風紀委員長様は今日もお仕事

白光猫(しろみつにゃん)

文字の大きさ
20 / 59

風紀委員長様は双子に絡まれる(生徒会室編)

しおりを挟む
「……藤堂先輩と会長って、そんなに仲が良かったのぉ?」
「びっくりした。知らなかったよぉ」

 間延びした声で同時に話しかけてきたのは二年の穂坂だった。
 そこまでは分かる。ただ【どちらが】庶務で【どちらが】広報なのかはさっぱり分からん。どちらも顔が同じだからだ。こいつらは一卵性の双子だそうだ。
 一般生徒からは、下の名前で呼ばれているようだが……瑞貴がいないとそれも分からん。

 ふたりとも、ほっそりとして背も低く、目も睫毛バッシバシのクリクリでまさに王道の美少年といった容姿だ。しかし弱弱しい雰囲気はまるでなく、動物に例えるなら勝気な小型犬といったところか。

 どうでもいいが、俺はそこを通りたいんだ。いい加減邪魔だからどいて欲しい。

「いつもは佐藤が全部答えちゃうから、よくわからなかったけどぉ」
「藤堂先輩は、生徒会のこと嫌いじゃないんだぁ」
「ねえねえ、委員長は会長とどれくらい仲がいいのぉ?」
「会長とはもうシタのぉ?」

 おいおい、調子に乗った小型犬どもが、珍しく足下にじゃれついてきたぞ。
 質問の内容はおぞましくて、答える気にもなれないが。

 ここは生徒会室で、双子にとっては味方だらけの自分たちのテリトリーだ。
 いつもは二匹とも如月の影に隠れているくせに、俺と如月のくだけた会話を聞いて、気が大きくなったらしい。

「あっ……そうだ、ゲームしようよ。風紀委員長なら僕たちがどっちだか当然分かるよねぇ?」
「そうだよ。ほら目撃証言とかで見分けがつかなかったら冤罪になっちゃうしぃ」

 ……くだらない。こいつらの遊びに付き合いきれるか。俺は忙しい。

「ゲームは参加者が楽しめなければ意味がないだろう。野郎二人を見分けたところで何だというんだ。それに先程からのその口調も気に入らない。上級生相手に下種な質問を浴びせて、挑発するのが目的ならとうに成功しているぞ。そんなに俺とやりあいたいなら期待には応えてやるが、俺は売られた喧嘩はとことん買う主義だ。覚悟しておけ。それで? 他に何もないならそこをどいてもらおうか。……ふたりまとめて目障りだ」
「――っ!」

 思ったことをそのまま口に出してみると、小型犬が一気に黙りこんでしまった。
 少し吠えられて怯えるくらいなら、最初から噛みついてくるな。

「……ふたりとも、藤堂先輩はお忙しいのですから、じゃれつくのはそれくらいになさい」

 すると、副会長が苦笑しながら口を挟んできた。
 味方からの助けと、【じゃれつく】という力の抜ける言葉に、双子の表情からも緊張が少し抜けたようだ。明らかにホッとしている。

「申し訳ありません。このふたりは好奇心の塊で、後先考えずにすぐに跳びついてしまう悪い癖があるんです。あとで叱っておきますから」

 あの一件以来、塚崎の俺に対する態度が、ほんの少しだが親しげになった気がする。

 プリン効果は絶大だな。
 以前よりも、ずっと良い顔をしている。

「塚崎」
「はい」
「明日の昼に時間とれるか?」
「え? あっ、はい……空いてます……けど?」
「なら食堂で飯でも食わないか。少しおまえと話がしてみたい」
「……は?」
「迷惑なら無理にとは言わないが……」
「い、いえっ! 大丈夫です!」
「そうか、良かった。……如月、明日は副会長を少し借りるぞ」
「……」

 返事が無いので振り向けば、机で頭を抱えている如月の姿があった。

「……俺とのデートは断りやがったくせに……伊織のどこが藤堂の琴線に触れたんだ……分からねえ……あいつの思考回路がさっぱりよめねえ……攻略しようがねえ」

 陰鬱な表情で何かをブツブツと呟いているようだが、こちらまでは聞こえなかった。

「……邪魔したな」

 とりあえず用は済んだので、如月の返事を待たずに生徒会室をあとにする。

 如月の奴……ずいぶんと悩んでいる様子だった。
 ウチと同じで、生徒会もいろいろと難題を抱えているに違いない。
 
 そっとしておこう。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。

山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。 お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。 サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。

俺にだけ厳しい幼馴染とストーカー事件を調査した結果、結果、とんでもない事実が判明した

あと
BL
「また物が置かれてる!」 最近ポストやバイト先に物が贈られるなどストーカー行為に悩まされている主人公。物理的被害はないため、警察は動かないだろうから、自分にだけ厳しいチャラ男幼馴染を味方につけ、自分たちだけで調査することに。なんとかストーカーを捕まえるが、違和感は残り、物語は意外な方向に…? ⚠️ヤンデレ、ストーカー要素が含まれています。 攻めが重度のヤンデレです。自衛してください。 ちょっと怖い場面が含まれています。 ミステリー要素があります。 一応ハピエンです。 主人公:七瀬明 幼馴染:月城颯 ストーカー:不明 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 内容も時々サイレント修正するかもです。 定期的にタグ整理します。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

処理中です...