堕ちた双子

ゆきみまんじゅう

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双子の過去 真相編

彼女の目線の先には──

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僕に彼女が出来た事は、すぐに兄さんと遥華にも伝わり、2人は僕を祝福した。

「おめでとう、海斗。俺も兄ちゃんとして、嬉しいよ。」
「まさか、カイくんに先を越されちゃうなんて、思わなかったよー。いいなあ、羨ましい!」

こうして祝福してくれるのは、悪い気はしないのだが、どこか腑に落ちなかった。

きっと僕は、兄さんに落ち込んでほしかったんだろう。

僕が兄さんの手から離れる。
そこから来る喪失感を、僕に見せて欲しかったんだ。

「ねえねえ、カイくん。今度の休み、カイくんの彼女も呼んで、みんなで遊びに行こうよ。」

遥華のやつ、突然何を言い出すんだろう。

「私、カイくんの彼女、見たーい。それでね、仲良くなりたいなあって思って。」

いつもそうだ。

遥華は僕たちの事などお構いなく、勝手に話を進めていく。

そういう、自分勝手なところが、僕は嫌いだった。

「おっ、いいなそれ。俺も、海斗の彼女がどういう子か、気になってたんだ。」

そして、そんな遥華に肯定的な、兄さんが嫌だった。

「ねえ、お願い!彼女に会わせて!!」

本当は別に、遥華の言いなりになる必要はない。

それでも僕は──。

「……いいよ。でも、彼女に聞いてみてからね。」
「本当?やったー!!」

あくまでも優しい海斗を演じるため、自分の心に嘘をついた。



そうして、日曜日になり、僕は兄さんとともに、待ち合わせ場所になった、バス停の前に来ていた。

「伊佐川さん…だっけ。あの子、結構可愛い子じゃないか。」

一応、兄さんと伊佐川美由は、学校で顔合わせはしていた。

その時の2人は、辿々しい様子で、どことなく互いに緊張しているようだった。

僕はそんな兄さんが少し気に食わなかったが、黙ってその様子を見ていたのだった。

「おっ!来た来た。海斗、呼びに行ってこいよ。」

そこには、白いワンピースを着た、可憐な少女がいた。

普通の男子なら、胸が高鳴るのかもしれない。

それでも僕は、何も感じなかった。

「……ったく。しょうがないなあ。おーい、伊佐川さん!こっちこっち。」


兄さんの呼ぶ声に気付いて、伊佐川美由がゆっくりと歩み寄ってきた。

「ごめんなさい。待たせましたか?」

伊佐川美由は、兄さんに向かって謝った。

「いや、そんな事ないよ。それにまだ、あいつも来てないしな。」

2人が話いているのを、横で聞きながら待っていると、後ろから足音が迫ってきた。

「ごめーん!!遅くなっちゃったー!!」

振り返ると、そこには肩で呼吸をしている遥華がいた。

「あのなあ……。ごめんって、言い出しっぺのお前が何で遅れてんだよ。」

兄さんに叱られた遥華は、ペロッと舌を出した。

そんな2人の様子を、僕と伊佐川美由は黙って見つめていた。



その後僕たちは、バスに乗ってアウトレットモールに向かった。

そしてアウトレットモールに着くや否や、遥華が、ティーンズファッションコーナーへとみんなを先導していった。

ティーンズファッションコーナーに着くと、遥華は伊佐川美由を引っ張って、2人で服を見始めた。

僕と兄さんはというと、そこまで服に関心がなかったので、適当に近くにあったソファに座ることにした。

「はあー……。あれは時間かかりそうだな。」

普段から遥華は、買い物に長い時間をかける方だ。

さらに今日は、同い年の女子と一緒なのだから、そう思うのは普通の事であり、実際僕もそう思っていた。

だから僕は、遥華と一緒にこういう場所に来るのは嫌いだった。

「……ねえ、兄さん。僕たちは僕たちで、どこか見に行こうよ。」

こんな事なら、やっぱり遥華の提案なんて乗るんじゃなかったと後悔しつつ、僕は兄さんに提案した。

「いや、それはまずいだろ。第一、お前は伊佐川さんの彼氏なんだから、そばにいてやった方がいいんじゃないか?」

確かに言われてみればそうなのだが、どうにも腑に落ちず、僕を目線を下に落とし黙り込んだ。

「おーい!何してるのー?早く来てきてー!!」

遠くから遥華の声が聞こえてきて、僕は兄さんたちにバレないよう、小さくため息をつくと、ゆっくりと立ち上がった。

「早く来てって……、何のようだよ?」
「いいから早く来てー!美由ちゃん、とっても可愛いよー!」

兄さんはやれやれという様子で歩き出し、それに僕も続いた。

そうして遥華に案内され、店内に入って行くと──。

「えっ……ええっ⁉︎」

そこには黒を基調としたゴスロリ風のワンピースに着替えた伊佐川美由が、少し頬赤くを染めて突っ立っていた。

「い…伊佐川さん、こういう服が好みだったの……?」

てっきり僕は、清楚な服装な服装が好きだと思っていたので、その姿に呆気を取られてしまった。

「ちっ…違うの……。これは………。」
「私が勧めたんだよ。だってとっても似合いそうだったもん。」

遥華はそう言うと、自慢げに鼻を鳴らした。

「………あのさあ、遥華。伊佐川さん、困ってるよ。」

流石にちょっとやりすぎだと思い、僕は注意した。

でも遥華は全く耳を貸さず、兄さんに話を振った。

「ねっ、似合ってるでしょ?」

まさか自分に振られるとは想定していなかったのか、兄さんは少し黙り込んだ。

「そうだな……。少なくとも、遥華よりはよっぽど似合うだろうな。」
「ええーっ!何よそれー!!」

ああ、また始まったなと思った。

兄さんと遥華はいつも、僕を置いてけぼりにして、2人で盛り上がる。

それを見せつけられるたびに、兄さんを取られたように感じて寂しくなった。

「………ねえ、海斗くん。」

僕が振り向くと、いつの間にか、伊佐川美由が僕の隣に立っていた。

けれどもその目線の先は、あの2人に向けられていた。

「あの2人って………お似合いだよね。」

その言葉を聞いて、僕の中で抑えていた感情が込み上げてきた。

このままではまずいと思ったが、一度溢れ出した感情は、なかなか抑えられなかった。

「そんな事、ない!」

自分でも驚くほど、はっきりとした否定の言葉が出た。

もちろん伊佐川美由も、僕の予想外の反応に、目を丸くさせた。

「………そっか。」

それっきり、僕たちは黙り込み、兄さんと遥華の盛り上がる様を見つめていた。



それからの事は、何をしたのか、何を見たのかは、よく覚えていない。

ただ、今でも覚えている事は、僕と伊佐川美由が同じ思いをしていたという事だけだった。
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