137 / 329
クオカの洞穴の死霊
137.世話焼きの精霊
しおりを挟む
「キマイラに2回ほど助けられまして・・・」
「えっ、2回も?」
ダビデの告白に驚きを隠せない。何故2回も助けられるのか?それも、2回“ほど”になるんだ。意味はなく使った言葉かもしれないが、“ほど”にダビデの人となりが感じられる。
それはどちらかといえば残念な印象でしかない。そう思うと、ソースイやホーソン、チェンはクセはあるが優秀な仲間だと感じる。
「1回目は不用意に魔樹の森に侵入して、方向が分からなくなり、2回目は・・・」
そこで、言葉を詰まらせてしまう。エルフとしての自尊心だったりプライドが邪魔をしているのかもしれない。
「今さら隠しても、その格好ならだいたい想像は出来るけどな」
「あ、はいっ、そうですね。キマイラの言葉を無視して、あなた達を追いかけてまして・・・再び迷いました。キマイラに最初に来た場所まで追い返され・・・。幸いにも向かった場所は教えてもらったので、魔樹の森を迂回して追いかけました」
キマイラの言葉を無視したという言葉にムーアとガーラが反応する。
『上位精霊キマイラの言葉を無視したのね。あなたはエルフ族なのだから、その事の意味が分かってるかしら?』
「エルフ族変わった。やり方高慢」
冷たく問いただすムーアに、嫌悪感を隠さないガーラ。珍しくあからさまに表情に出しているので、かなり怒っているのは分かる。エルフ族ならこの2人とは相性は良さそうなはずだが、ダビデとの相性は最悪といって良い。
確かに魔樹の森を護るために創造された精霊の足を引っ張るのだから、手前勝手と取られても仕方がない。俺としても考え方はムーアやガーラ寄りなので、あえて俺が間に入る必要はない。
沈黙が流れる。問いただす精霊に、どうしたらよいか分からずにまごまごするエルフ。
「岩峰に戻ろうか?ガーラとナルキに出会えたなら、結果としてはもう十分じゃないか。レーシーが出てきても近くには魔樹の森があるから、キマイラが何とかしてくれるだろし、話だけしておけば大丈夫だろ」
上司が一方的に部下を叱責しているような雰囲気で、少し虚しさを感じる。これから何かが起こる事は期待出来ないし、話の中から新しい価値観が生まれることはない。
「みんな、どう思う?」
「ソウネ、薬草モ沢山採レタ」
「僕たちの力を盗み見して品定めする奴らだからね!」
「ボクの事は気にしないで大丈夫。どこに向かうかはカショウに任せるよ」
“もうこれ以上はない”
するとボロボロだったダビデの服が、揺らめき始める。ゆっくりと風が巻き起こり、ダビデの前に女の精霊が現れる。髪や服だけでなく手足も揺らめき、うっすらと姿が透けて見えている。
ダビデの召喚精霊であろうシルフだが、召喚することなく現れるのは繋がりが強い証しになる。
「残念なエルフなの。だけど、ほっとけない存在もいるでしょ」
まごまごとしていたダビデとは違い、スパッとダビデの評価を認めて言い切ってしまえる潔さが、清々しくも感じられる。
『繋がりが強いわね。それなら、あなたにも名前はあるんでしょ?』
「わたしの名は、ディード。風の精霊シルフのディードよ」
『ダビデから出てくるとは思えないイイ名前ね』
「ありがとう、名付けだけはセンスがあるわ」
『ダビデの事はがディードが世話を焼いてるの?』
「ええ、そう取ってもらってもイイわ。ダビデに付き合う精霊は私ぐらいだから」
『それじゃあ、なぜ魔樹の森でダビデを止めなかったの?キマイラに助けを求めたのはディードなんでしょ』
優秀な精霊っぽく見えるが、ダビデは失敗したらこうなるという見本の様な姿をしている。
「ダビデが望むなら、私は止めない。経験して覚える事もあるでしょうから」
『失敗する事が分かっていても、それでも止めないのかしら?』
「キマイラを本気で怒らせれば、もう死んでいるわ。それにあなた達に追い付いているから、失敗した事にはならないでしょ」
『それならディードも聞いてたでしょ。カショウはフタガの岩峰に戻るかもしれないわよ』
「だから、私がお願いしに出てきたの。ダビデに先導させて、クオカに行って欲しい」
『大した自信ね。その気概は嫌いではないけど、一つ間違えれば相手を怒らせるわよ』
「その心配はしていないわ。あの方は精霊樹に導かれてきたのだから」
そしてダビデ以外の視線が俺に向けられる。
「急に振られてもな」
「えっ、2回も?」
ダビデの告白に驚きを隠せない。何故2回も助けられるのか?それも、2回“ほど”になるんだ。意味はなく使った言葉かもしれないが、“ほど”にダビデの人となりが感じられる。
それはどちらかといえば残念な印象でしかない。そう思うと、ソースイやホーソン、チェンはクセはあるが優秀な仲間だと感じる。
「1回目は不用意に魔樹の森に侵入して、方向が分からなくなり、2回目は・・・」
そこで、言葉を詰まらせてしまう。エルフとしての自尊心だったりプライドが邪魔をしているのかもしれない。
「今さら隠しても、その格好ならだいたい想像は出来るけどな」
「あ、はいっ、そうですね。キマイラの言葉を無視して、あなた達を追いかけてまして・・・再び迷いました。キマイラに最初に来た場所まで追い返され・・・。幸いにも向かった場所は教えてもらったので、魔樹の森を迂回して追いかけました」
キマイラの言葉を無視したという言葉にムーアとガーラが反応する。
『上位精霊キマイラの言葉を無視したのね。あなたはエルフ族なのだから、その事の意味が分かってるかしら?』
「エルフ族変わった。やり方高慢」
冷たく問いただすムーアに、嫌悪感を隠さないガーラ。珍しくあからさまに表情に出しているので、かなり怒っているのは分かる。エルフ族ならこの2人とは相性は良さそうなはずだが、ダビデとの相性は最悪といって良い。
確かに魔樹の森を護るために創造された精霊の足を引っ張るのだから、手前勝手と取られても仕方がない。俺としても考え方はムーアやガーラ寄りなので、あえて俺が間に入る必要はない。
沈黙が流れる。問いただす精霊に、どうしたらよいか分からずにまごまごするエルフ。
「岩峰に戻ろうか?ガーラとナルキに出会えたなら、結果としてはもう十分じゃないか。レーシーが出てきても近くには魔樹の森があるから、キマイラが何とかしてくれるだろし、話だけしておけば大丈夫だろ」
上司が一方的に部下を叱責しているような雰囲気で、少し虚しさを感じる。これから何かが起こる事は期待出来ないし、話の中から新しい価値観が生まれることはない。
「みんな、どう思う?」
「ソウネ、薬草モ沢山採レタ」
「僕たちの力を盗み見して品定めする奴らだからね!」
「ボクの事は気にしないで大丈夫。どこに向かうかはカショウに任せるよ」
“もうこれ以上はない”
するとボロボロだったダビデの服が、揺らめき始める。ゆっくりと風が巻き起こり、ダビデの前に女の精霊が現れる。髪や服だけでなく手足も揺らめき、うっすらと姿が透けて見えている。
ダビデの召喚精霊であろうシルフだが、召喚することなく現れるのは繋がりが強い証しになる。
「残念なエルフなの。だけど、ほっとけない存在もいるでしょ」
まごまごとしていたダビデとは違い、スパッとダビデの評価を認めて言い切ってしまえる潔さが、清々しくも感じられる。
『繋がりが強いわね。それなら、あなたにも名前はあるんでしょ?』
「わたしの名は、ディード。風の精霊シルフのディードよ」
『ダビデから出てくるとは思えないイイ名前ね』
「ありがとう、名付けだけはセンスがあるわ」
『ダビデの事はがディードが世話を焼いてるの?』
「ええ、そう取ってもらってもイイわ。ダビデに付き合う精霊は私ぐらいだから」
『それじゃあ、なぜ魔樹の森でダビデを止めなかったの?キマイラに助けを求めたのはディードなんでしょ』
優秀な精霊っぽく見えるが、ダビデは失敗したらこうなるという見本の様な姿をしている。
「ダビデが望むなら、私は止めない。経験して覚える事もあるでしょうから」
『失敗する事が分かっていても、それでも止めないのかしら?』
「キマイラを本気で怒らせれば、もう死んでいるわ。それにあなた達に追い付いているから、失敗した事にはならないでしょ」
『それならディードも聞いてたでしょ。カショウはフタガの岩峰に戻るかもしれないわよ』
「だから、私がお願いしに出てきたの。ダビデに先導させて、クオカに行って欲しい」
『大した自信ね。その気概は嫌いではないけど、一つ間違えれば相手を怒らせるわよ』
「その心配はしていないわ。あの方は精霊樹に導かれてきたのだから」
そしてダビデ以外の視線が俺に向けられる。
「急に振られてもな」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
悪魔になったらするべきこと?
ファウスト
ファンタジー
剣と魔法の世界。そこで魔法を教える学校に通う主人公ルナ・フラウステッドは魔法使いに憧れてる女の子。次の進級で実技に行く段階になった彼女だったがどうしてか魔法を上手く使えない落第生となってしまった。そんな時、偶然にも雇われた家庭教師の先生が言う方法に運命を任せたところ・・・。
「悪魔になっちゃった!?」
悪魔に変化!だけでも中身はそのままの彼女の運命やいかに!
彼女を狙う影、彼女の体の行く末、それを見守る保護者たち。
彼女はいったいどうなってしまうのだろうか。
これは悪党から両親と自分の将来を守るために悪魔になった少女がその身の上と体の特殊さから
様々な騒動に巻き込まれるお話である。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる