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風紀委員長様は双子に絡まれる(生徒会室編)
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「……藤堂先輩と会長って、そんなに仲が良かったのぉ?」
「びっくりした。知らなかったよぉ」
間延びした声で同時に話しかけてきたのは二年の穂坂だった。
そこまでは分かる。ただ【どちらが】庶務で【どちらが】広報なのかはさっぱり分からん。どちらも顔が同じだからだ。こいつらは一卵性の双子だそうだ。
一般生徒からは、下の名前で呼ばれているようだが……瑞貴がいないとそれも分からん。
ふたりとも、ほっそりとして背も低く、目も睫毛バッシバシのクリクリでまさに王道の美少年といった容姿だ。しかし弱弱しい雰囲気はまるでなく、動物に例えるなら勝気な小型犬といったところか。
どうでもいいが、俺はそこを通りたいんだ。いい加減邪魔だからどいて欲しい。
「いつもは佐藤が全部答えちゃうから、よくわからなかったけどぉ」
「藤堂先輩は、生徒会のこと嫌いじゃないんだぁ」
「ねえねえ、委員長は会長とどれくらい仲がいいのぉ?」
「会長とはもうシタのぉ?」
おいおい、調子に乗った小型犬どもが、珍しく足下にじゃれついてきたぞ。
質問の内容はおぞましくて、答える気にもなれないが。
ここは生徒会室で、双子にとっては味方だらけの自分たちのテリトリーだ。
いつもは二匹とも如月の影に隠れているくせに、俺と如月のくだけた会話を聞いて、気が大きくなったらしい。
「あっ……そうだ、ゲームしようよ。風紀委員長なら僕たちがどっちだか当然分かるよねぇ?」
「そうだよ。ほら目撃証言とかで見分けがつかなかったら冤罪になっちゃうしぃ」
……くだらない。こいつらの遊びに付き合いきれるか。俺は忙しい。
「ゲームは参加者が楽しめなければ意味がないだろう。野郎二人を見分けたところで何だというんだ。それに先程からのその口調も気に入らない。上級生相手に下種な質問を浴びせて、挑発するのが目的ならとうに成功しているぞ。そんなに俺とやりあいたいなら期待には応えてやるが、俺は売られた喧嘩はとことん買う主義だ。覚悟しておけ。それで? 他に何もないならそこをどいてもらおうか。……ふたりまとめて目障りだ」
「――っ!」
思ったことをそのまま口に出してみると、小型犬が一気に黙りこんでしまった。
少し吠えられて怯えるくらいなら、最初から噛みついてくるな。
「……ふたりとも、藤堂先輩はお忙しいのですから、じゃれつくのはそれくらいになさい」
すると、副会長が苦笑しながら口を挟んできた。
味方からの助けと、【じゃれつく】という力の抜ける言葉に、双子の表情からも緊張が少し抜けたようだ。明らかにホッとしている。
「申し訳ありません。このふたりは好奇心の塊で、後先考えずにすぐに跳びついてしまう悪い癖があるんです。あとで叱っておきますから」
あの一件以来、塚崎の俺に対する態度が、ほんの少しだが親しげになった気がする。
プリン効果は絶大だな。
以前よりも、ずっと良い顔をしている。
「塚崎」
「はい」
「明日の昼に時間とれるか?」
「え? あっ、はい……空いてます……けど?」
「なら食堂で飯でも食わないか。少しおまえと話がしてみたい」
「……は?」
「迷惑なら無理にとは言わないが……」
「い、いえっ! 大丈夫です!」
「そうか、良かった。……如月、明日は副会長を少し借りるぞ」
「……」
返事が無いので振り向けば、机で頭を抱えている如月の姿があった。
「……俺とのデートは断りやがったくせに……伊織のどこが藤堂の琴線に触れたんだ……分からねえ……あいつの思考回路がさっぱりよめねえ……攻略しようがねえ」
陰鬱な表情で何かをブツブツと呟いているようだが、こちらまでは聞こえなかった。
「……邪魔したな」
とりあえず用は済んだので、如月の返事を待たずに生徒会室をあとにする。
如月の奴……ずいぶんと悩んでいる様子だった。
ウチと同じで、生徒会もいろいろと難題を抱えているに違いない。
そっとしておこう。
「びっくりした。知らなかったよぉ」
間延びした声で同時に話しかけてきたのは二年の穂坂だった。
そこまでは分かる。ただ【どちらが】庶務で【どちらが】広報なのかはさっぱり分からん。どちらも顔が同じだからだ。こいつらは一卵性の双子だそうだ。
一般生徒からは、下の名前で呼ばれているようだが……瑞貴がいないとそれも分からん。
ふたりとも、ほっそりとして背も低く、目も睫毛バッシバシのクリクリでまさに王道の美少年といった容姿だ。しかし弱弱しい雰囲気はまるでなく、動物に例えるなら勝気な小型犬といったところか。
どうでもいいが、俺はそこを通りたいんだ。いい加減邪魔だからどいて欲しい。
「いつもは佐藤が全部答えちゃうから、よくわからなかったけどぉ」
「藤堂先輩は、生徒会のこと嫌いじゃないんだぁ」
「ねえねえ、委員長は会長とどれくらい仲がいいのぉ?」
「会長とはもうシタのぉ?」
おいおい、調子に乗った小型犬どもが、珍しく足下にじゃれついてきたぞ。
質問の内容はおぞましくて、答える気にもなれないが。
ここは生徒会室で、双子にとっては味方だらけの自分たちのテリトリーだ。
いつもは二匹とも如月の影に隠れているくせに、俺と如月のくだけた会話を聞いて、気が大きくなったらしい。
「あっ……そうだ、ゲームしようよ。風紀委員長なら僕たちがどっちだか当然分かるよねぇ?」
「そうだよ。ほら目撃証言とかで見分けがつかなかったら冤罪になっちゃうしぃ」
……くだらない。こいつらの遊びに付き合いきれるか。俺は忙しい。
「ゲームは参加者が楽しめなければ意味がないだろう。野郎二人を見分けたところで何だというんだ。それに先程からのその口調も気に入らない。上級生相手に下種な質問を浴びせて、挑発するのが目的ならとうに成功しているぞ。そんなに俺とやりあいたいなら期待には応えてやるが、俺は売られた喧嘩はとことん買う主義だ。覚悟しておけ。それで? 他に何もないならそこをどいてもらおうか。……ふたりまとめて目障りだ」
「――っ!」
思ったことをそのまま口に出してみると、小型犬が一気に黙りこんでしまった。
少し吠えられて怯えるくらいなら、最初から噛みついてくるな。
「……ふたりとも、藤堂先輩はお忙しいのですから、じゃれつくのはそれくらいになさい」
すると、副会長が苦笑しながら口を挟んできた。
味方からの助けと、【じゃれつく】という力の抜ける言葉に、双子の表情からも緊張が少し抜けたようだ。明らかにホッとしている。
「申し訳ありません。このふたりは好奇心の塊で、後先考えずにすぐに跳びついてしまう悪い癖があるんです。あとで叱っておきますから」
あの一件以来、塚崎の俺に対する態度が、ほんの少しだが親しげになった気がする。
プリン効果は絶大だな。
以前よりも、ずっと良い顔をしている。
「塚崎」
「はい」
「明日の昼に時間とれるか?」
「え? あっ、はい……空いてます……けど?」
「なら食堂で飯でも食わないか。少しおまえと話がしてみたい」
「……は?」
「迷惑なら無理にとは言わないが……」
「い、いえっ! 大丈夫です!」
「そうか、良かった。……如月、明日は副会長を少し借りるぞ」
「……」
返事が無いので振り向けば、机で頭を抱えている如月の姿があった。
「……俺とのデートは断りやがったくせに……伊織のどこが藤堂の琴線に触れたんだ……分からねえ……あいつの思考回路がさっぱりよめねえ……攻略しようがねえ」
陰鬱な表情で何かをブツブツと呟いているようだが、こちらまでは聞こえなかった。
「……邪魔したな」
とりあえず用は済んだので、如月の返事を待たずに生徒会室をあとにする。
如月の奴……ずいぶんと悩んでいる様子だった。
ウチと同じで、生徒会もいろいろと難題を抱えているに違いない。
そっとしておこう。
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