32 / 59
風紀委員長様はイベントを憂慮する(風紀委員会室編)
しおりを挟む
逃げる側と、追いかける側……どちらが楽だろうか。
「そりゃあもちろん、追いかける側じゃないですか? ヤル気が無い奴は、そこら辺で寝てればいいんですから。逃げる側は大変ですよ。野太い声の野郎どもに、こっちだ―あっちだ―って、ワンワン吠えられながら追い詰められて、挙句の果てには、汗まみれの男に抱き着かれるんですから、トラウマにもなります。なにが歓迎イベントですか。鬼ごっこなんて可愛いもんじゃない。キツネ狩りですよ、あんなもん」
「瑞貴はトラウマになったのか?」
「誰かさんのおかげで、いまだに夜うなされます」
……それは可哀想に。
「いつでも添い寝くらいしてやるぞ」
「いや、あんたが原因だってずっと言ってるでしょうが。やられた方は忘れませんから。私が木に登って休んでいたら、【ここにニャンコがいます】って、あんた矢印付きで、根本の地面へ書いていったでしょうっ! しかも上から見えないように死角にっ!」
「ネコが上手に木登りしてたら、みんなに自慢したくならないか?」
「なりませんっ!」
「それはともかく……」
「ともかくじゃないっ!」
「今年も鬼ごっこだとしたら、俺はまた追い掛け回されるのか……たまには追いかけてみたいものだ」
新入生歓迎イベントの鬼ごっこは、新入生と各委員会の役員、そして人気ランキングの生徒で執り行われる。
鬼は新入生の中からクジ引きで選出され、捕まえた生徒数に比例した参加賞が貰える。逆に追われる側の生徒は、捕まらない時間が長ければ長いほど参加賞の景品がグレードアップしていく。最後まで逃げ切った生徒には、生徒会から特別賞が贈られる。
鬼は特殊な手袋を嵌め、逃げる側はセンサーの付いたベストを着用する。鬼の手袋がベストに触れると、捕獲データが本部へ送られ、ベストの前後に付けられたランプが、赤く点滅する。脱落したのにいつまでも体育館へ戻らない生徒がいれば、見回っている風紀委員が、本部の指示で確保に向かう。その時点で景品もリセットされる。
さらに、上級生を捕まえた鬼には、生徒会からの特別賞の他に、その上級生へ向けて、壇上で罰ゲームを命じるという下剋上な特典も与えられる。いわゆる王様ゲームの王様になれるのだ。これを目当てに鬼になりたがるものが多い。
その場限りのおふざけなので、ポッキーゲームやコスプレ、お姫様抱っこや、ハグやキスなど……同性同士では見るに堪えないものが、生徒会により用意されているのだが、「むしろご褒美です。いただきます!」とばかりに盛り上がってしまうのが、この学園の恐ろしい所なのである。
ゲーム中の司会進行や実況中継は放送委員会が執り行い、本部運営は風紀委員が中心となる。
校内にはカメラが何台も配置され、インタビュアーも散っている。鬼ごっこ中の様子は、実況中継とともに全校生徒の部屋へと生配信される。
ただし閉会式は配信されず、全校生徒が体育館へ集合し、野次馬となって表彰式や王様ゲームを盛り上げる。
人気者の上級生は、閉会式で公開処刑に合わないためにも、最後まで逃げ切らなければならない。しかし誰も捕まらないのも興ざめなので、上級生同士で裏切り、仲間を差し出す傾向にある。放送委員が総合的に判断し、役員の居場所のヒントを校内放送でバラ撒くときもある。
例えば、去年逃げ損ねた塚崎は、如月に人身御供として差し出された一人だ。
壇上でセーラー〇ーンのコスプレをさせられ、月にかわって本人がお仕置きされた。会場は大盛り上がりで、写真も飛ぶように売れたという。
「今年は、例のお騒がせ転校生も参加しますから、なにかと面倒そうですね。アレの取り巻きも曲者揃いですし」
「せいぜい頑張って指揮してくれ。俺は逃げるのに精いっぱいだ」
「風紀の威厳を保つためにも、必ず逃げ切ってくださいよ」
「……やはりおまえも参加するか?」
「謹んでお断りさせていただきます」
瑞貴のニコニコが止まらない。
そんなに心待ちにしているのか、そうかそうか……。
俺が罰ゲームを受ける時には、瑞貴も逆指名して巻き込んでやろう。
秘かにそう決めたときに、胸元のスマホが振動した。
開いてみれば、如月からのメールで、
”今夜メシいい?”
とシンプルに表示されている。
明日は休みだし、別に用事もないので、
”大丈夫”
と返事しておいた。
……今夜の夕飯は何にしようか。
「そりゃあもちろん、追いかける側じゃないですか? ヤル気が無い奴は、そこら辺で寝てればいいんですから。逃げる側は大変ですよ。野太い声の野郎どもに、こっちだ―あっちだ―って、ワンワン吠えられながら追い詰められて、挙句の果てには、汗まみれの男に抱き着かれるんですから、トラウマにもなります。なにが歓迎イベントですか。鬼ごっこなんて可愛いもんじゃない。キツネ狩りですよ、あんなもん」
「瑞貴はトラウマになったのか?」
「誰かさんのおかげで、いまだに夜うなされます」
……それは可哀想に。
「いつでも添い寝くらいしてやるぞ」
「いや、あんたが原因だってずっと言ってるでしょうが。やられた方は忘れませんから。私が木に登って休んでいたら、【ここにニャンコがいます】って、あんた矢印付きで、根本の地面へ書いていったでしょうっ! しかも上から見えないように死角にっ!」
「ネコが上手に木登りしてたら、みんなに自慢したくならないか?」
「なりませんっ!」
「それはともかく……」
「ともかくじゃないっ!」
「今年も鬼ごっこだとしたら、俺はまた追い掛け回されるのか……たまには追いかけてみたいものだ」
新入生歓迎イベントの鬼ごっこは、新入生と各委員会の役員、そして人気ランキングの生徒で執り行われる。
鬼は新入生の中からクジ引きで選出され、捕まえた生徒数に比例した参加賞が貰える。逆に追われる側の生徒は、捕まらない時間が長ければ長いほど参加賞の景品がグレードアップしていく。最後まで逃げ切った生徒には、生徒会から特別賞が贈られる。
鬼は特殊な手袋を嵌め、逃げる側はセンサーの付いたベストを着用する。鬼の手袋がベストに触れると、捕獲データが本部へ送られ、ベストの前後に付けられたランプが、赤く点滅する。脱落したのにいつまでも体育館へ戻らない生徒がいれば、見回っている風紀委員が、本部の指示で確保に向かう。その時点で景品もリセットされる。
さらに、上級生を捕まえた鬼には、生徒会からの特別賞の他に、その上級生へ向けて、壇上で罰ゲームを命じるという下剋上な特典も与えられる。いわゆる王様ゲームの王様になれるのだ。これを目当てに鬼になりたがるものが多い。
その場限りのおふざけなので、ポッキーゲームやコスプレ、お姫様抱っこや、ハグやキスなど……同性同士では見るに堪えないものが、生徒会により用意されているのだが、「むしろご褒美です。いただきます!」とばかりに盛り上がってしまうのが、この学園の恐ろしい所なのである。
ゲーム中の司会進行や実況中継は放送委員会が執り行い、本部運営は風紀委員が中心となる。
校内にはカメラが何台も配置され、インタビュアーも散っている。鬼ごっこ中の様子は、実況中継とともに全校生徒の部屋へと生配信される。
ただし閉会式は配信されず、全校生徒が体育館へ集合し、野次馬となって表彰式や王様ゲームを盛り上げる。
人気者の上級生は、閉会式で公開処刑に合わないためにも、最後まで逃げ切らなければならない。しかし誰も捕まらないのも興ざめなので、上級生同士で裏切り、仲間を差し出す傾向にある。放送委員が総合的に判断し、役員の居場所のヒントを校内放送でバラ撒くときもある。
例えば、去年逃げ損ねた塚崎は、如月に人身御供として差し出された一人だ。
壇上でセーラー〇ーンのコスプレをさせられ、月にかわって本人がお仕置きされた。会場は大盛り上がりで、写真も飛ぶように売れたという。
「今年は、例のお騒がせ転校生も参加しますから、なにかと面倒そうですね。アレの取り巻きも曲者揃いですし」
「せいぜい頑張って指揮してくれ。俺は逃げるのに精いっぱいだ」
「風紀の威厳を保つためにも、必ず逃げ切ってくださいよ」
「……やはりおまえも参加するか?」
「謹んでお断りさせていただきます」
瑞貴のニコニコが止まらない。
そんなに心待ちにしているのか、そうかそうか……。
俺が罰ゲームを受ける時には、瑞貴も逆指名して巻き込んでやろう。
秘かにそう決めたときに、胸元のスマホが振動した。
開いてみれば、如月からのメールで、
”今夜メシいい?”
とシンプルに表示されている。
明日は休みだし、別に用事もないので、
”大丈夫”
と返事しておいた。
……今夜の夕飯は何にしようか。
63
あなたにおすすめの小説
国民的アイドルの元ライバルが、俺の底辺配信をなぜか認知している
逢 舞夏
BL
「高校に行っても、お前には負けないからな!」
「……もう、俺を追いかけるな」
中三の卒業式。幼馴染であり、唯一無二のライバルだった蓮田深月(はすだ みつき)にそう突き放されたあの日から、俺の時間は止まったままだ。
あれから15年。深月は国民的アイドルグループのセンターとして芸能界の頂点に立ち、俺、梅本陸(うめもと りく)は、アパートでコンビニのサラミを齧る、しがない30歳の社畜になった。
誰にも祝われない30歳の誕生日。孤独と酒に酔った勢いで、俺は『おでん』という名の猫耳アバターを被り、VTuberとして配信を始めた。
どうせ誰も来ない。チラ裏の愚痴配信だ。
そう思っていた俺の画面を、見たことのない金額の赤スパ(投げ銭)が埋め尽くした。
『K:¥50,000 誕生日おめでとう。いい声だ、もっと話して』
『K』と名乗る謎の太客。
【執着強めの国民的アイドル】×【酒飲みツンデレおじさんV】
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる