320 / 329
タイコの湖
320.異質な魔石
しおりを挟む
『綺麗な魔石ね』
思わずムーアは呟いてしまう。アシスでは宝石などの装飾品であっても、魔物の赤い瞳を彷彿させるものは忌み嫌われる。上位種になればなるほど瞳の色は濃くなり、真紅は禍々しさを表す恐怖の象徴でしかない。
「これなら、ゴルゴンの欠けた目を補えルワ」
しかし、ブロッサもムーアと同じようで、現れた2つの魔石を手に取ると食い入るように見つめている。
確かに魔石の中から現れた2つの魔石は、俺が今までに見てきたどの魔物の瞳よりも鮮やかな色で、存在を無視することは出来ない。しかし禍々しさを感じさせないのは、ゴブリンやハーピーの魔石の力を吸収したせいなのか、それとも七色の魔石の影響を受けたからなのかは分からない。
「これがゴルゴンの目となって、大丈夫なのか?それは、本当にゴルゴンと呼べる存在になるのか?」
ゴルゴンの欠けた魔石を回復させ、視覚を取り戻す目的であったが、目の前にある魔石は全く違う上位種のものといえるかもしれない。そんな未知の力を秘めた、異質な魔石が出来上がってる。
『ブロッサ、どうなの?』
「そうね、まだ残されている魔石の欠片は、もっと黒く濁った色をして違いは大きイワ。でも触ってみれば、この魔石で大丈夫だと思わせてくレル」
そう言って、ブロッサは俺の方へと2つの魔石を差し出してくる。何度かラミアの魔石を使ったことはあるが、大きさや重さは変わらずとも、不思議な感触がある。手に吸い付くような、触っているだけで癒されるような、そんな不思議な感触がある。
「大丈夫でショ」
「確かに大丈夫かもしれないけど、ゴルゴンとは全く別物で与える影響は大きくないか?」
『カショウ、進化したと思えばイイのよ?』
ゴルゴン本来の力を失っていなくても、吸収した魔物の能力やスキルを知っていることは重要である。ゴルゴンであれば、もっとも特徴的な能力は石化させる瞳の力になる。
しかし能力が変質してしまえば、何が起こるか分からない。意図しないところで、スキルが発動してしまえば大惨事を引き起こす可能性だってある。ましてや、ゴルゴン本人ですら、自身の存在がどのように変わったかを把握する前に吸収されてしまうのだから。
「僕は、どうなっても構わんよ。目は見えるようになるんやろ」
「視覚は問題なく回復すルワ」
「それなら大丈夫よ。そろそろ時間切れになるかもしれんわ」
そう言うと、ゴルゴンの頭の蛇達は力なくダラリと垂れ下がってしまい、魔力の限界は迫っている。
「横に寝かせてやったらどうだ?」
しかしゴルゴンは首を横に振り、俺の提案を拒否する。
「ウチは強いのよ。早くしないと、後悔す···」
コールがゴルゴンの失われてゆく魔力を補ってきたが、それも限界を迎えて再び急速に魔力が消失してゆく。弱々しくか細くなる声では、最後まで言葉を聞き取ることが出来ない。ただ、ゴルゴンの中でもクイーンといえる存在のプライドが、弱い姿をみせることを拒否しているように見える。
『違うわよ。あなたとより強い関係性を築くには、それなりの力を示す必要があるのよ。どんなに傷ついても、決して倒れない強い意思の力よ』
「旦那様、そろそろしないと間に合いませんわ」
「もう1度だけ確認するけど、視覚は回復出来るんだな!」
「ゴルゴンとしての力は変質するかもしれないけど、視覚は問題なイワ」
俺が頷くとブロッサが魔石を手に取り、ゴルゴンの顔に嵌め込む。それだけで、この魔石と残されたゴルゴンの魔石が上手く結合してくれるとは限らないが、何故かその不安は感じない。
「ああっ、見えるわ」
ゴルゴンが顔を上げると、真紅の目の中に褐色の瞳がある。しかし、視覚が回復しただけでなく、その瞳の持つ力も影響を与え始める。
ゴルゴンの意思とは関係なく、石化の呪いが襲いかかってくるが、それをイッショが黙って魔力吸収で無効化する。
「俺も、顔はしっかりと覚えた」
「良かったわ。さあ、ウチを殺して!」
ゴルゴンの魔石を破壊するための、マジックソードでの一閃。それをゴルゴンは、瞬きもせずに目を見開いたままで受け止める。
魔石の砕ける軽い感触がすると、キラキラと魔石の破片が舞いあがる。そして俺の体がそれを吸収を始める頃には、ゴルゴンの体は跡形もなく消え去っている。
『間に合ったわね。それじゃあ、さっさと名付けも終わらせましょうか!』
思わずムーアは呟いてしまう。アシスでは宝石などの装飾品であっても、魔物の赤い瞳を彷彿させるものは忌み嫌われる。上位種になればなるほど瞳の色は濃くなり、真紅は禍々しさを表す恐怖の象徴でしかない。
「これなら、ゴルゴンの欠けた目を補えルワ」
しかし、ブロッサもムーアと同じようで、現れた2つの魔石を手に取ると食い入るように見つめている。
確かに魔石の中から現れた2つの魔石は、俺が今までに見てきたどの魔物の瞳よりも鮮やかな色で、存在を無視することは出来ない。しかし禍々しさを感じさせないのは、ゴブリンやハーピーの魔石の力を吸収したせいなのか、それとも七色の魔石の影響を受けたからなのかは分からない。
「これがゴルゴンの目となって、大丈夫なのか?それは、本当にゴルゴンと呼べる存在になるのか?」
ゴルゴンの欠けた魔石を回復させ、視覚を取り戻す目的であったが、目の前にある魔石は全く違う上位種のものといえるかもしれない。そんな未知の力を秘めた、異質な魔石が出来上がってる。
『ブロッサ、どうなの?』
「そうね、まだ残されている魔石の欠片は、もっと黒く濁った色をして違いは大きイワ。でも触ってみれば、この魔石で大丈夫だと思わせてくレル」
