4 / 39
王太子
しおりを挟む
『……何か御用でしょうか?』
私は切羽詰まっていたので、話しかけてみることにしました。
いまだに父様たちは帰ってこないし、突然知らない神獣たちが訪ねてくるし、もしかしたらこの三頭が、何か事情を知っているかもしれません。
関係なかったら早々にお帰り願いましょう。いまは父様たちのことが最優先です。
それにしても。
お~い。うおぉ~い。
三頭とも、さっきからずっとだんまりです。
ぽやっとした表情のまま、ちっとも動きません。一体どうしたのでしょう?
『何か・御用・でしょうか?』
今度は、少し声量を上げて話しかけてみました。
三頭の肩がビクッと震えたあと、ようやく瞳に生気が戻ってきました。
よくわかりませんが、お帰りなさい。
『……あ……失礼しました。その……あなたが想像以上に……美しく……て……』
真ん中の綺麗な青い目の神獣が、頬を赤らめて、片手で口を押えながら答えてくれました。でも声がくぐもっていて、語尾がよく聞き取れなかったです。
あなたがあまりにも……なに?
あまりにも【変顔】とか?
徹夜明けの顔が酷すぎて、呆れられてしまったのでしょうか。こちらから聞き返す勇気がありません。
私の心の平穏のためにも、深く掘り下げることはやめておきます。
『何か御用でしょうか? 父様のお知り合いのかたですか?』
『いいえ違います。私はあなたのお母様の知り合いです。はじめましてイレーヌ殿』
え? 母様の?
驚く私をみて、青目(あおめ)さんの顔がふわっとほころびました。
父様と母様以外から、こんなに柔らかな笑顔を向けられたのは初めてです。森の神獣たちは、甘えて身体をこすり付けることはあっても、口角を上げて笑うようなことはありません。目元が少し和らぐ程度です。
不意の笑顔のおかげで、私の緊張も少しずつほぐれてきました。
母様のお知り合いの方なら、父様のことを相談しても大丈夫かな?
『私の名は、アシュラウル=ログーザと申します。この森の隣にあるログーザ国の王太子です』
『……』
『後ろのふたりは護衛の騎士です。剣を携えてはおりますが、あなたに危害を加えることは決してありません。あなたのお母様とも顔見知りで、とても信頼のおける者たちです。私たちが話している間、見張りとして家の近くに控えることをお許しいただけますでしょうか?』
『……』
『……あの、イレーヌ殿? 私の神語(シンゴ)はうまく伝わっておりますでしょうか? もしや人語(ジンゴ)の方がよろしかったですか? ログーザ語ならば話せるのですが』
途方に暮れて見上げるばかりの私に、青目さんが心配そうに話しかけてくれています。
どうしよう。
知らない単語が多すぎて、何を言われているのか全然分からない。
『それともお父様のことを心配されているのでしょうか? それならばご無事ですからどうかご安心ください。いまもご両親があなたの将来について話し合われているところです』
父様が無事? しかも母様と一緒なの? 嬉しい!
ひと晩かかえていた不安が、身体の中で一気に溶けて流れでていきました。
途端に笑顔全開になった私に、青目さんも嬉しそうにひとつ頷いてくれます。細められた青い瞳が、本当に綺麗ですね。
そうだ。気になっていたことが、もうひとつ残っていました。
こちらもこの勢いに乗って、一気に解決してしまいましょう!
『あの、【王太子】ってなんですか?』
あれ?
三頭のお顔が、ピキッと固まってしまいました。
どうしたのでしょう?
あっ、立ち話もなんですから、どうぞ中にお入りください。
私は切羽詰まっていたので、話しかけてみることにしました。
いまだに父様たちは帰ってこないし、突然知らない神獣たちが訪ねてくるし、もしかしたらこの三頭が、何か事情を知っているかもしれません。
関係なかったら早々にお帰り願いましょう。いまは父様たちのことが最優先です。
それにしても。
お~い。うおぉ~い。
三頭とも、さっきからずっとだんまりです。
ぽやっとした表情のまま、ちっとも動きません。一体どうしたのでしょう?
『何か・御用・でしょうか?』
今度は、少し声量を上げて話しかけてみました。
三頭の肩がビクッと震えたあと、ようやく瞳に生気が戻ってきました。
よくわかりませんが、お帰りなさい。
『……あ……失礼しました。その……あなたが想像以上に……美しく……て……』
真ん中の綺麗な青い目の神獣が、頬を赤らめて、片手で口を押えながら答えてくれました。でも声がくぐもっていて、語尾がよく聞き取れなかったです。
あなたがあまりにも……なに?
あまりにも【変顔】とか?
徹夜明けの顔が酷すぎて、呆れられてしまったのでしょうか。こちらから聞き返す勇気がありません。
私の心の平穏のためにも、深く掘り下げることはやめておきます。
『何か御用でしょうか? 父様のお知り合いのかたですか?』
『いいえ違います。私はあなたのお母様の知り合いです。はじめましてイレーヌ殿』
え? 母様の?
驚く私をみて、青目(あおめ)さんの顔がふわっとほころびました。
父様と母様以外から、こんなに柔らかな笑顔を向けられたのは初めてです。森の神獣たちは、甘えて身体をこすり付けることはあっても、口角を上げて笑うようなことはありません。目元が少し和らぐ程度です。
不意の笑顔のおかげで、私の緊張も少しずつほぐれてきました。
母様のお知り合いの方なら、父様のことを相談しても大丈夫かな?
『私の名は、アシュラウル=ログーザと申します。この森の隣にあるログーザ国の王太子です』
『……』
『後ろのふたりは護衛の騎士です。剣を携えてはおりますが、あなたに危害を加えることは決してありません。あなたのお母様とも顔見知りで、とても信頼のおける者たちです。私たちが話している間、見張りとして家の近くに控えることをお許しいただけますでしょうか?』
『……』
『……あの、イレーヌ殿? 私の神語(シンゴ)はうまく伝わっておりますでしょうか? もしや人語(ジンゴ)の方がよろしかったですか? ログーザ語ならば話せるのですが』
途方に暮れて見上げるばかりの私に、青目さんが心配そうに話しかけてくれています。
どうしよう。
知らない単語が多すぎて、何を言われているのか全然分からない。
『それともお父様のことを心配されているのでしょうか? それならばご無事ですからどうかご安心ください。いまもご両親があなたの将来について話し合われているところです』
父様が無事? しかも母様と一緒なの? 嬉しい!
ひと晩かかえていた不安が、身体の中で一気に溶けて流れでていきました。
途端に笑顔全開になった私に、青目さんも嬉しそうにひとつ頷いてくれます。細められた青い瞳が、本当に綺麗ですね。
そうだ。気になっていたことが、もうひとつ残っていました。
こちらもこの勢いに乗って、一気に解決してしまいましょう!
『あの、【王太子】ってなんですか?』
あれ?
三頭のお顔が、ピキッと固まってしまいました。
どうしたのでしょう?
あっ、立ち話もなんですから、どうぞ中にお入りください。
11
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。
オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる