だんじょんきーぱー

小目出鯛太郎

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9話 勇者が出現したですと!?

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「…くっ。では私を抜きで3人で茶会を楽しんだと言う事ですね」
「…くっ。実力者であるこの俺を差し置いて魔王様と茶会、だと?」

あ、この二人勇者とかに負けたら「くっ…殺せ」とか言っちゃうクッコロ属性とかになるのかなぁ…なんて縁起の悪いこと思っちゃいけないか。仲間なんだから仲良くできないのかな。なんだか魔王が面倒くさがるのが解る気がしてきた。

最初に絡んで来たのがケンタウロス一族のケンタさんで次のがお約束のカースだ。

ケンタさんは、うん。下半身が白馬の見事なケンタウロスだった。顔がお貴族様っぽく見えるのは高い鼻梁と細く整った眉、それから優雅でゴージャスなブロンドカールのせいかもしれない。
唇を噛んでこっちを睨むのはやめてー。
浮気された本妻が不倫相手を睨みつけるようなその目つきはやめてぇ。刺されそう。



新たに俺の専属護衛になってくれたミノタンがこっそり後ろから囁く。
「ケンタの名前はケンタルティーヌって言うんですけどネ、そう呼ぶと怒っちゃうので注意してください」
「ケンタッキータルタルソースみたいな名前だねぇ」
あ、ついうっかり口に出してしまった。
ケンタさんがバーンとテーブルを叩く。

「くっ、黙れ牛め、余計なことを!私を馬鹿にしているのですか。そんな風に呼んで良いのは私の魔王様だけです」
「私のが余計だ馬風情が」

カースが妙な所で細かく突っ込む。
「おだまりなさい、魔王様に乗られてこそ馬の真髄」
「生意気な馬小僧め勝負だ、馬肉スライスにしてやる」
「ええ、今日こそ返り討ちです粕汁にしてやりますよ。勝負だ」

カースの武器はあのデスクロウで、ケンタさんの獲物は三叉槍トライデントだ。うわぁちょっと格好良い。
その三叉槍がテーブルの上のお菓子と茶器を薙ぎ払う前に、稲妻のような速さでミノタンが二人をドアの外に蹴り?摘み?放り出した。
俺の耳にはパタンとドアが閉まる音と、ミノタンが微笑みながらするりと牛頭巾を外してぱんぱんと手を打ち埃を払う様子しか見えなかった。
ミ、ミノタン実は凄かったんだね。やだー怖かったぁなんてくねくねしてるけど。あの二人を瞬時に廃除できるなんて。



「プリリンちゃんと一緒にお菓子を作ったのよ、こっちはダンジョン様をイメージしたアタシの自信作なの」
ミノタンは二人の存在を気持ち良いほどまるっと無視していそいそと蓋付きのお皿を取り出した。
ミノタン自信作はパウンドケーキだった。チェリーが二つ並んでいる。
ただその並んでいる位置と形が…。
いや、みなまで言うまい。ちっちゃくて可愛いケーキだ。

「それから、こっちが黒いダイヤなんて呼ばれる黒無花果くろいちじくを使用して魔王様をイメージしたパウンドケーキなの、会心作なのょ。皮が薄くてねっとり甘くて美味しいのょ。でも黒無花果って栽培が難しくってねぇ…」
黒い無花果が、特殊な形をしたパウンドケーキの端に2個並んでいる。

「どちらも先っぽから齧るなり、たまたまから口に含んでもらっても美味しいと思うのよ」
ミノタンはちゅぱっとほの黒く太いケーキの先端を咥えた。絵面えずらがヤバい。通報されそうだ。


こんなのを塔で作っておやつに出して、プリリンさんが食べるのを見たら鼻血を出して卒倒する若者が続出しちゃうよ。ついうっかり違うものもでちゃうよ。


形はアレだけど香りは良い。俺は小さなパウンドケーキを口にした。先端をがぶっと噛むと、表面はさっくりとした食感でほのかにバターの風味がする。そしてとろりとミルククリームが…。
手で持って食べてはいけなかったのか中に詰まっていたミルククリームがぴゅって飛んだ。