そう言って、ブロッサは俺の方へと2つの魔石を差し出してくる。何度かラミアの魔石を使ったことはあるが、大きさや重さは変わらずとも、不思議な感触がある。手に吸い付くような、触っているだけで癒されるような、そんな不思議な感触がある。
「大丈夫でショ」
「確かに大丈夫かもしれないけど、ゴルゴンとは全く別物で与える影響は大きくないか?」
『カショウ、進化したと思えばイイのよ?』
ゴルゴン本来の力を失っていなくても、吸収した魔物の能力やスキルを知っていることは重要である。ゴルゴンであれば、もっとも特徴的な能力は石化させる瞳の力になる。
しかし能力が変質してしまえば、何が起こるか分からない。意図しないところで、スキルが発動してしまえば大惨事を引き起こす可能性だってある。ましてや、ゴルゴン本人ですら、自身の存在がどのように変わったかを把握する前に吸収されてしまうのだから。
「僕は、どうなっても構わんよ。目は見えるようになるんやろ」
「視覚は問題なく回復すルワ」
「それなら大丈夫よ。そろそろ時間切れになるかもしれんわ」
そう言うと、ゴルゴンの頭の蛇達は力なくダラリと垂れ下がってしまい、魔力の限界は迫っている。
「横に寝かせてやったらどうだ?」
しかしゴルゴンは首を横に振り、俺の提案を拒否する。
「ウチは強いのよ。早くしないと、後悔す···」
コールがゴルゴンの失われてゆく魔力を補ってきたが、それも限界を迎えて再び急速に魔力が消失してゆく。弱々しくか細くなる声では、最後まで言葉を聞き取ることが出来ない。ただ、ゴルゴンの中でもクイーンといえる存在のプライドが、弱い姿をみせることを拒否しているように見える。
『違うわよ。あなたとより強い関係性を築くには、それなりの力を示す必要があるのよ。どんなに傷ついても、決して倒れない強い意思の力よ』
「旦那様、そろそろしないと間に合いませんわ」
「もう1度だけ確認するけど、視覚は回復出来るんだな!」
「ゴルゴンとしての力は変質するかもしれないけど、視覚は問題なイワ」
俺が頷くとブロッサが魔石を手に取り、ゴルゴンの顔に嵌め込む。それだけで、この魔石と残されたゴルゴンの魔石が上手く結合してくれるとは限らないが、何故かその不安は感じない。
「ああっ、見えるわ」
ゴルゴンが顔を上げると、真紅の目の中に褐色の瞳がある。しかし、視覚が回復しただけでなく、その瞳の持つ力も影響を与え始める。
ゴルゴンの意思とは関係なく、石化の呪いが襲いかかってくるが、それをイッショが黙って魔力吸収で無効化する。
「俺も、顔はしっかりと覚えた」
「良かったわ。さあ、ウチを殺して!」
ゴルゴンの魔石を破壊するための、マジックソードでの一閃。それをゴルゴンは、瞬きもせずに目を見開いたままで受け止める。
魔石の砕ける軽い感触がすると、キラキラと魔石の破片が舞いあがる。そして俺の体がそれを吸収を始める頃には、ゴルゴンの体は跡形もなく消え去っている。
『間に合ったわね。それじゃあ、さっさと名付けも終わらせましょうか!』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
悪魔になったらするべきこと?
ファウスト
ファンタジー
剣と魔法の世界。そこで魔法を教える学校に通う主人公ルナ・フラウステッドは魔法使いに憧れてる女の子。次の進級で実技に行く段階になった彼女だったがどうしてか魔法を上手く使えない落第生となってしまった。そんな時、偶然にも雇われた家庭教師の先生が言う方法に運命を任せたところ・・・。
「悪魔になっちゃった!?」
悪魔に変化!だけでも中身はそのままの彼女の運命やいかに!
彼女を狙う影、彼女の体の行く末、それを見守る保護者たち。
彼女はいったいどうなってしまうのだろうか。
これは悪党から両親と自分の将来を守るために悪魔になった少女がその身の上と体の特殊さから
様々な騒動に巻き込まれるお話である。
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~
はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。
病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。
これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。
別作品も掲載してます!よかったら応援してください。
おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音(旧・神木 空)
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
インターネットで異世界無双!?
kryuaga
ファンタジー
世界アムパトリに転生した青年、南宮虹夜(ミナミヤコウヤ)は女神様にいくつものチート能力を授かった。
その中で彼の目を一番引いたのは〈電脳網接続〉というギフトだ。これを駆使し彼は、ネット通販で日本の製品を仕入れそれを売って大儲けしたり、日本の企業に建物の設計依頼を出して異世界で技術無双をしたりと、やりたい放題の異世界ライフを送るのだった。
これは剣と魔法の異世界アムパトリが、コウヤがもたらした日本文化によって徐々に浸食を受けていく変革の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる