精霊のジレンマ

さんが

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オヤの街のハーフリングとオーク

216.青いオークの吸収スキル

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青いオークは元々傷痕だらけの体ではあったが、今は傷だらけのボロボロの姿になっている。青いオークは後ろにいたから俺の攻撃は全く届いていない。

「あの傷はどこで付けられたんだ?」

『見て、赤いオークもおかしいわ』

「···」

ムーアの言葉で、赤いオークを見て唖然とする。あまりの異常な状態に言葉が出ない。

『傷が消えているわよ···ね』

「ああ···そうみたいだな」

ウィンドトルネードで飛ばされた赤いオークはダメージを感じさせずに、ムクッ起き上がっている。全身の火傷の痕は消えてしまい、マジックシールドの欠片を飲み込んだ影響もなく、普通に呼吸をしている。
そして立ち上がると、両手にマジックソードで貫かれた刺し傷が残っている。俺の魔力操作の範囲を越えたマジックソードは消滅してしまっているが、残っている傷が俺が吹き飛ばし赤いオークである事を証明している。

『ほら、傷が消えてゆくわよ』

ムーアが、赤いオークの両手の傷口が塞がっゆくのを見つける。

「何故、回復するんだ?回復するのは、吸収した時だけだろ。何も攻撃していないんだから、吸収出来るものはないはずなのに。呼吸するだけで、あんなに早く回復出来るのか?」

赤いオークは、ゆっくりとこちらへと向かって歩き始める。その足取りは以前と変わらず、全くダメージを感じさせない。そして、赤いオークの口元に笑みが戻る。

慌ててマジックシールドとマジックソードを具現化する。精霊樹の杖にも魔力を流して風を纏わせ、赤いオークを牽制する。
まだ俺の攻撃が破られたわけではない、オークの笑みにも何かの根拠があるとは思えないが、それでもオークの笑みは消えない。

「そんな簡単に対応なんて出来ないだろ」

『最初から笑ってる顔なのかもよ。あれが普通の顔かもしれないわ』

「どっちでもいいっすよ。どっちにしても普通とはかけ離れた化け物ですぜっ」

「ヴオオオォォォーーッ」

痛みが限界に達したのか、再び青いオークの咆哮が轟く。そうすると、今度は青いオークの両手から血が溢れてくる。

『私たちは何もしていないけど、青い方が傷付いたわよ』

「もしかして赤いオークの傷が、青いオークに移ったのか?」

『あれが青いオークの吸収スキルってことなのかしら?もしそうならば、どれだけ赤いオークを攻撃しても意味がないわね』

「青いオークを先に倒すしかないな!」

青いオークの吸収スキルは、対象となる者から傷や痛覚を自身へと奪うのかもしれない。だからといって、赤いオークのような吸収スキルが使えないとも限らない。
それでも口からしか吸収できないなら、大量に血を吐いている状態であれば、満足な吸収スキルも使えないし、口臭ブレスを放つことも出来ないだろう。

「赤いオークが来るまでに、勝負を決めよう!」

俺の言葉に反応してウィプス達が、サンダーボルトを放つ。広範囲のサンダーストームよりも、1点に集中したサンダーボルトの方が直撃すれば威力は大きい。
その分吸収されるリスクは高いが、青いオークは身動き一つしない。そして、サンダーボルトはウィプス達の狙い通りの場所へと命中する。

『直撃したのに耐えているわよ。何も変わってないわ』

「仕方ないな。ソースイ、全力の召喚ハンソっ!」

今度はソースイが黒剣で青いオークを指し示して、ハンソの召喚を行う。ハンソはブレスレットの中に居る時から加速を始め、召喚されてからもさらに加速を続ける。その威力は、地面に小さなクレーターを作るだけの破壊力があり、物理的な破壊力なら俺達の中でトップクラスの攻撃になる。
しかし、ハンソが召喚されて地面に衝突すると、周囲に衝撃波や抉った土や石を撒き散らしてしまう。だから全力召喚は使いどころが難しが、滅多にない出番にソースイの気合いも入る。

「ハンソ、全力召喚!」

ソースイの短い呪文で、俺達の上にハンソが現れると同時に、俺の前にミュラーの盾も現れる。俺のマジックシールドはあくまでも赤いオークの牽制に必要になるので、少しでも温存しなければならないとミュラーも分かっている。

衝撃に備えてミュラーの盾に身を隠すが、いつまで経っても衝撃波が来ない。それどころか、衝突する音も聞こえない。

『どうしたの?召喚に失敗する事もあるのかしら?』

『イヤ、ハンソの魔力は感じるから、間違いなく召喚されてる。ただ、地面には墜ちていない!』
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