊佐川さんの彼氏なんだから、そばにいてやった方がいいんじゃないか?」
確かに言われてみればそうなのだが、どうにも腑に落ちず、僕を目線を下に落とし黙り込んだ。
「おーい!何してるのー?早く来てきてー!!」
遠くから遥華の声が聞こえてきて、僕は兄さんたちにバレないよう、小さくため息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。
「早く来てって……、何のようだよ?」
「いいから早く来てー!美由ちゃん、とっても可愛いよー!」
兄さんはやれやれという様子で歩き出し、それに僕も続いた。
そうして遥華に案内され、店内に入って行くと──。
「えっ……ええっ⁉︎」
そこには黒を基調としたゴスロリ風のワンピースに着替えた伊佐川美由が、少し頬赤くを染めて突っ立っていた。
「い…伊佐川さん、こういう服が好みだったの……?」
てっきり僕は、清楚な服装な服装が好きだと思っていたので、その姿に呆気を取られてしまった。
「ちっ…違うの……。これは………。」
「私が勧めたんだよ。だってとっても似合いそうだったもん。」
遥華はそう言うと、自慢げに鼻を鳴らした。
「………あのさあ、遥華。伊佐川さん、困ってるよ。」
流石にちょっとやりすぎだと思い、僕は注意した。
でも遥華は全く耳を貸さず、兄さんに話を振った。
「ねっ、似合ってるでしょ?」
まさか自分に振られるとは想定していなかったのか、兄さんは少し黙り込んだ。
「そうだな……。少なくとも、遥華よりはよっぽど似合うだろうな。」
「ええーっ!何よそれー!!」
ああ、また始まったなと思った。
兄さんと遥華はいつも、僕を置いてけぼりにして、2人で盛り上がる。
それを見せつけられるたびに、兄さんを取られたように感じて寂しくなった。
「………ねえ、海斗くん。」
僕が振り向くと、いつの間にか、伊佐川美由が僕の隣に立っていた。
けれどもその目線の先は、あの2人に向けられていた。
「あの2人って………お似合いだよね。」
その言葉を聞いて、僕の中で抑えていた感情が込み上げてきた。
このままではまずいと思ったが、一度溢れ出した感情は、なかなか抑えられなかった。
「そんな事、ない!」
自分でも驚くほど、はっきりとした否定の言葉が出た。
もちろん伊佐川美由も、僕の予想外の反応に、目を丸くさせた。
「………そっか。」
それっきり、僕たちは黙り込み、兄さんと遥華の盛り上がる様を見つめていた。
それからの事は、何をしたのか、何を見たのかは、よく覚えていない。
ただ、今でも覚えている事は、僕と伊佐川美由が同じ思いをしていたという事だけだった。
0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる