Tell You SHERLOCK

餅助

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プロローグ

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 滝壺の冷たさを、貴様は知っているか?

 峡谷に一筋の巨大な滝がある。
 日陰でほの暗いそこは、いつだって冷ややかだ。
 天上から落ちる数百キロトンに及ぶ水の塊が飛沫をあげている。岸壁に散弾銃のような水しぶきが吹き付け私の体を穿つ。
 齢50を超えたこの身には、些か酷というものだ。しかし、それも最後だろう。
なのに 、
「なぜだ、なぜ貴様。私を」
「罪を償うのだ。貴方にはその責務がある」
 奴は私を滝壺へ突き落とした。
 その張本人がなぜここで怨敵を助ける。
 滝の岸壁にある枯木を片腕で掴みぶら下がる。そして、もう片方の手で、私の袖口を握り混んでいる。
 しかし、徐々に枯れ木から指が離れていく。
 滝のしぶきが手を滑らせ、私をも支える体の重みが徐々に奴を蝕んでいく。
しかし、死をまじかに迫りそれでも奴は私を真っ直ぐな瞳で見つめる。
 憤りがふつふつと湧き上がる。私は声を大にして叫んだ。
「この私を!最後まで敵と認めず、一犯罪者とするか!それは何にも勝る私への侮蔑だ!」
 岸壁に足をかけ、思い切り掴まれた袖を振りほどいた。
 奴は初めて私に驚きの表情を見せた。あの薄ら笑いと真っ直ぐな瞳が歪んだのならば上々だ。
 悪人として、最上の敵として。私は奴の心に傷を付ける。
 私は天を、やつを仰ぎながら惑星の引力に引かれる。目算、残り3秒。さぁ、悪のカリスマとして最後の幕引きだ。
「地獄で逢おう!シャーロック!」

 背中に冷たく鈍い衝撃が伝わる。
 真っ青で肌を指す冷たい世界に包まれて、私は意識が遠くなる。
冬のライヘンバッハはこうも寂しいのか。

 虚ろな目を閉じ私はゆっくりと意識を散漫させてゆく。
 さて、地獄の沙汰も金次第と言う。あちらではどのような立ち回りをしようかと。プランニングを頭に、意識はついに暗転した。
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