「あら、やだわ、ダンジョン様…まるで……顔射されちゃったみたい…キャッ」


!?
L(°Д° ;)/

へ!?
今俺の視界を赤いものがかすめた。俺の顔に飛んだミルククリームを綺麗に拭いさる。それはミノタンの口からぬるんと出たように見えた…が、その異常な長さ…。さくらんぼの細い柄を舌先で結ぶどころか蝶結びだってできそうな…。
牛タン…いや、ミノタンか。


アワワ身の危険になるようなことは言うまい。


「オ、オイシイデェス」
『うむ、なかなか美味であるな』
神出鬼没な魔王がちゃっかり座って俺のパウンドケーキのさくらんぼの部分を一口で食べてしまった。
『さくらんぼも良いが、この部分をもっちりとした白玉に変えるのも良いかもしれんぞ』
「キャッ!それでは次は白玉ちゃんで試してみます」
 

ふふふ、うふふって二人の笑顔が俺は怖いよ。ティータイムってこういう愉しみ方をするもんなんだろうか。お菓子は美味しいけど、もっと誰の目から見ても普通の形の、チン型じゃないのを…ア,イッチャッタ…

魔王とミノタンがねっとりとパウンドケーキを食している間に俺は極力二人を刺激しないように大人しくこちこちに固まって息を潜めた。

『ティンティン、実はな今日は大切な話がある。お前の命にも関わる話だ』

むむ、珍しく魔王が真面目な顔をしている。魔王の黒髪の蛇達も事の重要さを伝えるためにか動きもせずにじっとしている。
『隠しても仕方あるまい。私達の敵となる勇者が出現してしまった。このままではお前とミノタとカースが危険だ』


ん?
あれ?
「魔王はともかくケンタさんは大丈夫なの?ミノタンの方が強そうなのに」

『ケンタウロス一族の一部はこの大陸で賢者として崇められていてしかも絶滅危惧種指定されているからな。アレを見て賢者と思う者はいないだろうが恐らく捕まっても勇者の乗り物にされるくらいですむだろう』


…本人は魔王の乗り物に、なりたいって言ってたような。良いのかな…。ほんのちょっぴりケンタさんが憐れになった。

『ティンティンよ、他人を憐れんでいる暇はないぞ。お前は誰一人として殺してはいない死者ゼロの平和ダンジョンだが、勇者が、ダンジョンが無力なうちに潰してしまおうなどと考えると秒で死ぬ』


「そんな!全力でお守りしますわ」
ミノタンがきゅっと俺を抱きしめた。
『ミノタももれなくタンシチューと焼肉の具にされる』
ヤダナニソレコワイ。勇者ってそんな非情なの?血も涙もないの?こんなに平和的に暮らしてるのに俺達生きてちゃいけないの?


シリアスな場面のはずがドアの外ではケンタさんとカースの打ち合いと、魔王様は私のものだ的な怒号が響いている。

「ミノタンは逃げてね、海の向こうでもどこでも良いから魔王と逃げてね」

 神出鬼没の魔王とカースやミノタンはどこまでも逃げられるはずだ。カースは逃亡を嫌がりそうだけど、魔王と旅行だとかなんとか言えば喜び勇んで着いて行くはずだ。

俺は逃げられない。精々がダンジョン表層部の旧街の端っことか、まだ到達していないダンジョンの奥底か、そんな場所にしか行けない。ユーヴュラのダンジョンを信じて立て籠もるしかないな。

「そんな!ダンジョン様を置いて逃げるなんて有り得ないわ。アタシは護衛なんだから」

『そこで、勇者が女を斬らぬという噂があってな。これがどうも事実らしい。というわけで』

…あれ?
魔王の腕が伸びて俺をぷらりんこした。そして何故かテーブルの上に乗せられる。これぞ阿吽の呼吸でミノタンが茶器と菓子を片付けていた。


そしてまたしても仰向けに転がされて膝裏を掴まれロックオンされている。非常に覚えのあるポーズだ。魔王は良い笑顔で微笑みミノタンはキャッと両手で顔を覆いつつ指の間からこちらを見ていた。

ぎゃー魔王!ちょっと待って。俺は確かに魔物だけど、人並みの羞恥心はあるんだよぉ。見られながらとかやだやだ無理無理やめてぇ。
じったばたテーブルの上で藻掻くと、魔王は卑怯な手を使った。俺が抗えなくなってしまう方法を魔王は知っているんだ。魔王の顔がゆるゆると变化して、灰色の瞳の皮肉っぽい笑いじわのある俺の大好きだったユーヴュラの顔になる。
「ティン、良い子だ気持ち良くなるだけだから大人しくして」
なんて声までが脳髄震わせるようなユーヴュラの声だった。
「だめっ……んっ……っ 」

拒絶しようと思うのにへにゃへにゃと力が抜ける。押し返えそうとする手が衣を掴んで縋りついちゃう。ずるいよ、ずるいよ魔王。
ユーヴュラの手が俺の両手首ををテーブルに貼り付けにするみたいに押さえた。
ユーヴュラとキスしてるみたいだった。ちょっとかさついた唇もにおいもそのものだった。こんなのは幻だってわかりきっているのにいざユーヴュラの姿を見るともう恋しくて仕方なかった。
ちゅーしてる間に、何か変だなって思いはしたんだけど、ちょっと待ってと言う暇も与えられず、なんで手首が押さえられてるのに膝の裏が掴まれたままなんだろうって。魔王は腕が4本あるの?なんて混乱してる間にすーすーした下半身に危険な感触が…あった。

まさか、まさか、ミノタン!?パウンドケーキ食べたりなかったの?それは違うものだー。感触を確かめるみたいに俺のたまちやんをむにゅっと頬張られた感触が…。さくらんぼの柄を結べそうな長くて器用な舌がにゅるにゅると絡んで、ひくひく跳ねるまでしゃぶられたあと、先っぽから逆行するようにぬるぬると熱い舌が違う場所へ這って行った。

だめーーーって叫んだ声が。全部飲み込まれちゃって。そこは舐める場所じゃないのに。
『ケーキを焼く時は型に満遍なく油を塗るそうだな。ティンのここにもたっぷりとお前の舌で塗り込めてやれ』
ぬぷってどろっとしたのをまとわりつかせた舌が体の奥にゆるゆるはいっていく。跳ね上がる体を魔王に押さえつけられて俺は震えるしか出来なかった。


馬鹿魔王何言ってるんだ、ミノタンだめぇ。…って思うだけ無駄だった。だって初めて魔王にされた時みたいに、俺の体は気持ち良くなっちゃって、舌が抜かれた後に魔王が遠慮もなくのしかかってきて魔力を注がれた。今回は繋がったまま執拗に乳首を噛まれて、ない胸を揉まれて、魔王が触らない時はミノタンが絶妙な手付きで俺を捏ね回した。

声も出なくなるほどまた喘がされてやっと終わったって思ったらそうじゃなくてミノタンが…
「ダンジョン様、アタシとやるなんてお嫌でしょうけど、ここにお部屋をもらいますね」って魔王が抜けた場所に今度はミノタンが插入はいってきた。固いんだか柔らかいんだかわかんない感触でぐにゅって押し広げるみたいに。

「あぅうんっ」
…って声をあげたのは俺じゃなくてミノタンだった。俺の中に申し訳なさそうに插入はいったままのミノタンのアレが急に元気良くぐいんと跳ね上がった。

「あ゛っぁあん魔王様」
ミノタンの体の下で俺は押し潰されそうになってたんだけど、泣きそうなのはミノタンだった。顔から首筋まで真っ赤になって全身をぶるぶる震わせて。その振動が俺を揺さぶって感じちゃう。
魔王がミノタンを深々と背後から貫いて、ミノタンが俺の中にいて、これって…数珠つなぎおせっせ……。だめ、俺はもうギブアップだよ、許してよって、泣きながら揺らされ続けて、次に目が覚めた時には、目の前にふわふわ肉まんみたいな真っ白な胸があった。黒い巻き毛の女の子が俺の頭を抱え込むようにして気絶している。
その顔に見覚えはないんだけど、はちきれそうな胸の下に巻かれた黒いベルトは記憶にあった。ミ、ミノタン?が女の子ミノコになってるぅぅ。

そして、ぇぇぇ。平らなはずの俺の胸元に超控えめなちっぱいが出現して、大事なマイサンが見えなくなっていた。

ティンティンの物語ではなくてティン子の物語になっちゃう…。焦る俺をよそに、女体化したのは俺達だけではなかった。
ドアの向こうでも悲喜劇が起こっていたのだった。
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