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第53話 ハーピー再来
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「報告します。タカオ方面からの魔物の飛影を多数確認。数は、現在およそ300……次々と減っています」
「次々と減っているって、どういうことだ?」
タカオで堕天使が誕生したのならば、遅からずヒケンの森に魔物が押し寄せてくる。スタンピード級の魔物を想定していたが、尖兵隊にしては数があまりにも少ない。そして、減っているという報告の意味も信じ難い。
「先輩っ、映像にモニターに出ます」
確かにタカオ側の空には、無数の黒い点が見える。竜種のような大きさはなく、鳥の翼がある魔物だが人型にも見える。
「恐らくハーピーっすね。ヒケンの森に居たヤツらなら厄介っすよ」
ヒケンの森に棲息していた魔物ハーピー。この森を代表する魔物でもあり、縄張り意識が強く残忍な性格をしている。
だが、特に黒子天使には敵意を剥き出し襲いかってくる。魔物としては下位なのだが、しつこく付きまとってくる面倒臭い相手。
しかし、ヒケンの森がダンジョン化してから、ハーピーはこの森を出ていった。もちろん、この森に棲んでいる魔物はハーピー達だけではない。先に森に棲んでいたのだから居住権はあるし、共存関係を構築しようと試みた。
幾つかの魔物は、棲みかである森がダンジョンの影響下に置かれても、魔物達の縄張りを認め互いに不可侵の契約を結んでくれた。しかし、ハーピー達はそれを由とせずに、ヒケンの森を出ていった。
「今さら、復讐っすか?」
「それはないだろ。どう見てもボロボロだし、逃げているだけにしか見えない」
次第に見えてくるハーピー達の姿は、全身が傷だらけで、力尽きた者から順に落ちていっている。その数も加速度的に増え、落ちてゆく者を助けようとする者はいない。この森に辿り着く頃には、半分も残らないだろう。
「どうします?助けてやりますか?」
「そうだな……何があったか情報くらいは聞き出したい。襲ってくるなら、それは仕方がないけどな」
「そうっすね。じゃあ、C5エリアの無限ループを解除し、森の中に引き込みますよ」
「ああ、そうしてくれ。落ちたハーピーの捜索は、カシューに任せる」
全身ボロボロだが、ヒケンの森に辿りついたハーピーは125体。カシューの捜索隊が回収したハーピー136体。元々森には3千体はいたのだから、再びヒケンの森に戻ってきたハーピーは1割にも満たない。
そしてハーピー達は、ヒケンの森の中に飛び込んでくるが、そこはトレント達が作る森の中。一度入ってしまえば抜け出せない牢獄になる。
だがハーピー達は、そこで安心したのかそれとも体力の限界なのか、殆どが横たわり動かなくなる。1体だけ立ったままのハーピーが居るが、殺気は全く感じない。
「黒子の天使、交渉がしたい」
そのハーピーに近寄ってみれば、以前に交渉したことのあるハーピーとは違う個体。全身血で赤く染まっているが、しなやかな体の曲線に細身の体の女のハーピー。
「先輩っ、大丈夫っすか?」
「大量に血を流してるし、体力の消耗は激しい。反抗してくる力はないだろ」
それでも黒子天使に見せるハーピーの特異ともいえる狂暴性が、黒子天使達を警戒させている。
「安心して欲しい。ウチらは危害は加えるつもりはない、交渉がしたいんだ。もう一度この森に棲みたいだけなんだ。今さら都合がイイ話ってのは分かっているけど、よろしくお願いします」
深々と腰を折り頭を下げてくるハーピーの見たことのない姿に、マリク達は驚いている。元々この森に棲んでいたのだから、一方的に追い出すつもりはないが、ダンジョンの拡張はさらに加速している。
「もう、この森全体はダンジョンの影響下にある。それでも大丈夫なのか?」
「出来れば、その、ダンジョンの中でお願いしたいんだ……」
「ダンジョンの中って?森の中じゃなくて、地下のことを言ってるのか?」
地下のダンジョン内の魔物となれば、完全に黒子天使達の支配下に置かれてしまう。敵対していた時とは全く真逆の、完全服従ともいえる関係性に驚くしかない。
「一体、タカオで何があったんだ?」
「次々と減っているって、どういうことだ?」
タカオで堕天使が誕生したのならば、遅からずヒケンの森に魔物が押し寄せてくる。スタンピード級の魔物を想定していたが、尖兵隊にしては数があまりにも少ない。そして、減っているという報告の意味も信じ難い。
「先輩っ、映像にモニターに出ます」
確かにタカオ側の空には、無数の黒い点が見える。竜種のような大きさはなく、鳥の翼がある魔物だが人型にも見える。
「恐らくハーピーっすね。ヒケンの森に居たヤツらなら厄介っすよ」
ヒケンの森に棲息していた魔物ハーピー。この森を代表する魔物でもあり、縄張り意識が強く残忍な性格をしている。
だが、特に黒子天使には敵意を剥き出し襲いかってくる。魔物としては下位なのだが、しつこく付きまとってくる面倒臭い相手。
しかし、ヒケンの森がダンジョン化してから、ハーピーはこの森を出ていった。もちろん、この森に棲んでいる魔物はハーピー達だけではない。先に森に棲んでいたのだから居住権はあるし、共存関係を構築しようと試みた。
幾つかの魔物は、棲みかである森がダンジョンの影響下に置かれても、魔物達の縄張りを認め互いに不可侵の契約を結んでくれた。しかし、ハーピー達はそれを由とせずに、ヒケンの森を出ていった。
「今さら、復讐っすか?」
「それはないだろ。どう見てもボロボロだし、逃げているだけにしか見えない」
次第に見えてくるハーピー達の姿は、全身が傷だらけで、力尽きた者から順に落ちていっている。その数も加速度的に増え、落ちてゆく者を助けようとする者はいない。この森に辿り着く頃には、半分も残らないだろう。
「どうします?助けてやりますか?」
「そうだな……何があったか情報くらいは聞き出したい。襲ってくるなら、それは仕方がないけどな」
「そうっすね。じゃあ、C5エリアの無限ループを解除し、森の中に引き込みますよ」
「ああ、そうしてくれ。落ちたハーピーの捜索は、カシューに任せる」
全身ボロボロだが、ヒケンの森に辿りついたハーピーは125体。カシューの捜索隊が回収したハーピー136体。元々森には3千体はいたのだから、再びヒケンの森に戻ってきたハーピーは1割にも満たない。
そしてハーピー達は、ヒケンの森の中に飛び込んでくるが、そこはトレント達が作る森の中。一度入ってしまえば抜け出せない牢獄になる。
だがハーピー達は、そこで安心したのかそれとも体力の限界なのか、殆どが横たわり動かなくなる。1体だけ立ったままのハーピーが居るが、殺気は全く感じない。
「黒子の天使、交渉がしたい」
そのハーピーに近寄ってみれば、以前に交渉したことのあるハーピーとは違う個体。全身血で赤く染まっているが、しなやかな体の曲線に細身の体の女のハーピー。
「先輩っ、大丈夫っすか?」
「大量に血を流してるし、体力の消耗は激しい。反抗してくる力はないだろ」
それでも黒子天使に見せるハーピーの特異ともいえる狂暴性が、黒子天使達を警戒させている。
「安心して欲しい。ウチらは危害は加えるつもりはない、交渉がしたいんだ。もう一度この森に棲みたいだけなんだ。今さら都合がイイ話ってのは分かっているけど、よろしくお願いします」
深々と腰を折り頭を下げてくるハーピーの見たことのない姿に、マリク達は驚いている。元々この森に棲んでいたのだから、一方的に追い出すつもりはないが、ダンジョンの拡張はさらに加速している。
「もう、この森全体はダンジョンの影響下にある。それでも大丈夫なのか?」
「出来れば、その、ダンジョンの中でお願いしたいんだ……」
「ダンジョンの中って?森の中じゃなくて、地下のことを言ってるのか?」
地下のダンジョン内の魔物となれば、完全に黒子天使達の支配下に置かれてしまう。敵対していた時とは全く真逆の、完全服従ともいえる関係性に驚くしかない。
「一体、タカオで何があったんだ?」
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