乙女ゲームのバグ令嬢〜婚約破棄からの断罪劇が始まるようですが、冤罪は良くないと思います!〜【完結】

モナカ

文字の大きさ
29 / 44
3部

3-4


※途中から視点が変わります

◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇

そこからは怒涛の2週間でございました。

キャメロンさんがご実家の商会を呼んで、靴や宝飾の類を決めて、頭の中で埃をかぶって忘れかけてたダンスを復習。連日のダンス練習で筋肉痛が治る暇がございません。マーサによって全身ゴリゴリに磨かれて物理的に一皮、二皮剥けた気がいたします。

夜会当日、送り出された私はマーサの渾身の力によって絞められたコルセットと緊張があいまって虫の息でございます。

夜会が行われるのは王城ですが、騎士棟へ出入りする時とは違い正面からお邪魔いたします。荘厳な城の構えと色とりどり煌びやかな貴族たちの雰囲気に固まり「…息子よ。帰ってロバートに絵本を読んで一緒に寝むりたい」と言ってみましたが、当然却下されてしまいました。
よくよく考えたら私デビュタントボールにも参加していないので、公の社交場に出るのは初めてなのでは…?
(断罪劇の夜会は公の社交場参加に入りますでしょうか?)


旦那様、草葉の陰で微笑んでいないでお助けください…!

◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇***◇◇◇◇

国王主催の夜会は留学する第一王子アルファードの壮行も兼ねていた。故に、日頃表に出ることはない第一王子妃キャンベラも王族席に座っていた。白地に薄い桃色で小花を散らした刺繍が施されたプリンセスラインのドレス。ピンクの髪はハーフアップにして金の髪飾りで留めている。胸下に光る金のネックレスには大きなアクアマリンが嵌め込まれている。既婚者とは思えぬ少女のような風貌とキョロキョロと辺りを見回す落ち着きのない子供のような振る舞いを注意する者はいない。

「オリオン、こっちよ!私の後ろに来て」

壁際で会場警備をするオリオン・レイスを見つけ、第一王子妃が大きな声で呼ぶ。
歓談していた会場内の貴族達がヒソヒソとオリオンと第一王子妃を盗み見ているが、オリオンはその場から動かない。キャンベラは言うことを聞かないオリオンを連れてくるように侍従に命じるも、隣に座るアルファードがそれを止めた。

「会場警備は近衞の隊長と私が決めている。勝手な真似をするな」

隣を見ることもなく告げるアルファードの態度に、不満を隠さず頬を膨らませたキャンベラが露骨に睨みつける。
会場へとやってきた貴族達は爵位の高い者から国王夫妻と第一王子夫妻に挨拶をしてゆく。一言、二言言葉をかわすのだが、キャンベラは学園時代の取り巻きが挨拶に来るたび立ち上がって手を握り甘えた声で挨拶していた。隣にいる妻や婚約者の存在は全て無視して。

「全然会いに来てくれないんだもの、寂しかったわ。是非王子宮に遊びに来てね」

彼らはやんわりと曖昧な返事で返し、キャンベラの手から逃れ下がって行く。
アルファードは何の感情も伺えぬ笑顔で全てを流していた。
が、不意にアルファードが息を飲み、一点を見つめて柔らかな笑みを見せた。

視線の先には美しく洗練された所作で国王夫妻と挨拶を交わすシセーラ・フロスト公爵令嬢の姿があった。
以前より大人びて艶を帯びた姿に、金糸の刺繍が施された夜空のような色のドレスがよく似合っていた。編みこまれた白金の髪には所々真珠の飾りがあしらわれている。父親のエスコートで前へと進み、挨拶を交わすと琥珀の瞳にアルファードの姿がうつる。
それだけでアルファードは泣きたいような気持ちになった。

「シセーラ、ひさ「お久しぶりね、シセーラ。あなたまだ婚約者も見つからないの?」

アルファードの声を遮りキャンベラが前に出る。礼儀を弁えない態度にも表情を変えることなく、シセーラは優雅に礼をして挨拶を返した。

「お久しぶりでございます、アルファード殿下、キャンベラ妃殿下」
「ごめんなさいねぇ、アルファードさまがわたしを選んじゃったから。領地に引きこもってしまっていたのでしょ?可哀想に。今度お茶会に呼んであげるわね~」
「お心遣い痛み入ります。しかし、娘には縁談の申し込みが幾つか来ておりまして、なかには国を越えたものもあり選ぶのに時間がかかってしまっているだけですので、ご心配には及びません。では失礼を」

フロスト公爵は笑顔であるが、終始目が笑っておらず殺気さえ放っていた。
しかしアルファードの内心を動揺させたのは殺気ではなく、シセーラに来ているという縁談話だった。王族として動揺を表に出すことはなく、笑顔を保っていたが、ついシセーラを見る瞳に縋るような揺らぎが出てしまっていた。
キャンベラはそれを見逃さない

「よかったわね、アルファードさま!外国なら彼女が婚約破棄された傷物の令嬢だなんて知らないでしょうから、貰い手もあるのでしょう」

挨拶を終えて背を向けたフロスト公爵父娘に聞こえるような声で言い、アルファードの腕に絡みついてしなだれ掛かる。隙をついて絡みつかれたアルファードは腕を解こうと動くが、余計に引き寄せ豊満な胸を押し付けてくる。甘ったるい香水の香りに眉を顰めた時、会場が俄かに騒ついた。

「あれは…」
「まさか…」
「だが、エスコートなさっているのはボルト男爵だ」
「なら、彼女が?」
「私も本人を見るのは初めてですわ」
「…前ボルト男爵夫人?」
「セレナーデ・バーンハイム子爵令嬢」

騒めく貴族たちの視線が会場の入り口へと注がれていた。




感想 276

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています

かきんとう
恋愛
 王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。  磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。  その中心に、私は立っていた。  ――今日、この瞬間のために。 「エレノア・フォン・リーベルト嬢」  高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。

「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった

歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。 だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」 追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。 一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。 誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。 「その言葉は、もう翻訳できません」

婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい

恋愛
婚約者には初恋の人がいる。 王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。 待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。 婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。 従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。 ※なろうさんにも公開しています。 ※短編→長編に変更しました(2023.7.19)

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

姉の方を所望していたと言った婚約者に、突然連れ帰られて気づいたら溺愛されています

もちもちほっぺ
恋愛
侯爵家の地下室に住み、姉の食べかけで飢えをしのぎ、婚約者には初対面で「老婆のようだ、姉の方がよかった」と言われた令嬢リリアーナ。 ある日その婚約者に問答無用で公爵邸に連れ帰られた。 庭の恵みを口にするたびに肌が輝き、髪が艶めき、体に力が満ちていく。首に巻いたお守りの秘密、十数年続く国の不作の真実、虐げられ続けた令嬢の出生の謎。 全てが明かされる時、地下室令嬢の逆転劇が始まる。 なお婚約者は今日も庭でグルメリポートを最後まで聞いている。

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。