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自分の肩越しに蹴りあげられたフェンスが
ガシャッン......‼
とけたたましい音を立てた。
「っ......‼さっきから知らないって何度も繰り返してるんだけど?」
彼女の出したフェンスの音と私の反論の声は常であれば校庭にまで響きそうだけれども、放課後である現在では部活動に励む生徒によってかき消されている。
「体育祭の日に教室にずっといたのはあなただけでしょ? だったら決まりじゃない?」
夕日に照らされた屋上で一人の同級生である少女と見ず知らずの男達によって、私は半ばフェンスに押さえつけられるようにして立っていた。
「私は体育祭係として仕事はこなしていたし、いくつかの種目にも参加していた。確かに私が一番教室を利用していたけれど、他者が誰の目にも触れずに教室内に侵入することは充分あり得るはずだとは考えないの?」
30分はこうしている気がする。
私より少し高い位置にある彼女の顔はうっすらと笑みを浮かべ、まるで虫をいたぶる猫のようだ。
私の前にいるのが彼女だけならば自分でも何とかなったのだろうが少女の周りにいる男達がそれを阻んでいた。
「そんな風な態度でいるから疑われるんじゃないの? 由美のスマホ壊したのあなただって、みんなも思ってるんだから」
彼女....いや、松阪由美はクラスでも中心的な存在だ。やわらかな栗毛色の髪と人形を思わせる大きな瞳。整った顔立ちと華奢な体型はひどく愛らしい。校内で彼女の容姿に不快感を示す人はいないだろう。彼女の後ろでにやにやと嫌な笑みを浮かべている、見知らぬ男達も彼女の取り巻きか何かだろう。
「そろそろ離してくれない? いつまでもこんなことに付き合ってるられるほど私は暇じゃない」
「へぇ~、逃げるんだ? だったらクラスのみんなに言い付けちゃおうかな~ 凛ちゃんが犯人でしたって」
「勝手にしたら? 私にとってはどうでもいい」
「いいの? 凛ちゃんますます独りになっちゃうよ?」
彼女のセリフに一瞬で怒りに頭が真っ白になった。
握りしめた拳が痛い。
(誰のせいでこんなことになってると!!)
私が最初から独りだったわけじゃない。クラスに友達だっていたし、休日に一緒に遊んだりもした。彼女のようにクラスの中心にいたわけじゃないけれど、それなりにみんなと馴染めていたはずだった。
(それなのに....それなのに全部こいつが壊した‼)
いつからだろう、クラスのみんなから余所余所しい態度で接されるようにしてなったのは。
いつからだろう、その余所余所しさがやがて悪意ある行為へとかわっていったのは。
そして彼女がクラスメイトに私をなぶらせて今のようにうっすらと笑みを浮かべていたのは......。
思い出したくもない出来事が頭をよぎり、逃げるように視線を落とした。
私から彼女に何かをした覚えはない。そもそもほとんど面識は無かったはずだ。
私が下を向いていたのに気づいたのだろう。
唇が切れるほど噛み締めた中で、再び彼女の脚が振り上げられたのが視界の端に写った。
バキッッッン‼‼........
これまでと明らかに違う異質の音。
それと同時に背中から圧迫感が消え、体が傾くのを感じる。
さっきまでの激情が、背筋が凍えるほどの恐怖に一瞬で塗りかわった。
彼女のような細い脚で壊せるほどこのフェンスは脆くなどないはずなのに。それとも元々どこか壊れていたのだろうか。
頭のどこかで冷静な自分の声が聞こえる。それでも、相変わらず体は重力に逆らえないまま、傾き続けている。
えっ? と見開いた彼女の顔と、彼女の後ろから見える、驚いたように口をひらく彼等の表情が、スローモーション映像のように鮮明に見える。
本能的に伸ばした手は結局誰にとられるということもなく、反転した大地に沈みかけている夕日を最後に私は意識を失った。
ガシャッン......‼
とけたたましい音を立てた。
「っ......‼さっきから知らないって何度も繰り返してるんだけど?」
彼女の出したフェンスの音と私の反論の声は常であれば校庭にまで響きそうだけれども、放課後である現在では部活動に励む生徒によってかき消されている。
「体育祭の日に教室にずっといたのはあなただけでしょ? だったら決まりじゃない?」
夕日に照らされた屋上で一人の同級生である少女と見ず知らずの男達によって、私は半ばフェンスに押さえつけられるようにして立っていた。
「私は体育祭係として仕事はこなしていたし、いくつかの種目にも参加していた。確かに私が一番教室を利用していたけれど、他者が誰の目にも触れずに教室内に侵入することは充分あり得るはずだとは考えないの?」
30分はこうしている気がする。
私より少し高い位置にある彼女の顔はうっすらと笑みを浮かべ、まるで虫をいたぶる猫のようだ。
私の前にいるのが彼女だけならば自分でも何とかなったのだろうが少女の周りにいる男達がそれを阻んでいた。
「そんな風な態度でいるから疑われるんじゃないの? 由美のスマホ壊したのあなただって、みんなも思ってるんだから」
彼女....いや、松阪由美はクラスでも中心的な存在だ。やわらかな栗毛色の髪と人形を思わせる大きな瞳。整った顔立ちと華奢な体型はひどく愛らしい。校内で彼女の容姿に不快感を示す人はいないだろう。彼女の後ろでにやにやと嫌な笑みを浮かべている、見知らぬ男達も彼女の取り巻きか何かだろう。
「そろそろ離してくれない? いつまでもこんなことに付き合ってるられるほど私は暇じゃない」
「へぇ~、逃げるんだ? だったらクラスのみんなに言い付けちゃおうかな~ 凛ちゃんが犯人でしたって」
「勝手にしたら? 私にとってはどうでもいい」
「いいの? 凛ちゃんますます独りになっちゃうよ?」
彼女のセリフに一瞬で怒りに頭が真っ白になった。
握りしめた拳が痛い。
(誰のせいでこんなことになってると!!)
私が最初から独りだったわけじゃない。クラスに友達だっていたし、休日に一緒に遊んだりもした。彼女のようにクラスの中心にいたわけじゃないけれど、それなりにみんなと馴染めていたはずだった。
(それなのに....それなのに全部こいつが壊した‼)
いつからだろう、クラスのみんなから余所余所しい態度で接されるようにしてなったのは。
いつからだろう、その余所余所しさがやがて悪意ある行為へとかわっていったのは。
そして彼女がクラスメイトに私をなぶらせて今のようにうっすらと笑みを浮かべていたのは......。
思い出したくもない出来事が頭をよぎり、逃げるように視線を落とした。
私から彼女に何かをした覚えはない。そもそもほとんど面識は無かったはずだ。
私が下を向いていたのに気づいたのだろう。
唇が切れるほど噛み締めた中で、再び彼女の脚が振り上げられたのが視界の端に写った。
バキッッッン‼‼........
これまでと明らかに違う異質の音。
それと同時に背中から圧迫感が消え、体が傾くのを感じる。
さっきまでの激情が、背筋が凍えるほどの恐怖に一瞬で塗りかわった。
彼女のような細い脚で壊せるほどこのフェンスは脆くなどないはずなのに。それとも元々どこか壊れていたのだろうか。
頭のどこかで冷静な自分の声が聞こえる。それでも、相変わらず体は重力に逆らえないまま、傾き続けている。
えっ? と見開いた彼女の顔と、彼女の後ろから見える、驚いたように口をひらく彼等の表情が、スローモーション映像のように鮮明に見える。
本能的に伸ばした手は結局誰にとられるということもなく、反転した大地に沈みかけている夕日を最後に私は意識を失った。
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