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3章 辺境の地ライムライトへ
3、『水宝玉迷宮』の入り口は水底に
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篝火に照らされた花びらが一片火の粉のように舞い、残り少ない酒が入ったグラスの中へ、ゆるゆると落ちた。
舟は川を揺蕩い、篝火でライトアップされたアーチ状の石橋をゆっくりと通り過ぎた。水面に浮かべられた行燈と舟に置かれた灯りが、雪のように白いチェリの花を浮かび上がらせている。
暮夜、簾が上げられた舟の上は肌寒い。もう少し時季を過ごせば夜の風も気持ち良く感じられるようになるだろう。水面を渡る風が肌に触れ、僕はぶるりと身を震わせた。
すでに机に並んだ皿は綺麗に平らげられており、ソースが残るのみとなっている。飲み散らかして倒れた状態のままの酒瓶を立て、こぼれた水分を布巾で拭く。呑めない僕の役目は給仕さんだ。
あれほどあった酒は殆どがレオンハルトの腹の中におさまった。ゴルドさんもシルバさんもけっこう飲み食いしていたみたいだけどレオンハルトには及ばない。竜人の健啖さをナメていた。今日の一日の食事代だけでも凄いことになるだろう。心の中で護衛中の飲食代を出すと言っていたエリオットさんに同情した。今頃くしゃみでもしているかもしれない。
そんな状態だからそろそろこの花見はお開きになるはずだ。にも関わらず両隣には腰を上げそうにないそっくりな二人とでっかい一人が僕を挟み込むように座っている。ゴルドさんとシルバさんは膝を揃えて両足を折り畳み、腰を下ろしてぴしっと背筋を伸ばすという変わった座り方だ。あれで足が痺れないんだろうか。
逆にレオンハルトは片膝を立ててだらしなく座っている。三人に共通しているのは顔色が変わってないことだ。若干双子の目がレオンハルトより据わっているくらいか。
「そういやキュレル山の山賊の討伐はオメェらんとこの冒険者ギルドとメレキオール騎士団が請け負うんだって?」
グラスに残っていたチェリの花びら入りの酒をグイッと呑み干したレオンハルトがふと思い出したように双子に聞いた。
「はい」
「そうなんです」
ここメレキオールの騎士団は、他国の者や旅人が多く流入するこの街を守るのに相応しく、揺るぎない強さを誇る人員を多く揃えているのが特徴で、きっと討伐に出ればすぐに山賊を退治してくれるはずだ。
「現在はこちらが雇った冒険者の斥候が三人ほど山に入っております」
「募集した冒険者の人員もほぼ集まっておりますので、斥候が戻ってきたらすぐに討伐ということになりそうです」
冒険者の斥候は主に偵察や調査の役割を担う。今回の場合、まず斥候が山に入り、探知と探索で山賊の根城を探し出し、発見次第賊の配置、規模、人数、持っている武器など、ありとあらゆる情報を集めて本隊へと持っていく。それを元に騎士団と冒険者ギルドの上層部が討伐の作戦を立案し、攻撃に移る。作戦が成功するか否かは全て斥候の手にかかっていると言っても過言ではない。
王国直下の山に根城を構えた今回の山賊の討伐は本来、王都騎士団がやるものをメレキオール騎士団とメレキオールギルドの冒険者たちが肩代わりするものなので、予算がたんまりと国から出る。もちろん山賊の頭を討ち取った者には別に報奨金が出る。
「あ、そう言えば」
話を変えるように手を打ち鳴らしたのは、左目に片眼鏡があるのでシルバさんだ。
「今回の討伐に『天上の射手』も手伝ってくれるそうで」
「お、何だ。アイツら今こっちにいるのか」
「『天上の射手』?」
手に取った酒瓶はもう空だったようだ。名残惜しそうに瓶を逆さにして振っていたレオンハルトが僕の質問に答えた。
「『天上の射手』はライムライト出身の奴らでな。まだパーティーランクは低いんだが、今注目されてるパーティーの一つだ。それはな……って、あーー、お前、ヴィクターの名前を聞いたことは?」
「ヴィクターってあの英雄と聖女の孫のヴィクター・レイ・フランネルのことだろ? この国でヴィクターの名前を知らないヤツなんていないでしょ」
ヴィクターはレオンハルトと同じくらいこの国では有名な人だ。勇者と聖女が魔王を討伐した話は、絵本や小説や演劇、それこそ親からの寝物語までさまざまな媒体で題材にされている。そんな二人の孫が冒険者になり、ましてやものすごく強くて貴族位も金も持ち、顔も整っているとくれば、有名にならないはずがない。
「あいつは今潜っている迷宮を攻略したら最年少二十一歳でのAランクになることが決まってる。二つ名はそのまんま『英雄の孫』だ。で、そいつが大迷宮エレクタール攻略のためにライムライトに『永遠の英雄』っていうクランハウスを作ってる最中で、自分が目をつけた将来有望な冒険者パーティーを勧誘してるんだ」
ヴィクターが勧誘するほどの冒険者パーティーならさぞかし有望だという証左にもなり、周りも一目置くだろう。
「ロイ率いる『天上の射手』はパーティーランクがまだC級にも関わらずそのクランに誘われてる」
「それはすごい」
レオンハルトによると、『天上の射手』は男性メンバー五人で構成されたパーティー。
リーダーはソロランクB級に上がったばかりの弓士、ロイ・クレイン。その他メンバー四人がソロC級で、前衛が盾役、中衛が魔法剣士、そしてロイを含む二人が弓士、一人が銃士と、後衛が全員遠距離系の飛び道具を使用するというかなり変則的なパーティーだ。『射手』ではなく『射手』と読むのは、『しゃしゅ』には弓を射る人の意味の他に銃を撃つ人も含まれているからだそう。考えられたパーティー名だった。
「ロイの弓の腕は百発百中……とまではいかねぇが百発九十五中くらいの精度で腕がいいんだ。まぁちょいっとだけ難ありなんだが……」
「難って?」
「女性を顔じゃなくおっぱいの大きさで選ぶ」
「……………………最低」
ドン引きだ。レオンハルトも性格に難ありだと思うけど、それよりも下がいた。双子も苦笑している。顔が赤いのは酒のせいか、レオンハルトの発言のせいか。気を取り直すようにゴルドさんが大きく咳払いをした。
「彼らはメレキオールまで商人の護衛依頼で来て、その後つい先日までセイレーン川の水底にある『水宝玉迷宮』に潜っていたので」
「迷宮の攻略報告にメレキオールギルドへ来た時に捕まえて手伝いを要請しました」
ふーーん、と頷きそうになってはたと気付いた。今、水底って言わなかったか?
「は? 水底?」
「はい。迷宮の入り口がセイレーン川の底にあるんですよ」
空のグラスをシルバさんが底を見せるように持ち上げた。
「え、じゃあどうやって水中の迷宮を攻略するんですか?」
迷宮が川の底じゃ息ができないだろうし、そもそもセイレーン川はけっこう水量が多いし、川底まで行くのも大変だろう。
「何でか迷宮の中に入りゃ息ができんだよ」
「不思議ですよね。迷宮はまだまだ解明できない事が多いです」
「ただ、迷宮の入り口がある水底まで行くには川に潜る必要があります」
迷宮探索のために迷宮に入ることを『潜る』と言うが、『水宝玉迷宮』はセイレーン川の水底に入り口があり、文字通り水中に潜らないといけないらしい。
「そこでこれを使います」
ゴルドさんが机の横に置いていたポーチ型のバッグから、チャックが付いた透明な小袋を取り出して僕に手渡した。
「『妖精の涙』です。マシロチョウガイという貝の魔物が生み出すアイテムで、これを一粒飲めば一時間水中で息が出来るようになります」
「『水宝玉迷宮』に潜る冒険者には必須です」
「へえ」
袋の中には三ミーリ(3mm)ほどの大きさの白くて丸い粒が三粒入っていた。
「レオンハルトさまにお酒とお食事を頂いたお礼です。差し上げますのでそのままお持ち下さい」
「え! いいの?」
窺うようにレオンハルトを見遣ると頷いたので、お礼を言ってありがたく頂くことにした。
「ここから先ライムライトに帰るには、数日の間セイレーン川に遡って野宿をしながら進むことになります」
「もし魔物に襲われて水中に引き摺り込まれても、『妖精の涙』があれば安心ですよ」
シルバさん、水中に引き摺り込まれる事になりそうなフラグを立てないでください。
「よっしゃ! じゃあこの場はそろそろお開きにするかぁ」
レオンハルトが立ち上がり、汚れたままの皿やグラスをガチャガチャとマジックバッグに押し込んでいく。いくら中の時間が止まっているとはいえ、汚れ物をそのままバッグに入れるのはいかがなものか……。
レオンハルトは部屋の様子からしてズボラそうだし整理整頓や掃除が苦手のようだ……。洗い物をした事があるのかも甚だ疑問だ。
と、いうことは、だ。
え、もしかしてアレ、後で僕が洗う羽目になるんじゃないか……!?
勘弁してくれ。
その後、想像した通りレオンハルトのあまりの生活能力のなさに、同居する家の炊事洗濯、掃除などの家事を全て僕が取り仕切る事になるのだが、それはまだまだ先の話である。
……………………………………………………………
【おまけの補遺】
(side.レオンハルト、ペイル 従魔契約)
魔獣と契約をするためには、契約者が名前を付けて、魔獣がそれを了承する必要がある。
青白い体表をしたバイコーンは契約者になる竜人に助けてもらって、怪我を治してもらって、ご飯ももらったので、契約に否やはなかった。だけど……。
「よし、今日からお前の名前は『青白き雷の閃光』だ!!」
いや、ダサいし長いよっ!!!!
バイコーンはフイ……っと顔を逸らす。当たり前だが契約は成功しない。
「え、嫌だ? ……う、じゃあ『荒れ狂う青白き雷光』は? え、ダメ? 長いか……。んじゃ短くして『青白き雷光』……え、これも嫌だって?」
バイコーンはあまりの名付けのセンスの無さに、もうこの竜人さんとは契約するのやめよっかなーーとまで思い始めていた。名前を一生懸命考えてくれているのは分かるけれど、街中で「お~~い、ペイルブルー・フラッシュオブライトニング~~」なんて呼ばれるこっちの身にもなってほしい。
う~~ん、う~~んと頭を悩ませる契約者を見て思わずブルルル……と鼻を鳴らす。なんとなく可哀想だから、もう長くなければなんでもいいか、と思った。
「じゃあお前の名前は『ペイル』で」
散々悩んだであろう名前はスッキリしていて、呼ばれても全く恥ずかしくなかった。そう思ったその瞬間、身体が光り輝き、暖かい力がふわりと自分に入って来たのをバイコーンは感じた。
従魔契約の完了だ。
今日から自分の名前は『ペイル』だ。ペイルは契約者ーーレオンハルトにすりっと身体をこすりつけた。
……………………………………………………………
舟は川を揺蕩い、篝火でライトアップされたアーチ状の石橋をゆっくりと通り過ぎた。水面に浮かべられた行燈と舟に置かれた灯りが、雪のように白いチェリの花を浮かび上がらせている。
暮夜、簾が上げられた舟の上は肌寒い。もう少し時季を過ごせば夜の風も気持ち良く感じられるようになるだろう。水面を渡る風が肌に触れ、僕はぶるりと身を震わせた。
すでに机に並んだ皿は綺麗に平らげられており、ソースが残るのみとなっている。飲み散らかして倒れた状態のままの酒瓶を立て、こぼれた水分を布巾で拭く。呑めない僕の役目は給仕さんだ。
あれほどあった酒は殆どがレオンハルトの腹の中におさまった。ゴルドさんもシルバさんもけっこう飲み食いしていたみたいだけどレオンハルトには及ばない。竜人の健啖さをナメていた。今日の一日の食事代だけでも凄いことになるだろう。心の中で護衛中の飲食代を出すと言っていたエリオットさんに同情した。今頃くしゃみでもしているかもしれない。
そんな状態だからそろそろこの花見はお開きになるはずだ。にも関わらず両隣には腰を上げそうにないそっくりな二人とでっかい一人が僕を挟み込むように座っている。ゴルドさんとシルバさんは膝を揃えて両足を折り畳み、腰を下ろしてぴしっと背筋を伸ばすという変わった座り方だ。あれで足が痺れないんだろうか。
逆にレオンハルトは片膝を立ててだらしなく座っている。三人に共通しているのは顔色が変わってないことだ。若干双子の目がレオンハルトより据わっているくらいか。
「そういやキュレル山の山賊の討伐はオメェらんとこの冒険者ギルドとメレキオール騎士団が請け負うんだって?」
グラスに残っていたチェリの花びら入りの酒をグイッと呑み干したレオンハルトがふと思い出したように双子に聞いた。
「はい」
「そうなんです」
ここメレキオールの騎士団は、他国の者や旅人が多く流入するこの街を守るのに相応しく、揺るぎない強さを誇る人員を多く揃えているのが特徴で、きっと討伐に出ればすぐに山賊を退治してくれるはずだ。
「現在はこちらが雇った冒険者の斥候が三人ほど山に入っております」
「募集した冒険者の人員もほぼ集まっておりますので、斥候が戻ってきたらすぐに討伐ということになりそうです」
冒険者の斥候は主に偵察や調査の役割を担う。今回の場合、まず斥候が山に入り、探知と探索で山賊の根城を探し出し、発見次第賊の配置、規模、人数、持っている武器など、ありとあらゆる情報を集めて本隊へと持っていく。それを元に騎士団と冒険者ギルドの上層部が討伐の作戦を立案し、攻撃に移る。作戦が成功するか否かは全て斥候の手にかかっていると言っても過言ではない。
王国直下の山に根城を構えた今回の山賊の討伐は本来、王都騎士団がやるものをメレキオール騎士団とメレキオールギルドの冒険者たちが肩代わりするものなので、予算がたんまりと国から出る。もちろん山賊の頭を討ち取った者には別に報奨金が出る。
「あ、そう言えば」
話を変えるように手を打ち鳴らしたのは、左目に片眼鏡があるのでシルバさんだ。
「今回の討伐に『天上の射手』も手伝ってくれるそうで」
「お、何だ。アイツら今こっちにいるのか」
「『天上の射手』?」
手に取った酒瓶はもう空だったようだ。名残惜しそうに瓶を逆さにして振っていたレオンハルトが僕の質問に答えた。
「『天上の射手』はライムライト出身の奴らでな。まだパーティーランクは低いんだが、今注目されてるパーティーの一つだ。それはな……って、あーー、お前、ヴィクターの名前を聞いたことは?」
「ヴィクターってあの英雄と聖女の孫のヴィクター・レイ・フランネルのことだろ? この国でヴィクターの名前を知らないヤツなんていないでしょ」
ヴィクターはレオンハルトと同じくらいこの国では有名な人だ。勇者と聖女が魔王を討伐した話は、絵本や小説や演劇、それこそ親からの寝物語までさまざまな媒体で題材にされている。そんな二人の孫が冒険者になり、ましてやものすごく強くて貴族位も金も持ち、顔も整っているとくれば、有名にならないはずがない。
「あいつは今潜っている迷宮を攻略したら最年少二十一歳でのAランクになることが決まってる。二つ名はそのまんま『英雄の孫』だ。で、そいつが大迷宮エレクタール攻略のためにライムライトに『永遠の英雄』っていうクランハウスを作ってる最中で、自分が目をつけた将来有望な冒険者パーティーを勧誘してるんだ」
ヴィクターが勧誘するほどの冒険者パーティーならさぞかし有望だという証左にもなり、周りも一目置くだろう。
「ロイ率いる『天上の射手』はパーティーランクがまだC級にも関わらずそのクランに誘われてる」
「それはすごい」
レオンハルトによると、『天上の射手』は男性メンバー五人で構成されたパーティー。
リーダーはソロランクB級に上がったばかりの弓士、ロイ・クレイン。その他メンバー四人がソロC級で、前衛が盾役、中衛が魔法剣士、そしてロイを含む二人が弓士、一人が銃士と、後衛が全員遠距離系の飛び道具を使用するというかなり変則的なパーティーだ。『射手』ではなく『射手』と読むのは、『しゃしゅ』には弓を射る人の意味の他に銃を撃つ人も含まれているからだそう。考えられたパーティー名だった。
「ロイの弓の腕は百発百中……とまではいかねぇが百発九十五中くらいの精度で腕がいいんだ。まぁちょいっとだけ難ありなんだが……」
「難って?」
「女性を顔じゃなくおっぱいの大きさで選ぶ」
「……………………最低」
ドン引きだ。レオンハルトも性格に難ありだと思うけど、それよりも下がいた。双子も苦笑している。顔が赤いのは酒のせいか、レオンハルトの発言のせいか。気を取り直すようにゴルドさんが大きく咳払いをした。
「彼らはメレキオールまで商人の護衛依頼で来て、その後つい先日までセイレーン川の水底にある『水宝玉迷宮』に潜っていたので」
「迷宮の攻略報告にメレキオールギルドへ来た時に捕まえて手伝いを要請しました」
ふーーん、と頷きそうになってはたと気付いた。今、水底って言わなかったか?
「は? 水底?」
「はい。迷宮の入り口がセイレーン川の底にあるんですよ」
空のグラスをシルバさんが底を見せるように持ち上げた。
「え、じゃあどうやって水中の迷宮を攻略するんですか?」
迷宮が川の底じゃ息ができないだろうし、そもそもセイレーン川はけっこう水量が多いし、川底まで行くのも大変だろう。
「何でか迷宮の中に入りゃ息ができんだよ」
「不思議ですよね。迷宮はまだまだ解明できない事が多いです」
「ただ、迷宮の入り口がある水底まで行くには川に潜る必要があります」
迷宮探索のために迷宮に入ることを『潜る』と言うが、『水宝玉迷宮』はセイレーン川の水底に入り口があり、文字通り水中に潜らないといけないらしい。
「そこでこれを使います」
ゴルドさんが机の横に置いていたポーチ型のバッグから、チャックが付いた透明な小袋を取り出して僕に手渡した。
「『妖精の涙』です。マシロチョウガイという貝の魔物が生み出すアイテムで、これを一粒飲めば一時間水中で息が出来るようになります」
「『水宝玉迷宮』に潜る冒険者には必須です」
「へえ」
袋の中には三ミーリ(3mm)ほどの大きさの白くて丸い粒が三粒入っていた。
「レオンハルトさまにお酒とお食事を頂いたお礼です。差し上げますのでそのままお持ち下さい」
「え! いいの?」
窺うようにレオンハルトを見遣ると頷いたので、お礼を言ってありがたく頂くことにした。
「ここから先ライムライトに帰るには、数日の間セイレーン川に遡って野宿をしながら進むことになります」
「もし魔物に襲われて水中に引き摺り込まれても、『妖精の涙』があれば安心ですよ」
シルバさん、水中に引き摺り込まれる事になりそうなフラグを立てないでください。
「よっしゃ! じゃあこの場はそろそろお開きにするかぁ」
レオンハルトが立ち上がり、汚れたままの皿やグラスをガチャガチャとマジックバッグに押し込んでいく。いくら中の時間が止まっているとはいえ、汚れ物をそのままバッグに入れるのはいかがなものか……。
レオンハルトは部屋の様子からしてズボラそうだし整理整頓や掃除が苦手のようだ……。洗い物をした事があるのかも甚だ疑問だ。
と、いうことは、だ。
え、もしかしてアレ、後で僕が洗う羽目になるんじゃないか……!?
勘弁してくれ。
その後、想像した通りレオンハルトのあまりの生活能力のなさに、同居する家の炊事洗濯、掃除などの家事を全て僕が取り仕切る事になるのだが、それはまだまだ先の話である。
……………………………………………………………
【おまけの補遺】
(side.レオンハルト、ペイル 従魔契約)
魔獣と契約をするためには、契約者が名前を付けて、魔獣がそれを了承する必要がある。
青白い体表をしたバイコーンは契約者になる竜人に助けてもらって、怪我を治してもらって、ご飯ももらったので、契約に否やはなかった。だけど……。
「よし、今日からお前の名前は『青白き雷の閃光』だ!!」
いや、ダサいし長いよっ!!!!
バイコーンはフイ……っと顔を逸らす。当たり前だが契約は成功しない。
「え、嫌だ? ……う、じゃあ『荒れ狂う青白き雷光』は? え、ダメ? 長いか……。んじゃ短くして『青白き雷光』……え、これも嫌だって?」
バイコーンはあまりの名付けのセンスの無さに、もうこの竜人さんとは契約するのやめよっかなーーとまで思い始めていた。名前を一生懸命考えてくれているのは分かるけれど、街中で「お~~い、ペイルブルー・フラッシュオブライトニング~~」なんて呼ばれるこっちの身にもなってほしい。
う~~ん、う~~んと頭を悩ませる契約者を見て思わずブルルル……と鼻を鳴らす。なんとなく可哀想だから、もう長くなければなんでもいいか、と思った。
「じゃあお前の名前は『ペイル』で」
散々悩んだであろう名前はスッキリしていて、呼ばれても全く恥ずかしくなかった。そう思ったその瞬間、身体が光り輝き、暖かい力がふわりと自分に入って来たのをバイコーンは感じた。
従魔契約の完了だ。
今日から自分の名前は『ペイル』だ。ペイルは契約者ーーレオンハルトにすりっと身体をこすりつけた。
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