210 / 329
オヤの街のハーフリングとオーク
210.影の中の隠し事
しおりを挟む
『コミットは優秀なのよ♪』
自分の事ではないが俺が知らない事に対して、ムーアは自慢気な表情を見せる。
「ハーピーロード戦では助けられたけど、最初はワームに呑み込まれそうになっていたぞ。それでも優秀なのか?」
『フフンッ、やっぱりコミットの事を分かっていないようね!』
右手の人差し指を立てて左右に振りながら、俺の見解を否定すると同時に残念そうな目で俺を見てくるが、口元には笑みが浮かび勝ち誇った顔を隠せていない。
「幸運の精霊といっても、まだコミットの力は強くないだろ。下位の精霊になるんじゃないか?」
『その考え方が、そもそもの間違いなのよね。これからも精霊を増やすなら、もっと本質を知らないとダメよ』
「でもな、契約はしているけどコミットの主人はクオンだろ。クオンに聞いて···」
『秘密にしておこうと思ったけど、教えて欲しいなら仕方ないわね!』
クオンに話を聞こうとする素振りを見せると、ムーアは食い気味で話し出して強引に会話の主導権を奪ってゆく。秘密と言いながらも、喋りたくて仕方ないんだろとは言わずに黙ってムーアの言葉を待つ。
『コミットの幸運は、自身には影響がないのよ。影響を与えるのは周囲にいる者に対してだけ!』
それだけ聞くと、どこかのインチキ占い師にしか聞こえないが、そこには触れれない。それ以上に、ムーアには俺を納得させるだけの絶対的な自信があるのが伝わってくる。
「そこまでの実感はないんだけどな」
『だって、契約者のあなたに降りかかった不運だったり周囲の不運を吸収して、それを幸運に反転させてるのよ!』
「だけど俺に実感がないっていう事は、どういう事になるんだ?」
聞いて失敗したと思ったが、言葉に出てしまった以上はどうしようもない。そして、ムーアが嬉しそうに告げる。
『それは、あなたが物凄い凶運の持ち主だからでしょ♪あなたの凶運は凄いわね。お陰さまで、私たちは幸運を実感しているわ!』
そしてムーアが、影の中から大量のポーションを取り出してみせる。箱の中には山盛りにされたポーションが乱雑に積まれ、その全てが中位のポーションになる。部位欠損こそ治せはしないが、簡単に死ぬことはない。
『これが全てじゃないわよ。まだまだ沢山あるポーションの一分よ』
「これに、コミットが関係しているのか?」
『そうよ、ブロッサとガーラだけだったら、こんな早くは完成しなかったポーションよ!』
それは、何故コミットが瓶を持ってきたのかという事に繋がる。幸運の精霊が、周りに不運をもたらす事は絶対にない。それは精霊としての存在とアシスの理に矛盾が生じてしまう。
だから、コミットが持っていた瓶が割れて周りに不幸が訪れる事はない。だから割れてしまった場合には、必ず何かの意味がある。使ってはならない物は割れてしまうか、割れてしまった後に起こる事に何か意味がある。
「じゃあ、今コミットが持ってきた行為は、調合する為の取捨選択をさせていたのか?」
『そうよ、コミットは凄いでしょ!だけど、ブロッサとガーラに実力がなければ出来ない事よ。それに割れた後に何か起こっても、ブロッサやガーラが気付けなければ意味がないからね』
「でも、それは凄いことじゃないか!そんな考え方もあるんだな」
『だから、割れても危険はないのよ。逆に安全な事だから心配しなくて大丈夫よ』
「だから、ブロッサもガーラも躊躇なく調合した薬を舐めれるのか」
『それは関係ないわね。危なくても関係なく舐めてるわよ』
「えっ、危なくても舐めてるのか?」
俺の反応に、ムーアがしまったという顔をするがもう遅い。それに、ブロッサとガーラも分かりやすく視線を反らしてしまう。
「皆整列だな。俺に何か報告することがあるんじゃないか?」
「舌で解析してるだけ。飲み込んでないから害はない」
「毒の精霊だから、毒は大丈夫ヨ。だけど解毒剤の作れないものは危なくて使えナイ。それを確かめる為にも、体に取り込む行為は必要ナノ」
ガーラは平然として答え、ブロッサは毒の精霊としての責任を説明する。
『それぞれに意味があるよの。ガーラが解析すれば新しいものが作れる切っ掛けになる。ブロッサのつくる解毒剤も必要でしょ。ねっ、カショウ、そうでしょう』
そして、ムーアは俺の表情を読み取って必死に挽回しようとし、自慢気な表情は消え去っている。
「だからといって、影の中で何でもやってイイわけじゃないからな!」
『「「はーい」」』
自分の事ではないが俺が知らない事に対して、ムーアは自慢気な表情を見せる。
「ハーピーロード戦では助けられたけど、最初はワームに呑み込まれそうになっていたぞ。それでも優秀なのか?」
『フフンッ、やっぱりコミットの事を分かっていないようね!』
右手の人差し指を立てて左右に振りながら、俺の見解を否定すると同時に残念そうな目で俺を見てくるが、口元には笑みが浮かび勝ち誇った顔を隠せていない。
「幸運の精霊といっても、まだコミットの力は強くないだろ。下位の精霊になるんじゃないか?」
『その考え方が、そもそもの間違いなのよね。これからも精霊を増やすなら、もっと本質を知らないとダメよ』
「でもな、契約はしているけどコミットの主人はクオンだろ。クオンに聞いて···」
『秘密にしておこうと思ったけど、教えて欲しいなら仕方ないわね!』
クオンに話を聞こうとする素振りを見せると、ムーアは食い気味で話し出して強引に会話の主導権を奪ってゆく。秘密と言いながらも、喋りたくて仕方ないんだろとは言わずに黙ってムーアの言葉を待つ。
『コミットの幸運は、自身には影響がないのよ。影響を与えるのは周囲にいる者に対してだけ!』
それだけ聞くと、どこかのインチキ占い師にしか聞こえないが、そこには触れれない。それ以上に、ムーアには俺を納得させるだけの絶対的な自信があるのが伝わってくる。
「そこまでの実感はないんだけどな」
『だって、契約者のあなたに降りかかった不運だったり周囲の不運を吸収して、それを幸運に反転させてるのよ!』
「だけど俺に実感がないっていう事は、どういう事になるんだ?」
聞いて失敗したと思ったが、言葉に出てしまった以上はどうしようもない。そして、ムーアが嬉しそうに告げる。
『それは、あなたが物凄い凶運の持ち主だからでしょ♪あなたの凶運は凄いわね。お陰さまで、私たちは幸運を実感しているわ!』
そしてムーアが、影の中から大量のポーションを取り出してみせる。箱の中には山盛りにされたポーションが乱雑に積まれ、その全てが中位のポーションになる。部位欠損こそ治せはしないが、簡単に死ぬことはない。
『これが全てじゃないわよ。まだまだ沢山あるポーションの一分よ』
「これに、コミットが関係しているのか?」
『そうよ、ブロッサとガーラだけだったら、こんな早くは完成しなかったポーションよ!』
それは、何故コミットが瓶を持ってきたのかという事に繋がる。幸運の精霊が、周りに不運をもたらす事は絶対にない。それは精霊としての存在とアシスの理に矛盾が生じてしまう。
だから、コミットが持っていた瓶が割れて周りに不幸が訪れる事はない。だから割れてしまった場合には、必ず何かの意味がある。使ってはならない物は割れてしまうか、割れてしまった後に起こる事に何か意味がある。
「じゃあ、今コミットが持ってきた行為は、調合する為の取捨選択をさせていたのか?」
『そうよ、コミットは凄いでしょ!だけど、ブロッサとガーラに実力がなければ出来ない事よ。それに割れた後に何か起こっても、ブロッサやガーラが気付けなければ意味がないからね』
「でも、それは凄いことじゃないか!そんな考え方もあるんだな」
『だから、割れても危険はないのよ。逆に安全な事だから心配しなくて大丈夫よ』
「だから、ブロッサもガーラも躊躇なく調合した薬を舐めれるのか」
『それは関係ないわね。危なくても関係なく舐めてるわよ』
「えっ、危なくても舐めてるのか?」
俺の反応に、ムーアがしまったという顔をするがもう遅い。それに、ブロッサとガーラも分かりやすく視線を反らしてしまう。
「皆整列だな。俺に何か報告することがあるんじゃないか?」
「舌で解析してるだけ。飲み込んでないから害はない」
「毒の精霊だから、毒は大丈夫ヨ。だけど解毒剤の作れないものは危なくて使えナイ。それを確かめる為にも、体に取り込む行為は必要ナノ」
ガーラは平然として答え、ブロッサは毒の精霊としての責任を説明する。
『それぞれに意味があるよの。ガーラが解析すれば新しいものが作れる切っ掛けになる。ブロッサのつくる解毒剤も必要でしょ。ねっ、カショウ、そうでしょう』
そして、ムーアは俺の表情を読み取って必死に挽回しようとし、自慢気な表情は消え去っている。
「だからといって、影の中で何でもやってイイわけじゃないからな!」
『「「はーい」」』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~
華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』
たったこの一言から、すべてが始まった。
ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。
そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。
それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。
ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。
スキルとは祝福か、呪いか……
ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!!
主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。
ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。
ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。
しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。
一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。
途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。
その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。
そして、世界存亡の危機。
全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した……
※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
現世に侵略してきた異世界人を撃退して、世界を救ったら、世界と異世界から命を狙われるようになりました。
佐久間 譲司
ファンタジー
突如として人類世界に侵略を始めた異世界人達。圧倒的な戦闘能力を誇り、人類を圧倒していく。
人類の命運が尽きようとしていた時、異世界側は、ある一つの提案を行う。それは、お互いの世界から代表五名を選出しての、決闘だった。彼らには、鉄の掟があり、雌雄を決するものは、決闘で決めるのだという。もしも、人類側が勝てば、降伏すると約束を行った。
すでに追い詰められていた人類は、否応がなしに決闘を受け入れた。そして、決闘が始まり、人類は一方的に虐殺されていった。
『瀉血』の能力を持つ篠崎直斗は、変装を行い、その決闘場に乱入する。『瀉血』の力を使い、それまでとは逆に、異世界側を圧倒し、勝利をする。
勝利後、直斗は、正体が発覚することなく、その場を離れることに成功した。
異世界側は、公約通り、人類の軍門に下った。
やがて、人類を勝利に導いた直斗は、人類側、異世界側両方からその身を狙われるようになる。人類側からは、異世界の脅威に対する対抗策として、異世界側からは、復讐と力の秘密のために。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる