精霊のジレンマ

さんが

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再構築

197.コンプレックス

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「全力で来い。全て受けきってみせる」

ボソッと呟くソースイだが、レーシーのアモンの実との真向勝負に相当気合いが入っている。それはやっと回ってきた俺の守備陣達も同じようだ。

俺の右にはミュラーの盾、左はハンソ、後ろをソースイ。そして上をマジックシールドと網のように変化したナルキの腕を配置させ、隙間を他の精霊やホーソン達が埋めている。

「動くな!死にたくなかったら、そこでじっと立っていろ」

少し怯んで動いたハンソが、ソースイによって再召喚され立位置を修正される。

そして、正面にはウィプス達が陣取り、アモンの実との真向勝負が始まる。


ババババババババンンンンッ

「ゼロ・グラビティ」

一斉にアモンの実が弾かれるタイミングに合わせて、ソースイがゼロ・グラビティを発動する。

勢いよく弾かれたアモンの実は、ソースイによって重量を奪われ、そして軽い音が俺達を包み込む。霰が降ってくる中を、傘を差して立っているような感じだが、落ちてくるのはアモンの実。

「これじゃあ、俺は必要なかったな」

『マジックシールドがなかったら、アモンの実まみれになってるわよ』

「精神的なダメージくらいだろ」

全方向から一斉にアモンの実が弾かれたようには見えるが、若干タイムラグがあり全ての実が同時に放たれたわけではない。
まだ融合したばかりで、レーシーといえど熟練度は低いのかもしれないが、単純にレーシーに近い場所の発動が早く、離れるに従って遅くなる。魔力を込めるのも一緒で、近いところから順番に魔力が流れる。

着弾を同時にしたり、距離に合わせてわざとタイミングを変えたりする事はなく、全てのアモンの実は同じ速さで飛んでくる。ソースイがゼロ・グラビティでアモンの実の威力を一斉に無効化出来たのも、タイミングを読みやすいからでしかない。

「うっ、うっ、そんなっ、馬鹿な」

「これで終わりなのか?これじゃあ、出番がなくて不満が出てしまうんだけどな···」

「馬鹿にしおって。同じ手が何度も通用すると思うなよ!」

再び蔦にアモンの実が現れるが、レーシーが魔力を流すと順々に実が成り始める。

「やっぱり、単純そうだな」

『そうね、期待していただけに少し興醒めよね』

「何をコソコソと話しておる!原形が残らない程に潰してくれるわ!」

ババババババババンンンンッ

再びアモンの実が弾かれるが、今度はミュラーの盾が阻む。マジックシールドのバーレッジのように、細かく分裂したミュラーの盾が俺達の周りを漂い、大半のアモンの実を防いでしまい、すり抜けたアモンの実は2割ほどしかない。

合一の大樹でレーシーと戦った時は、魔力やスキルには精通していたように感じた。複数の枝や蔦を組み合わせて、その特性を活かした攻撃でもあり防御をしていた。
しかし今の攻撃は、レーシーにしては少し単純過ぎる気がする。明らかに仕組みが分かってしまう攻撃では、対処もしやすい。

さらに、正面から来るアモンの実も全て、ウィプス達に打ち落とされてしまっている。しかし、今度のウィプス達の攻撃はアモンの実で相殺されて消える事はなく、レーシーへと襲いかかる。

慌てて枝や蔦で出来た盾を出して防ぐが、ウィプスのサンダーストームはレーシーの張り巡らせたクモの巣のような蔦を焼き切ってしまう。レーシーは地上へと落ちると、再びクモのような格好になってしまう。

「出たな、クモ男」

『ホントね、見覚えのある残念な魔物だったわね』

「こんな都合の悪い姿なら忘れない。残念すぎるからな」

俺とムーアの会話がレーシーの顔を歪ませ、さらに怒りを増幅させている。これもイッショのスキルが発動していのだろうと思うと、イッショの声がする。

「俺様は何もしていない。自身の性格の悪さが出ているだけであろう。勝手に人のせいにしないでくれ!」

そこへ追い討ちをかけるように、ナルキの腕が俺の背中から腰へと移動して、脚のように変化する。

「ふんっ、ふんっ、ふんっ」

そこに怒り心頭に発したレーシーの声が聞こえる。地団駄を踏んでいるつもりなのかもしれないが、浮きあがっている足は空中を空振りしている。
平静を装ってはいたが、レーシーにとってもクモのような姿はコンプレックスだったのだろう。そして恐らくはクモの姿を変える事は出来ない!

「ホントに、残念だな」

「ウオォォォォーーーッ!お前ら許さんぞ!」
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