104 / 329
フタガの石峰のハーピー
104.ハーピーロード戦④
しおりを挟む
止めを刺す為に、ハーピーロードに近付こうと足を踏み出すと、足元の影から急に何かが飛び出してくる。
足を降ろそうとした先に、潜り込むようにして現れたのはカーバンクルのコミット。咄嗟に避けようとした俺は、バランスを崩して片膝をつく。
その直後、俺の顔のあった位置に剣羽根が飛んでくる。最後の力を振り絞ったのか、ハーピーロードはそれ以上は動く事はない。
これが幸運の精霊カーバンクルの力なのかと感じる。そして再度 マジックソードを握り直し、今度こそ止めを指そうと近寄る。
ダークのキャビティでぽっかりと開いた胸の穴から見えるのは、赤と黒の2つの魔石。ハーピーロードの体の中に2つの魔石がある事も驚きだが、赤の魔石が俺に語りかけてくる。
「なんだ、役に立たないヒト族か?」
言葉が分かるという事は、この魔石はアシスの精霊になるのだろう。やっぱり相手にしなければならないのか?
「おい、ヒト族!聞いているのか?沢山の精霊に助けられてるだけで、1人じゃ何も出来ないんだろ!」
無防備に魔石そのものをさらけ出して、良く言えるなと思うが・・・。気付かなかった事にしておけば大丈夫だろう。マジックソードを魔石に向ける。
「何をする、ヒト族。俺様は精霊だぞ」
切っ先が魔石に当たった感触がする。
「役に立つ優秀な精霊なら、何とかしてみたらどうだ。そうじゃなきゃ、お前も俺と一緒だろ」
「待て、待て、待て」
「一緒だろ」
マジックソードを持つ手に力を込める。
「そう、俺の名は怒りの精霊イッショ。暇潰しにお前らに付き合ってやるよ」
「はい?」
「それは、了承したという事で良いよな。なあ、酒の精霊よ!」
『まあ、あなたがイッショという名を受け入れたなら問題はないわよ』
「えっ、ちょっと待ってくれ!そんなのでイイのか?俺の意思は関係ないのか?怒りの精霊なんて、問題を起こすだけで面倒なだけだろ!」
『精霊の中でも、精神の精霊は特殊な存在よ。まあ精神に影響を及ぼす攻撃は効かなくなるからイイんじゃない』
精霊を増やすことが目的ではあるが、怒りの精霊というのは抵抗がある。知っているわけではないが、俺の中でのイメージが悪すぎる。
そこに影からカーバンクルのコミットを抱えたクオンが現れる。
「あなた、ぼっちでしょ。仲間になりたかったら言うことを聞くのよ!それに1番精霊は私よ。逆らったら許さないわ」
その言葉で、赤い魔石がブレスレットに吸収される。回復には時間がかかるだろうから、しばらくは静かだと思うが。
「ナレッジ、人材補充したから後は任せるよ」
そして、ナレッジの返事を待たずに、放置したハーピーロードに向き直る。赤い魔石が無くなった事で、表情が穏やかになる。少し前までの殺そうとしていた表情と同一人物であるとは考えられない。
瀕死の状態ではあるが、微かに残された魔力の質も変わっている。恐らくは怒りの精霊の魔石が、ハーピーロードに魔力を供給する役割を果たしていた。そして、怒りの精霊の魔力が精神的な徐々に影響を及ぼしていたのかもしれない。
「楽にしてやるよ」
黒の魔石にマジックソードの切っ先が当たった瞬間に、何かがフラッシュバックしてくる。
今、俺は岩峰の上に立っている。眼下には、自然が豊かな森が広がり、幾つもの鳥達が群れをなして飛んでいる。そして上を見上げると、一体のハーピーが飛んでいる。身体が微かに輝き、飛んだ跡にはキラキラとしたものが残される。 もかしてこれが、ハーピークイーンの本当の姿なのだろうか?顔だけを見ると、俺と同じくらいにしか見えない。
笑顔で空を駆け回るハーピークイーンの後ろには、何体かのハーピーが必死の形相で付いて回る。そして俺に近付くと笑顔はさら大きくなり、必死の形相のハーピー達は大きな声を上げる。
辺りが急に暗くなり、自然豊かな森が枯れ始め火の手が上がる。火を消そうと向かうハーピー達は、火の手にまで到達する事なく地上へと落とされる。
何者かの仕業で、自分達では敵わない相手であることを知ったハーピー達は、クイーンを囲み平伏する。クイーンは困惑するが、クイーンである以上逃げるとこは許されない。
しかし、方法がそれしかないと覚悟を決めたクイーンは、一体のハーピーに喰らいつく。そして、もう一体。また次の一体と、順々にハーピー達に食らいつく。悲しみの表情から怒りへの表情と変わり、次々と食らい尽くすクイーン。
そこでフラッシュバックが終わる。ハーピーの言葉は分からないが、ハーピーロードの持つ記憶の一部。
「終わりにして欲しいのか?」
ハーピーロードが頷くように頭を動かし、目を閉じる。言葉は分からないだろうが、お互いの意思は伝わる。
そしてマジックソードを持つ手に力を込めると、魔石は砕けて消滅が始まる。
足を降ろそうとした先に、潜り込むようにして現れたのはカーバンクルのコミット。咄嗟に避けようとした俺は、バランスを崩して片膝をつく。
その直後、俺の顔のあった位置に剣羽根が飛んでくる。最後の力を振り絞ったのか、ハーピーロードはそれ以上は動く事はない。
これが幸運の精霊カーバンクルの力なのかと感じる。そして再度 マジックソードを握り直し、今度こそ止めを指そうと近寄る。
ダークのキャビティでぽっかりと開いた胸の穴から見えるのは、赤と黒の2つの魔石。ハーピーロードの体の中に2つの魔石がある事も驚きだが、赤の魔石が俺に語りかけてくる。
「なんだ、役に立たないヒト族か?」
言葉が分かるという事は、この魔石はアシスの精霊になるのだろう。やっぱり相手にしなければならないのか?
「おい、ヒト族!聞いているのか?沢山の精霊に助けられてるだけで、1人じゃ何も出来ないんだろ!」
無防備に魔石そのものをさらけ出して、良く言えるなと思うが・・・。気付かなかった事にしておけば大丈夫だろう。マジックソードを魔石に向ける。
「何をする、ヒト族。俺様は精霊だぞ」
切っ先が魔石に当たった感触がする。
「役に立つ優秀な精霊なら、何とかしてみたらどうだ。そうじゃなきゃ、お前も俺と一緒だろ」
「待て、待て、待て」
「一緒だろ」
マジックソードを持つ手に力を込める。
「そう、俺の名は怒りの精霊イッショ。暇潰しにお前らに付き合ってやるよ」
「はい?」
「それは、了承したという事で良いよな。なあ、酒の精霊よ!」
『まあ、あなたがイッショという名を受け入れたなら問題はないわよ』
「えっ、ちょっと待ってくれ!そんなのでイイのか?俺の意思は関係ないのか?怒りの精霊なんて、問題を起こすだけで面倒なだけだろ!」
『精霊の中でも、精神の精霊は特殊な存在よ。まあ精神に影響を及ぼす攻撃は効かなくなるからイイんじゃない』
精霊を増やすことが目的ではあるが、怒りの精霊というのは抵抗がある。知っているわけではないが、俺の中でのイメージが悪すぎる。
そこに影からカーバンクルのコミットを抱えたクオンが現れる。
「あなた、ぼっちでしょ。仲間になりたかったら言うことを聞くのよ!それに1番精霊は私よ。逆らったら許さないわ」
その言葉で、赤い魔石がブレスレットに吸収される。回復には時間がかかるだろうから、しばらくは静かだと思うが。
「ナレッジ、人材補充したから後は任せるよ」
そして、ナレッジの返事を待たずに、放置したハーピーロードに向き直る。赤い魔石が無くなった事で、表情が穏やかになる。少し前までの殺そうとしていた表情と同一人物であるとは考えられない。
瀕死の状態ではあるが、微かに残された魔力の質も変わっている。恐らくは怒りの精霊の魔石が、ハーピーロードに魔力を供給する役割を果たしていた。そして、怒りの精霊の魔力が精神的な徐々に影響を及ぼしていたのかもしれない。
「楽にしてやるよ」
黒の魔石にマジックソードの切っ先が当たった瞬間に、何かがフラッシュバックしてくる。
今、俺は岩峰の上に立っている。眼下には、自然が豊かな森が広がり、幾つもの鳥達が群れをなして飛んでいる。そして上を見上げると、一体のハーピーが飛んでいる。身体が微かに輝き、飛んだ跡にはキラキラとしたものが残される。 もかしてこれが、ハーピークイーンの本当の姿なのだろうか?顔だけを見ると、俺と同じくらいにしか見えない。
笑顔で空を駆け回るハーピークイーンの後ろには、何体かのハーピーが必死の形相で付いて回る。そして俺に近付くと笑顔はさら大きくなり、必死の形相のハーピー達は大きな声を上げる。
辺りが急に暗くなり、自然豊かな森が枯れ始め火の手が上がる。火を消そうと向かうハーピー達は、火の手にまで到達する事なく地上へと落とされる。
何者かの仕業で、自分達では敵わない相手であることを知ったハーピー達は、クイーンを囲み平伏する。クイーンは困惑するが、クイーンである以上逃げるとこは許されない。
しかし、方法がそれしかないと覚悟を決めたクイーンは、一体のハーピーに喰らいつく。そして、もう一体。また次の一体と、順々にハーピー達に食らいつく。悲しみの表情から怒りへの表情と変わり、次々と食らい尽くすクイーン。
そこでフラッシュバックが終わる。ハーピーの言葉は分からないが、ハーピーロードの持つ記憶の一部。
「終わりにして欲しいのか?」
ハーピーロードが頷くように頭を動かし、目を閉じる。言葉は分からないだろうが、お互いの意思は伝わる。
そしてマジックソードを持つ手に力を込めると、魔石は砕けて消滅が始まる。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界で美少女『攻略』スキルでハーレム目指します。嫁のために命懸けてたらいつの間にか最強に!?雷撃魔法と聖剣で俺TUEEEもできて最高です。
真心糸
ファンタジー
☆カクヨムにて、200万PV、ブクマ6500達成!☆
【あらすじ】
どこにでもいるサラリーマンの主人公は、突如光り出した自宅のPCから異世界に転生することになる。
神様は言った。
「あなたはこれから別の世界に転生します。キャラクター設定を行ってください」
現世になんの未練もない主人公は、その状況をすんなり受け入れ、神様らしき人物の指示に従うことにした。
神様曰く、好きな外見を設定して、有効なポイントの範囲内でチートスキルを授けてくれるとのことだ。
それはいい。じゃあ、理想のイケメンになって、美少女ハーレムが作れるようなスキルを取得しよう。
あと、できれば俺TUEEEもしたいなぁ。
そう考えた主人公は、欲望のままにキャラ設定を行った。
そして彼は、剣と魔法がある異世界に「ライ・ミカヅチ」として転生することになる。
ライが取得したチートスキルのうち、最も興味深いのは『攻略』というスキルだ。
この攻略スキルは、好みの美少女を全世界から検索できるのはもちろんのこと、その子の好感度が上がるようなイベントを予見してアドバイスまでしてくれるという優れモノらしい。
さっそく攻略スキルを使ってみると、前世では見たことないような美少女に出会うことができ、このタイミングでこんなセリフを囁くと好感度が上がるよ、なんてアドバイスまでしてくれた。
そして、その通りに行動すると、めちゃくちゃモテたのだ。
チートスキルの効果を実感したライは、冒険者となって俺TUEEEを楽しみながら、理想のハーレムを作ることを人生の目標に決める。
しかし、出会う美少女たちは皆、なにかしらの逆境に苦しんでいて、ライはそんな彼女たちに全力で救いの手を差し伸べる。
もちろん、攻略スキルを使って。
もちろん、救ったあとはハーレムに入ってもらう。
下心全開なのに、正義感があって、熱い心を持つ男ライ・ミカヅチ。
これは、そんな主人公が、異世界を全力で生き抜き、たくさんの美少女を助ける物語。
【他サイトでの掲載状況】
本作は、カクヨム様、小説家になろう様でも掲載しています。
悪魔になったらするべきこと?
ファウスト
ファンタジー
剣と魔法の世界。そこで魔法を教える学校に通う主人公ルナ・フラウステッドは魔法使いに憧れてる女の子。次の進級で実技に行く段階になった彼女だったがどうしてか魔法を上手く使えない落第生となってしまった。そんな時、偶然にも雇われた家庭教師の先生が言う方法に運命を任せたところ・・・。
「悪魔になっちゃった!?」
悪魔に変化!だけでも中身はそのままの彼女の運命やいかに!
彼女を狙う影、彼女の体の行く末、それを見守る保護者たち。
彼女はいったいどうなってしまうのだろうか。
これは悪党から両親と自分の将来を守るために悪魔になった少女がその身の上と体の特殊さから
様々な騒動に巻き込まれるお話である。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる