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2章 熊と人
114 ファイト
しおりを挟むファイト!
今日も看護師サロコが患者を鼓舞している
大丈夫ですか
笑顔笑顔!
ファイト!
お大事に!
いつでも待ってますよ!
まるで応援団長のような看護師サロコ
院長のイルネも熟練看護師アユミもサロコのファイトを静観していた
応援、掛け声が医療にどれ程の影響を与えるのか
「ファイト!!」
・・・・
院長のイルネは診療時には極力白衣を着ない
大学病院に勤めていた時に権威が跋扈する恐ろしさを知ったからだ
優秀な医師ゆえに患者と同じ目線、心情的にやや下に入る
医師の持つ職業的ステイタスの一般的解釈からすると、患者を尊敬尊重するくらいでほとほと対等になる
彼の信条だった
その現れが白衣を出来る限り纏わないことだった
熟練看護師アユミとの呼吸の合わせは完全だった
院長イルネは専門は外科だが内科の診察もするし、
整形外科や循環器、幅広く対応する
新米医師ミカン
総合内科専門医
皮膚科・アレルギー科・小児科
子供好き
サロコ
新人看護師
・・・・
院長イルネが白衣を着た
手術の承諾を得る時
同意書を渡す必要がある時は白を衣した
この時は医師の姿を現す方が安心感を齎すからだ
「先生宜しくお願いします」
「ええ、ハタさん。背中の粉瘤を切開して取り除きますからね。こちらは手術同意書です」
「はい、今書けば宜しいですか」
「今でも、持ち帰っていただいでも構いません。
手術当日でもいいですよ、来週の土曜日の9時ですね」
「はい、おかあちゃんどうしよう」
「今書いちゃいなさい」
「うん」
ハタが同意書に署名する
「先生宜しくお願いします」
「はい」
「先生、私も息切れが最近激しくて。階段上った時とか」
「そうですか。診ましょうか。検査しましょうか」
「うーん。でも、大丈夫かしら」
「来週ご主人の手術の日に一緒に来られます?」
「ええ、付き添いしようと思ってます」
「ウタさんも検査しましょうか。心臓と血液検査」
「どうしようかしら」
ハタが粉瘤切除手術の同意書を提出した
「かあちゃん、検査しよう。俺はかあちゃんがいなきゃ生きていけねぇべ」
「うーん、私は大丈夫だと思うけどね」
「先生宜しくお願いします。かあちゃん辛くても自分から言わないんです」
「はい、ではウタさんも同日検査の予約入れておきます。看護師のアユミさんが対応しますからね」
「そうですか」
「はい。2人でお越しください」
「ファイト!!」
・・・・
「はーい、あーん」
「あがっ」
「はい、ライトつけますよ」
「お前が光るな!」
「はい、スケーリングしますよ」
「ふう」
「お疲れ様でした、アロヤさん」
「なあ、ポルカ」
「はい」
「次からあの娘にチェンジしてくれ」
「ダメです」
「なんでだ!」
「キャバクラではないので指名はできません。アロヤさんの担当はワタシです」
「クウ!」
ふぁいとです。
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