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第31話 黒子天使の鑑定眼
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「ねえ、レヴィン。生命力や防御力って分かるの?」
「そりゃ、黒子天使だからな。ダンジョンに冒険者の生命力を吸収させるのが仕事だぞ」
生命力の少ない冒険者ばかりを相手にしては、ダンジョンの成長効率は悪い。だから、黒子天使にとっての必須のスキルが鑑定眼。
ダンジョンを初めて経験するブランシュは、黒子天使の能力を知らない。大学での基礎的な知識しかなく、それぞれの専攻に分かれてしまえば、ダンジョンの黒子天使のことを深く知る機会は滅多にない。
俺もダンジョンの副司令官になったことで、熾天使の力を知った。熾天使フジーコだけの力が全てではないだろうが、それでも熾天使の力の一端を見ているが、ブランシュには初めての経験になる。
「そうだな、マリク。ダンジョン内の冒険者を映してくれ」
「了解っす」
モニターに映し出されたのは、第13ダンジョン6階層の冒険者パーティー。男戦士と、女盗賊、女僧侶の3人パーティー。そしてモニターには、冒険者達の名前と、攻撃力と生命力の数字が表示される。
【パーティー名:白銀の翼】
戦士:アルベルト
攻撃力:981
生命力:954
盗賊:リジェネ
攻撃力:563
生命力:1020
僧侶:ペンネ
攻撃力:1040
生命力:565
「まだ他にも表示出来るけど、それだと見難くなるから、今はこの程度かな」
「例えば、こんな感じっすよ」
マリクがキーボードを操作すれば、他にも魔力や敏捷性といった数字が表示され、モニターは数字で埋もれてゆく。
「凄いわ。これが鑑定眼スキルなの。身長に体重……も分かるのね」
「ああ、身長や体重は一番初の初歩だ。マリクにだって出来る」
「先輩、それを言っちゃダメっすよ。こんな詳しく分かるのは、先輩とシーマぐらいじゃないっすか」
全ての黒子天使が鑑定眼の能力が優れているわけではなく、もちろん能力に差がある。低ければABCランクといった表示で、能力が高くなるにつれて数字かされて見える。
今のマリクのスキルレベルでは、まだ100~200といった曖昧な数字で、正確な数字が分かるまでにはまだまだ研鑽を積む必要がある。
「そうなのね、体重も分かるのね」
ブランシュのボソッとした呟きと同時に、スキル阻害の障壁を纏っている。ブランシュの肩に止まって眠っていたはずのザキーサの目が見開かれ、俺に向かって顔を小さく左右に振る。絶対にブランシュに向けて、鑑定眼を使ってはいけないと!
「マジックアイテムなら、私にも鑑定眼スキルが使えるのかしら?」
「ああ、一番簡単なのはこれだな」
胸ポケットからサングラスを取り出してみせる。
「これを掛ければ、誰にだって鑑定眼スキルが使える。ダンジョン内なら、魔力は自動で供給されるし使い放題の逸品だぞ」
俺のサングラス姿を掛けると、ニヒルな笑みを浮かべてポーズを決める。
「どう、似合ってる?」
「個人的には似合ってると思うけど、熾天使としてはダメじゃないか?」
「そうよね、それは分かってるわ。ねえ、これってどうやって使うの?」
「ああ、簡単だ。知りたい能力を思い浮かべるだけでイイ」
「へえ~、見えたわ。これは面白いわね」
ブランシュは感心しながら、円卓を囲むメンバーを眺めているが、マリクの方でブランシュの動きは止まる。
「これは、俺の鑑定眼スキルをベースにしてシーマが術式化したマジックアイテムなんだ。数値化されにくい能力や、成長曲線なんかは鑑定出来ないぞ」
「分かってるわ。誰にだった一つはイイ所があるものよ」
「そうだ、焦らなくてもこれから何かが見つかるはず。きっとな!」
「ちょっと、待って欲しいっす。ここに居るのは皆規格外。そこと比べられたら、誰だって見劣りするっすよ」
マリクの抗議を無視して、ブランシュがモニターに視線を戻す。戦士・盗賊・僧侶の3人パーティー。しかし、一番攻撃力のあるのは僧侶で、生命力が高いのは盗賊。戦士は、どちらも高くはあるが一番ではない。
「少し複雑なパーティーね。攻撃力が高いのが、後衛の僧侶っていうのは可愛そうだわ」
「やりたいことと、適正は違うからな」
もちろん防御力など他の能力も影響し、2つの能力だけを見て判断は出来ない。しかし、ガルグイユを倒そうとする冒険者であれば、ベストとは言えない。
「教えてあげることは出来ないの?」
「えっ、冒険者に?」
「自分達の限界を知れば、命の危険を犯す無茶はしなくなるわよ」
「でもな、実力差を知った時に、心が折れるかもしれないぞ」
「それよりも、成長を感じさせてあげるのよ」
こうして、第13ダンジョンの新しい試みが始まる。
「そりゃ、黒子天使だからな。ダンジョンに冒険者の生命力を吸収させるのが仕事だぞ」
生命力の少ない冒険者ばかりを相手にしては、ダンジョンの成長効率は悪い。だから、黒子天使にとっての必須のスキルが鑑定眼。
ダンジョンを初めて経験するブランシュは、黒子天使の能力を知らない。大学での基礎的な知識しかなく、それぞれの専攻に分かれてしまえば、ダンジョンの黒子天使のことを深く知る機会は滅多にない。
俺もダンジョンの副司令官になったことで、熾天使の力を知った。熾天使フジーコだけの力が全てではないだろうが、それでも熾天使の力の一端を見ているが、ブランシュには初めての経験になる。
「そうだな、マリク。ダンジョン内の冒険者を映してくれ」
「了解っす」
モニターに映し出されたのは、第13ダンジョン6階層の冒険者パーティー。男戦士と、女盗賊、女僧侶の3人パーティー。そしてモニターには、冒険者達の名前と、攻撃力と生命力の数字が表示される。
【パーティー名:白銀の翼】
戦士:アルベルト
攻撃力:981
生命力:954
盗賊:リジェネ
攻撃力:563
生命力:1020
僧侶:ペンネ
攻撃力:1040
生命力:565
「まだ他にも表示出来るけど、それだと見難くなるから、今はこの程度かな」
「例えば、こんな感じっすよ」
マリクがキーボードを操作すれば、他にも魔力や敏捷性といった数字が表示され、モニターは数字で埋もれてゆく。
「凄いわ。これが鑑定眼スキルなの。身長に体重……も分かるのね」
「ああ、身長や体重は一番初の初歩だ。マリクにだって出来る」
「先輩、それを言っちゃダメっすよ。こんな詳しく分かるのは、先輩とシーマぐらいじゃないっすか」
全ての黒子天使が鑑定眼の能力が優れているわけではなく、もちろん能力に差がある。低ければABCランクといった表示で、能力が高くなるにつれて数字かされて見える。
今のマリクのスキルレベルでは、まだ100~200といった曖昧な数字で、正確な数字が分かるまでにはまだまだ研鑽を積む必要がある。
「そうなのね、体重も分かるのね」
ブランシュのボソッとした呟きと同時に、スキル阻害の障壁を纏っている。ブランシュの肩に止まって眠っていたはずのザキーサの目が見開かれ、俺に向かって顔を小さく左右に振る。絶対にブランシュに向けて、鑑定眼を使ってはいけないと!
「マジックアイテムなら、私にも鑑定眼スキルが使えるのかしら?」
「ああ、一番簡単なのはこれだな」
胸ポケットからサングラスを取り出してみせる。
「これを掛ければ、誰にだって鑑定眼スキルが使える。ダンジョン内なら、魔力は自動で供給されるし使い放題の逸品だぞ」
俺のサングラス姿を掛けると、ニヒルな笑みを浮かべてポーズを決める。
「どう、似合ってる?」
「個人的には似合ってると思うけど、熾天使としてはダメじゃないか?」
「そうよね、それは分かってるわ。ねえ、これってどうやって使うの?」
「ああ、簡単だ。知りたい能力を思い浮かべるだけでイイ」
「へえ~、見えたわ。これは面白いわね」
ブランシュは感心しながら、円卓を囲むメンバーを眺めているが、マリクの方でブランシュの動きは止まる。
「これは、俺の鑑定眼スキルをベースにしてシーマが術式化したマジックアイテムなんだ。数値化されにくい能力や、成長曲線なんかは鑑定出来ないぞ」
「分かってるわ。誰にだった一つはイイ所があるものよ」
「そうだ、焦らなくてもこれから何かが見つかるはず。きっとな!」
「ちょっと、待って欲しいっす。ここに居るのは皆規格外。そこと比べられたら、誰だって見劣りするっすよ」
マリクの抗議を無視して、ブランシュがモニターに視線を戻す。戦士・盗賊・僧侶の3人パーティー。しかし、一番攻撃力のあるのは僧侶で、生命力が高いのは盗賊。戦士は、どちらも高くはあるが一番ではない。
「少し複雑なパーティーね。攻撃力が高いのが、後衛の僧侶っていうのは可愛そうだわ」
「やりたいことと、適正は違うからな」
もちろん防御力など他の能力も影響し、2つの能力だけを見て判断は出来ない。しかし、ガルグイユを倒そうとする冒険者であれば、ベストとは言えない。
「教えてあげることは出来ないの?」
「えっ、冒険者に?」
「自分達の限界を知れば、命の危険を犯す無茶はしなくなるわよ」
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